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11・5 王室調査官と元勇者

バズの幕間劇です。


 

 コルベットとルカが迷宮で出店を出した頃のこと。


 バズはその後を追い、迷宮へ向かっていた。ところがその道中、追手の気配を感じた。


(ヨウコを死なせて逃げたと見なされたのか。迂回してやり過ごせばあの少年たちを見失ってしまうかもしれない。一か八か、迎え撃つか)


 深い森の中で、気配を頼りに攻撃を仕掛けようとしたとき、少女の声に意表を突かれた。


「バズ殿、我々に戦意はありません。我々は第二王女殿下の使いの者です」

「第二王女様だと?」


 姿を現した者たちは戦意が無いことを示し近づいて来た。

 バズは甲冑を着た少女と、ローブを纏った巨人に注目した。

 

(手練れはあの2人か……)

 

「ご警戒なされるな。騙すつもりならばこんな回りくどいマネはしません」


 そう言って少女はバズに勅書を見せた。

 

「確かにこれは第二王女様の印章。なぜあなた方が私に?」

「我々の使命は禁書の封印を神殿と共に行うこと。また、禁書を利用しようと目論んだ者たちを公正な裁きの場に引き出すことです」

「王立調査官がなぜ? まさか、あの虐殺に王家が関係しているのですか?」


「それをはっきりさせなければなりません」


 王立調査官はかく王族の下で動く諜報員。その働きは王族個人の裁量によって様々だが、第二王女の調査官の役目は決まって不正の摘発だった。それも王室が関わったと疑いがある場合に限られる。



 バズは街を離れ一週間、その後何があったかを第二王女が派遣した調査官から聞いた。


 レクサスの騎士たちは魔本を回収し、神殿の穏健派閥で世俗との癒着の無い勢力とコンタクトし、禁書の封印を求めた。ところが、領主がそれに勘づき、私兵を動かした。領主は神官を神の代行者と主張する神殿第二派閥と結託し、禁書の奪還とレクサスの騎士たちの抹殺を目論んでいるという。


「私兵を出す領主に、前もって王宮から金の流れがあったことが確認されています。王家の誰かが、領主を動かしている。それも秘密裏に」

「しかし、その禁書とやらは一体……? それがあの虐殺を引き起こしたのですか?」

「そうです。街にいた神殿関係者がそのあまりの危険性ゆえに穏健第三派に助けを求めるほどのものです」


 街にいた神殿関係者はスキル神授説を唱える第一派と神官至上主義の第二派。彼らの主義主張はどちらも虐殺で現実的に覆された。

 自分たちの派閥の垣根を超えて、最も勢力の弱い第三派に助けを求めるとは相当なことだ。



「あの禁書はスキルを与えるものなのです」



 この世界において、それは実在しないおとぎ話の中の存在。架空のものであり、実在を神殿が否定してきた代物だ。

 それを王家の関係者が認めたことにバズは事の大きさは自身の想像よりはるかに大きいことに気が付いた。


「まさか、スキルとは神が人の生まれたときにお与えになったもののはずでは?」

「それが多数派の意見。本、つまり古代の人々がスキルを神からではなく他人から分け与えられていたとしたら、スキル神授説は成り立ちません。なので今までその存在は伏せられてきました。また、今回そのスキルによって大神官、神官たちも他の市民と同様に死に至ったことから第二派の神官が神と等しいという考えも否定されました」


 古代の人々が本に封印して残したスキル。

 それは絶大な力と共に災いの元にもなる。


 それが今回の一件で証明されてしまった。


「誰がそんな危険なものを利用しようだなんて……まさか、王家が?」

「だから我々がこうして調査に参ったのですよ。ご協力くださいますね、白銀のルーキー殿?」


 バズはコルベット追跡の間に得た情報を伝えた。

 


「私はこれから何か起こるとすれば、神殿、王国だけではなく、あの少年の行く先でも起こると考えてします。彼を止めることが私の使命です」

「わかりました。では同行者に一人お連れ下さい。元騎士のランスです」


 バズの前に歩み寄ったのは巨人。長身のバズよりも二回り以上大きい。


(これは人間か? テイミングされているモンスターかと思った)


「前戦に居たのは40歳までですので、バズ殿の脚を引っ張らぬよう、馬で行きましょう」


(普通にしゃべれるんだな。確かに、彼と歩いていたら絶対に追いつけない)



 老練な元騎士とバズは馬で迷宮を目指した。

 

「ランス殿、これまではどちらの戦場を?」

「ギタルクス、デボン砂漠、アーチカ列島で従軍しておりました」


(何!? どこも魔王軍との大激戦区じゃないか! それに、ランスといえば……いや、まさかな。彼からは脅威を感じない。多めに見積もってもおれと五分か、それ以下か?)



 走り去った二人を残った調査官たちは見送り反対方向へ向かった。


 東のレクサスへ。



 同日、同時刻。

 とある馬車がレクサスを目指し街道を進んでいた。


「姫巫女様、これ以上は馬が持ちません。街までまだ七日以上かかります!」

「それでは街に私兵が到達した後になってしまいます」

「では、仕方ありません。森に入り近道を。少々揺れますが」

「お願いします。絶対にこれ以上魔本をめぐる争いを起こしてはなりません」


 馬車とそれに追随する騎馬は森の暗闇に脚を踏み入れた。





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