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21.ミッション インポッシブル


 山賊から残念賞で押し付けられたサキュバスのアンジェリスから衝撃の一言。


「街に入る時、ステータスを確認されるので入れません」


 急いで村人たちに聞いた。対処法だ。でも、彼らは半山賊、半村人だから街に行くときに山賊脱退の儀式を適当にやると、表示で村人になるらしく、問題にしていなかった。

 これはぼくらには活用できない。

 

 でも、アンジェリスを仲間にしたことで色々とわかった。

 まずは彼女のこと。彼女は元々街に入るために奴隷のフリをしていた。人買いには金をあらかじめ渡して奴隷として街に入るつもりだったのだ。


「申し訳ございません。どうしてもあの街にいる、ある方にメッセージを届けなくてはならなかったのです」

「ある方って?」

「聞くなよルカ。濁しているんだから言いたくないんでしょ?」

「いえ、言っても信じていただけるかどうか」


 ぼくらには何の信頼関係も無い。経緯を聞くと、ぼくらは彼女を助けたわけでもなく、結局はあの街に行きついたのかもしれない。


「まぁまぁ、今の私たちなら大抵のことは信じられるよ? 別に騙されても私たちに損ないでしょ?」

「そうだね。じゃあまずぼくらの問題から言うとね、ステータスなんだけど、アンデッドだけじゃないんだ、やっかいなことに」

「犯罪歴ですか?」

「見てもらったほうが早いよ」


 ぼくはステータスをアンジェリスに見せた。

 彼女はしばらくステータスを見て固まっていた。


「そうですね。お二人のことの方が理解できないことが多いです。ステータスに?やーが表示されることはありませんし、スキルが5つ以上あるなんて一部の上位モンスターか魔王様くらい。あと、Aランクスキル以上はSランクのはずなのに、SSランクスキルを有している点、それに、ハイゾンビとはなんですか?」


 アンジェリスはかなりスキルやステータスの常識に詳しい。


「わからないよ。規定レベルを超えたから進化するってアナウンスが流れたらこうなってた」

「ア、 アナウンス?」

「ホラ、聞こえるでしょ? レベルアップしたり、スキルを習得したりした時。あと、スキルが発動した時もたまに」


 首を傾げるアンジェリスとルカ。いやルカには聞いてないよ。


「あれってみんな聞こえてるんじゃないのか?」

「レベル.99ともなるとそうなるのですか? そのレベルに達する者はいませんので誰も共感できないかと。魔王様ですら歴代平均は38です」

「ウソ〜、たったの?」

「魔王はだめだね」


 魔王に戦いを挑むという案は消えた。


「お二人の事情は分かりました。それを明かしていただいた以上、話さないわけには参りません」

「別に脅したんじゃないのにねぇ〜。嫌なら話さなくてもいいんだよ?」

「言います。言わせてください」


 脅してる。


「私は魔王様の使いで参りました。〝魔族特区〟と、あなた方が呼ぶ私どもの国でシスターをしています」

「サキュバスでメイドでシスターの奴隷って盛りすぎでしょ。ついでにその胸も盛ってる?」

「いえ、自前です。メイド服はこの方が早く売れると人買いたちが言うので着ただけです」


 魔族にもシスターっているんだ。

 ああ、だからスキルに詳しいんだね。


「メッセージの送り主はロムルス大神殿の姫巫女ジア様へ。内容については、申し訳ございませんが命に換えても他の方にはお伝え出来ません」

「魔族のシスターと人族の姫巫女って交流あるんだ」

「元々我々とあなた方の信仰は同じものです。しかし、人族がスキルを神聖視し、それを神官の地位向上のため利用し、真の信仰が廃れたのです」

「ふ〜ん、まぁそんなことはどうでもいいんだけど」

「どうでも!?」


 どうでもよくはないけど、今はもっと早急に話し合わないといけないことがある。


「話を戻すけどどうやって街に入るかだね」

「あの、ご主人様。ルカ様はテイマーを取得されているようです。そしてモンスターが街に入れるのは討伐後か、テイミングされた状態だけです」


 ちょっと言ってる意味が分かんない。


「コルくんを私のペットにするだと!! なんてすばらしいアイディアなんだ、さすがサキュバス!!」

「ありがとうございます」


 勝手に決めないでくれよ。ぼくにだって人としての最後の尊厳はあるはずだろ?


「ご主人様申し訳ございません。例えご主人様がペットでも、私はあなたの奴隷です」

「うれしいよ。その含み笑いが無ければね」


 この人、口調は冷静だけど、表情が豊かなようだね。

 

「ご主人様がペット、私が奴隷になり、ルカ様が代表して入る。あとはステータスをどうするかですが」

「チェックされる前に高速で入る!!」

「チェックされる前に失神させる?」

「やめてください、大騒ぎになりますから。ご主人様はステータスオープンを使えるのですよね?」

「うん」

「ちょっと私を見ていただけますか?」


 ===ステータス===

■アンジェリス=ゼファスト(19)

・種族:サキュバス

・職業:シスター/奴隷

・レベル.19

・体力:C 魔力:B 精神力:B パワー:E スピード:D 運気:E 器用度:C

・スキル

 B:『魅了』

 C:『菓子・中』『治療・小』

 D:『調合・初』

 E:『看病・初』


「発動選択型スキルは自分でコントロールができるはずです。一部の項目を薄くしたり、見えなくすることはできませんか?」

「おお、そうか! うん、やってみる!!」


[ピコ〜ん]


《『ステータスオープン』に練度はありません》


「ダメみたい」

「コル君、あきらめるの早くない?」

「だってアナウンスが入ったから。このスキルで変更は効かないみたい」


[ピコ〜ん]


《『改竄』『文筆・熟』が有効》


「あ、他のスキルでできるってさ」

「あの、ご主人様、そのアナウンスと話してますか?」

「いや、なんか最近はおしゃべりみたい。なんでだろ?」


[ピコ〜ん]


《規定レベルに達したため、音声ガイドが解放されました》


 規定レベルって99かな。

 100じゃないの、普通?


「よ〜し、コル君、スキルをつかいこなすために練習しよう!!」

「うん」


 その後の試行錯誤で色々分かった。


 ステータスの画面は魔力で生み出されている。それを書き換えるには魔力で文字に干渉する必要がある。これはアナウンスの通り『改竄』『文筆・熟』で書き換えることができた。

 でもステータスオープンは相手のタイミングで行われる。


 問題が二つ見つかった。


 一回改竄しても、もう一度表示されたら元に戻ってしまう。つまり、早業でみんなの前で表示された文言を変えなければならない。

 

 もう一つは、文字を消せても書けないということ。いや書けるけど、指先で書くと文字の太さや字体がどうしても浮く。変更は表示を消すか、文字を移動するだけに限られる。


 だからあらかじめどこを消して、どこの文字を移動させるか決めて練習した。

 例えばぼくのステータスはSが多いので半分消してcにした。改竄中、気を逸らすためアンジェリスの魅惑で判断を鈍らせる。


「これでいけるかな」

「運次第ですね。でも、これならもし捕まってもすぐ殺されはしないでしょう。調査のため神殿に連行されるかもしれません」

「よ〜し。じゃあ行こう」

「ちょっと待って下さい、ルカ様。恐れ入りますが眼鏡を貸していただけませんか? 落としてしまって、無いと『魅了』が常時発動してしまうのです」


 それで山賊が持て余してたのか。

 

「君、メイド服でサキュバスで奴隷でシスターでクールキャラのボインボインですでにお腹いっぱいなのに、この上さらに眼鏡っ娘になるだと? 私からもアイデンティティーを奪うのかよ?」

「ではルカ様には代わりにこの服を」

「いいよ!! サイズが合わないよ!!」


 合ってたら着るのか。ちょっと見て見たい気もする。

 街に行ったら買ってあげようかな。



 とか考えていた。



 ぼくたちは街の外壁の前で、入門の審査を受ける列に並んだ。


「次……やぁ、どうも」

「どうも、よろしく」


 審査を受けるのはルカだけだ。

 さすが、受付の役人はルカの微笑みに骨抜きだ。


「ロムルスによう、こそ。あの、その後ろのは?」

「ああ、彼は私のペット」

「うぼぇェェ」


 現在ぼくはルカのしもべだ。テイミングされているゾンビになりきる。


「ゾンビをテイミングですか? ちょっと確認しますよ」


 役人は水晶玉に話しかけた後ルカに向けた。

 あれで神官に繋がって、『ステータスオープン』されるのか。どうやら調べられるのは全員じゃないらしい。そりゃそうだよね。『ステータスオープン』を持ってる人がそう何人もいるわけじゃないし。でも、ぼくらが調べられることは想定内。


 さぁここからが勝負だ。


[ピコーン]


 うぉぉぉ!!! 『改竄』!!!


===ステータス===

■ゾンビ(テイミング)

・種族:アンデッド

・レベル.9


・体力:F 魔力:c 精神力:A パワー:c スピード:c 運気:D 器用度:c

・スキル

 B:『再生』

 C:『体温調節』

 D:『掃除・中』『採掘・中』


 ふぅ、今までで一番この身体の限界に迫ったかもしれない。それぐらい手早くやった。ルカのおかげで担当の人は上の空。少しルカが見つめただけでぼくから視線が外れた。ちょろいぜ!!


「確認しました。こんなゾンビがいるんですね」

「貴重なの。近づかないでね。噛むから」

「うわぁ、はいー、では……荷物の方ですが、屋台? それに檻ですか。中身を見ても?」

「どうぞ、ご自由に」


 よし、次だ。


「こ、この眼……魔族ですか?」

「そう、サキュバス。奴隷なの」

「ではこちらも確認しますね」


 うぉぉぉ!!! 『改竄』!!!


===ステータス===

■アンジェリス=ゼファスト(19)

・種族:サキュバス

・職業:契約奴隷

・レベル.19

・体力:C 魔力:B 精神力:B パワー:E スピード:D 運気:E 器用度:C

・スキル

 B:『魅了』

 C:『菓子・中』『治療・小』

 D:『調合・初』

 E:『看病・初』


 彼女のは変更箇所が職業だけ【シスター/奴隷→契約奴隷】にしたから簡単だ。これで彼女は正当な手続きで奴隷になったと証明できる。


「これはまた、すごい。スキル5つも!」

「ええ、高かったの。話しかけないでね、生気吸われるから」

「では、あなたは?」


 最後はルカだな。


 えいやー!


===ステータス===

■ルカ

・種族:人族

・職業:テイマー

・レベル.1

・体力:― 魔力:― 精神力:― パワー:― スピード:― 運気:― 器用度:―

・スキル

 S:「スキルレンタル」


 ルカは?を消すだけだから簡単!!


「……Sランクスキルだと? すいません、ちょっと……」

「何か問題でも?」


 あれ……?


「連行します」

「どうして!!?」

「抵抗しないで下さい。事情を聞くだけです」


 あれー!!!


 うそー!!




 

 手筈通りに全てやったのにルカは憲兵に連れて行かれ、アンジェリスは運ばれていった。

 ぼくは―――





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