9.白銀のルーキー
コルとルカが後にした村での後日譚です。
コルベットたちが村を出て数日後、村に新たな訪問者が現れた。
「あんた……ひょっとしてバズか? 最速で白銀級に成り上がった天才剣士の!」
「バズと申します。天才かどうかは知りませんが、白銀級冒険者をやらせていただいております」
冒険者とは思えない礼儀正しさは村人たちを驚かせた。
「等級:白銀」と言えば、一般冒険者を超えた高位冒険者。
赤鉛……新人・駆け出し
青銅……一般・見習い
黒鉄……上位・熟練
白銀……高位・超人
23歳という若さでそこまで上り詰めたバズは、一部の界隈で有名だった。
「謙遜しますなぁ! 人間ができちょる。さすがは白銀ルーキー!」
「謙遜ではありません。私は八階級の中間ですから」
超人たる白銀の上にも、四つの等級がある。
黄金級……英傑・極めし者
極銀級……勇者・覚醒せし者
聖銅級……伝説・最高峰、頂点
実質的に冒険者の等級の限界は聖銅だが、その上にもう一つある。
神鉄級……人の理解の及ばない存在
「そいで、今日は依頼かね? 今は、その……落ち着いてますが」
「こちらに、二人組が来たと思うのですが……一人はひどい火傷の少年。もう一人は深紫色のローブの女性」
「……ああ、来たよ」
男は後悔を吐露するように、コルベットとルカのことを話した。
「彼らにはすまないことをした……」
「どういう意味ですか? 皆さん無事ですか?」
「ああ、彼らのおかげさ。だが、おれらには彼が人とは思えんでな。怖くて、助けてくれた恩人を追い出しちまった……馬鹿なことをした」
「この村に何が?」
村の貯蔵庫。そこでバズが見せられたのはフォレスト・サラマンダー。その解体された部位、取り出された魔石、ねじり切られた頭部を前に、バズは愕然とした。
(たった一人で、この大きさのフォレスト・サラマンダーを討伐しただと……それに、この異様な力の痕跡。やはり彼の力はおれをはるかに……いや、黄金級よりも上かもしれない)
バズはその道中コルベットたちの戦いの痕跡を辿ることでコルベットに起きた変化がどう彼を変えたのか、少しずつその輪郭を掴み始めていた。すなわち、レベル1だったはずの少年は何らかのスキルの影響により、一気に黄金級以上のステータス補正を得たのではないか、という当て推量。それはねじり切られた頭部が半ば証明していた。
「コルベットは炎に呑まれたと思ったら、何事も無いかのように、炎の中で立っちょった。そんで、口を無理やり閉じて、こう、風車みたいにぐるぐる!!っと回ってよう。物の数秒で退治しちまった」
「これは、素手で!?」
「おおう。しかも、首を取った後、燃えてた身体が治っちまった。まぁ元からあった火傷はそのままだったが」
「女性の方は?」
「ああ、あの別嬪さんは、炎に巻かれて逃げられなくなった子たちを助けてくれた、らしい。子供たちも一瞬で、気が付いたら彼女に負ぶさってたっていうし」
(村長の話から彼には『火耐性』と何らかの回復系スキルも備わっている。……自然に発現したのか、それとも……)
謎は増えた。
行動目的だ。
大虐殺を引き起こし、逃亡中である身でありながら、行きがかりの村のために三日も滞在し、倒した大型モンスターの魔石を置いて去った。
(悪意から生まれた怪物が、善になり得るのか? 思えば彼には悪意というものを感じなかった。村長の話からも。いや、おれがこんな楽観的ではいけない)
バズはすぐさまコルベットたちの追跡を再開した。
「もう発たれるんで? あの、このモンスターの魔石は……」
売れば一財産だが、村長がバズにお伺いを立てたのは、売りに行けないからだ。未加工の魔石を持ち歩くとモンスターに狙われやすくなる。村から街までには山賊も出る。
「魔石はおれが買い取ります。その代わり、肉以外の部位も高額で売れますから、面倒でもまずギルドで護衛依頼を出したのち、冒険者と共にギルドに持ち込んでください。その時、何があったのか、出来るだけ詳細に話を広めて下さい」
「はぁ、わかったけども……」
自分が報告しなくても冒険者ギルドを通じて情報の伝達は行われる。不特定多数に情報を広めることで、隠蔽や情報の探り合いに無駄な時間を割くのを避ける。大体的に広めればギルドを通じ、バズも今後の情報を得られる可能性もある。
「……この先にあるのは、小規模な迷宮か」
バズはモンスターを切り倒しながら、止まることなく進み続けた。
===ステータス===
■バズ・ア・シェンディム(23)
・種族:人間
・職業:冒険者(白銀)
・レベル28
・体力:B 魔力:E 精神力:B パワー:B スピード:C 運気:E 器用度:B
・スキル
B:『大剣・中』
C:『筋力向上・小』『耐久上昇・小』『短剣・初』
続きが気になる、と思った方はブクマお願いします。おもしろいと感じた方はぜひ評価をお願いします。




