4.ゾンビと自称女神
「私は女神です」
目の前の女性はそう名乗った。
ウソをつくな、と思った。
「『ステータスオープン』」
「きゃーヤメテ!!」
===ステータス===
■011100101001010111110(?)
・種族:人族?
・職業:???
・レベル.1
・体力:− 魔力:− 精神力:− パワー:− スピード:− 運気:− 器用度:−
「ああん、見ちゃいや〜ん」
「無駄に色っぽい声出さないで」
意味不明だ。
さてと……
なんかめんどくさくなってきたな。
「ねぇ、コル君、手に傷ができちゃたよう! 絆創膏もってない?」
この無駄にテンションの高い女性と街の外の森に飛び出して五分ほどたっただろうか。
あれだけの高さから落下したのにもかかわらず、ぼくも彼女もほとんどノーダメージだ。ぼくはレベルが89だしゾンビだからわかるけど、この女性は何者なのか全く見当もつかない。かろうじてステータスから読み取れるのは、一応人族かもしれない、ということと、レベルが1であるということ。
ただ女神というのはうそだ。
確かに見眼麗しい顔立ちをしている。さらさらとした黒髪に透明感のある白い肌。黒縁の眼鏡の奥には愁いを帯びた茜色の瞳。ローブの上からも見て取れる女性的なライン。
ぼくがゾンビじゃなければ緊張して目を合わせることすらできないだろう。
でも彼女が女神ならゾンビのぼくを助けたりしない。それに神聖という感じがしない。例えるなら、仕事とプライベートで色々とストレスを溜め込み、久しぶりの休日ではしゃぐ三十路のお姉さんという感じ。
「うぉ〜い、か弱いお姉さんがお手てケガしちゃったんだぞ! 構ってよ!!!」
怪我って、血も出てないじゃないか。
「女神ならご自分で直せばいいじゃないですか?」
「君はアンデッドになって、人を慈しむ心を失ってしまったんだね……」
ひとつわかった。ゾンビになってもイラっとはするようだ。美人じゃなかったらド突いてたかもしれない。
ん?
なぜこの人は、ぼくがアンデッド―――ゾンビだと気づいた?
女神では無さそうだけど、この人はぼくに起きたことを知っているのか?
「あなたが本当に女神だと言うなら、ぼくのこの現状を説明して下さい。納得できる説明だったら、あなたのことを女神だと信じます」
「いいでしょう。迷える魂よ、私に質問しなさい」
◇
自称女神曰く、ぼくの本来のスキルは『リベンジャー』ではなく、『スキル強奪』の方。
これは殺したもののスキルを奪うスキル。
『リベンジャー』が発動したことで、このスキルも発現し、殺した町民たちからスキルを奪った。そして、スキルの使用により、一気にレベルが上昇。
これが死後に起きて、ハイゾンビという未知の種に進化したことで意識を持つに至った。
ちなみに『リベンジャー』はぼくが死んだことで魔本に戻った、と解釈できる、とのこと。
なるほど、バカっぽいけどバカじゃないみたいだ。一応筋は通っているし、何も知らないくせにぼくのステータスを見て、少し説明したら謎を解いてくれた。
「私はあなたを導くためにやって来たのです! さぁ、くだらないしがらみから解放され、超越的な存在と化した今、あなたには何でもできます!! 俺TUEEEしてチートハーレムをつくるも良し! 田舎でスローライフしながらかわいい村娘や押しかけ美少女たちと家庭をつくるも良し! 魔王になって世界征服も可能です!!」
「何言ってるのか半分しかわからないけど、とりあえず世界征服はだめでしょ。あなたやっぱり女神じゃないでしょ」
「ノリが悪いなぁ〜。じゃ、ありきたりだけど『人間に戻る方法を探す』を選択しますか?」
「いや、ぼくは死にます」
だって、ゾンビって腐るじゃないですか。
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