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24.不滅の対戦者



 冒険者ギルドで冒険者の訓練相手にされた。


 だれが言い始めたのか、ぼくを倒せたら賞金が出ると噂になってぼくと戦う冒険者が列を成した。




 ぼくはこういう行列を求めてたんじゃないんだけど。





「だめだ、黒鉄級以下は時間の無駄だ」

「いや、私は学者でね。倒せないゾンビがいると聞いて。ちょっと見せてくれ」


 おや、これは違う展開。

 眼鏡をかけたおじいさんがぼくの元にやって来た。


「ふむ、これだけの冒険者に攻撃されて反撃しない所を見ると、かなり強力なテイマーに使役されているようだ。ほれ」


 おじいさんはボトリとぼくの足元に肉を放り投げた。




 食べ物を粗末にするなよ。


「ゾンビが肉に反応しないのは妙だ。よし」


 今度はガラス瓶をぼくに投げつけた。

 中の液体が飛び散り、ぼくの身体を溶かし始めた。


「おい、何した!?」

「ドラゴンの胃液じゃ。これに溶かせないものは―――」


 あった。ぼくだ。


《スキルが向上しました 『酸耐性・小』から『酸耐性・大』へ》


「なに!? 溶けないばかりか、傷が無くなっていく」


『再生』が『オートスキル』で発動したんだ。スキルを使うとまたエネルギーが不足する。そろそろ食事にするか。


『消化・吸収』を発動し、肉の塊に触れた。

 肉はぐんぐん小さくなり、消えた。これで栄養補給完了。




「……これは、ゾンビじゃないじゃろ」

「手で食べたぞ!?」


 ん? なんだ、口に何か溜まって来た。


《スキルが向上しました 『解毒・初』から『解毒・中』へ》


 ペッ、と吐くと、黒い液体だった。


「なんと、仕込んだ毒も無力化したのか!!」


 仕込んでたんかーい!

 でも、このおじいさんのほうが冒険者たちより、ぼくにダメ―ジを与えられているぞ。



「ああ! なんかアイツ、おれらに興味失せたって顔したぞ!!」

「クソ、爺さんもういいだろ!! 今度はおれだ!!」

「もういいよ、複数で掛かろうぜ!!」


 ぼくを囲んで、冒険者たちが陣形を組んだ。

 まだやるのか。

 ぼくは手加減が難しいから、もうやめて欲しいな。でも必死にやってるみんなに「無駄だからやめなよ」とは言いにくい。それにこのタイミングでしゃべったら、ややこしいことになりそうだ。





「魔導士は付与魔法でサポートだ。おれが切り込む!!」


 おお、一人の能力を底上げして戦うなんてこともできるんだ。


「我が力の一端を授けん! 『パワーライズ』!」

「我が力の一端を授けん! 『スピードスター』!!」

「我が力の一端を授けん! 『ソウルエナジー』!!」


「よし、もっとだ!!」


「剣を依り代に、我が身に宿りし内なる刃を纏わせ、あらゆる障壁を両断する! 『オーラソード』!!」


「うぉぉぉ、行くぞ!!」


[ゴォォン!!]


 剣はぼくの首に向けて、振り切られた。

 ぼくは体勢を崩し、そのまま地面に倒れた。


「ぐ、ああああ!!!」

「そ、そんな……」

「なんで……」


 ぼくに斬り込んだ冒険者の方が、腕を抑えてうずくまった。それに対し、ぼくときたら首に切れ込みは出来たけど、すぐに塞がった。


 確かに今までで一番の衝撃だったけど、ぼくがあのまま身体の力を抜かなかったら、彼の腕が折れていた。


「おい、大丈夫か?」

「くそ、剣が折れなかった分、モロに衝撃が来たぜ」

「こりゃ、骨にヒビが入ってるな」

「くそ、こいつ、どんだけ固いんだよ!」


 これが黒鉄級のパーティ……。

 あれ? これなら、前に戦ったあの人の方が強かったような……


「ちくしょー、よりにもよって怪我しちまうとは!! おお、なんだ? あ、しまった! やめろ、放せ!!」

「バカやろう、油断しすぎだ!」


 せっかくぼくが加減してあげたのに、文句を言うからだ。


「うわぁぁ―――あれ? 腕が痛くねぇ」


 なんてね。脅かしてやっただけだ。

 ついでに『治療・大』で治してやった。


「こいつ、まさか治してくれたのか?」


 あれ? みんなの眼の色が変わったような。


「ああ、痛い。さっきのダメージが腰に来てしまったよぉ。痛いよぉ」


 ギルドマスターの金髪エルフがわざとらしく演技しながら近づいて来た。治せってことかな。

 ん? この人と戦ったっけ? 一方的に矢で射られたような……まぁ、いいや。


「ああ、治った!! 事務仕事で慢性痛だったのに、すごい!!」

「おい、コラ」

「ん、今、しゃべった?」


 あ、しまった。


 疑惑の眼がぼくに向けられた。

 バレたかな。


「ああ、痛い、さっきのアレが、アレで膝にきた。歩けなくなるかもぉ」

「おれなんて、首が曲がらなくなっちゃったなぁ。痛いなぁ」

「わしも腰がなぁ」

「前に受けた古傷が」

「足の小指をタンスに」


 なんだこの人たち。

 ぼくの周りをブツブツ言いながら徘徊し始めた。どっちが亡者だ。


「最近、神殿が治療に多額のお布施を求めるようになって、誰も治してもらえなくなっちゃったんだね。そりゃ、治療ができてタダなら、みんななりふり構わないよね」


 それはぼくに話しているのか、金髪、やいコラ。全部あんたのせいじゃないか。


「こういう慢性痛は『治療・中』以上じゃないと治せないはずだけど、君は『治療・大』を持っているんじゃない? だから身体が腐敗してない」


 ギクッ!


「う、うぼぉ」


「はいはい、よしよし」


 頭を撫でられた。いや、じゃれついてるんじゃない。ちょっとは怖がって!


「問題はそのスキルを使いこなしている点だね。身体が腐敗していない。それにさっきから君の動きには判断が伴っている。相手に怪我をさせないよう気を遣ってただろ?」


 無だ。

 動揺するな。

 カマかけだよ、きっと。


「加えて、しゃべったしね」

 

 聞かれてた!


「つまり、君は頭でものを考えられている。なんでゾンビのフリなんかしているんだい?」


 ぜんぶバレた。


「あはは、君は分かりやすいねー。目が死んでないから、感情もダダ洩れだよ」


 そんなこと初めて言われた!! むしろ目は死んでて感情は分かりにくいって言われたのに。

 ぼくはゾンビのフリをやめて、演技がバレた気恥ずかしさで適切な言葉が思いつかず、黙って群がる亡者たちを治療した。





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