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6.黒猫

「どこから話すかな…」


 真剣に悩んでる風の晃がぽつりともらす。


「そう、確か2年になってすぐのある日の放課後だったな。雨が降ってて、俺は一人で帰ってたんだ」


 珍しく真面目に話始めたので黙って聞くことにした。


「で、商店街を通り過ぎようとしたぐらいの所で、ふと路地裏に目をやると、段ボールに入れられた子猫がいてさ」


 なんだろうこの展開。すごいベタな空気感が満載なのだけれど、正直続きも気になるので耳を傾ける。


「それが黒い子猫でさ、軒下ではあったんだけど、若干雨に濡れて、可愛いやら可哀そうやらで、思わず近づいて抱き上げたんだよ」


 なんか想像しただけでちょっと子猫が可愛そうになった。


「俺さ元々黒猫が好きで、某宅配便アニメ映画のババとかもうたまらんよな?大体黒猫ってさ…」


「いいから続き」


 油断すると変な方向に話が進みそうなので修正を入れる。


「お前せっかちな奴だなあ。そんなだと嫁の貰い手ないぞ?」


「よけいなお世話です。あとそれ若干セクハラだからね」


「えー?なんだよーそれ厳しすぎんだろ。昭和か?昭和の女か?」


「いや逆だから!今時だからセクハラなの!昭和の頃とかその辺ガバガバでしょ!」


 まったくこいつは仕方のない奴だな、みたいな顔して私をみる晃。落ち着け私。負けるな私。


「で、保護してあげたいんだけど俺の家のマンションペット禁止でさ、どうしたもんかと考えてたところに、ちょうど母娘連れが近づいてきてさ、娘は小学校低学年ぐらいだったかな?」


(ん?)


「で、事情話したら、情操教育にいいからってその母娘の家に引き取られることになったんだ。いやーホントよかった~」


「え?」


「で、気持ちよく家に帰った」


 ドヤ顔で言い切りやがった。


「麻里は!?麻里はどこにでてきた!?」


「何言ってんだ?どこにも出てきてないだろ?ちゃんと聞いてんのか人の話」


「いやいやいや!ちゃんと聞いてたから突っ込んだんだし!何今の話??意味わかんないし!何のくだり!?」


 麻里のほうを見ると相変わらずの聖女スマイルだし、達川君は平然とした顔でジュースを飲んでいた。

一瞬自分が変なのかと思いかけたけれど、冷静に考えても私のツッコミは間違えてないはずだ。


 予想していたベタな流れですらなかった。ある意味恐ろしいなこの男…


「まあ続き聞けって、皺ふえんぞ?」


「くっ…」


 非常に腹立たしくもあるけれど、ここは我慢だ。聖女麻里と賢者達川を見習うんだ。魔王に負けてはならない。


 結構自分ではクールなほうだと思っていたのだけれど、冷静な二人を見ていると自信がなくなる…


「で、それから数日後の放課後、これも商店街だったんだが」


 気持ちを切り替え話の先を待つ。


「歩いてると、なんかもめてる風な声が聞こえてな、ふと見るとうちの学校の制服着た女子が二人組の男に絡まれてる感じでさ」


 ああ、なんだろうこの展開(2度目)でもきっとまともな展開じゃないんだろうと自分に言い聞かせる。


「その女子は麻里だったのよね?…」


「ああそうだぞ」


 一応保険で訊ねてみたが、今度はちゃんと麻里が登場するらしい。


「で、さすがに穏やかな雰囲気じゃなかったんで、近づいて状況をたずねてみたらさ、男の一人が突然切れだしてナイフ取り出したんだ」


「え!?」


「さすがにこのままじゃヤバいと思って、俺も変身しようと…」


「え???」


「…したとこで目が覚めた」


「なにそれ!!よりによって夢オチとか!国民的アニメのネコ型ロボットも真っ青だよ!!」


「いやネコ型ロボット元々青いだろ。ああ…前のネコ拾った夢にかけてるのか?オヤジギャグか?」


 私のツッコミに対してそんな冷静なツッコミ返ししやがった。


「変身とか!小学生??あんた小学生なの!?しかも猫のほうも夢って!!」


「あはははは、二人ともおもしろいね~」


「なんか後藤さんのイメージちょっと変わったな」


 言い返してると、聖女麻里と、ちょっとズレた感想を吐く賢者達川君が暖かい目でこちらを見ていた。


「菜奈はね~ツッコミ上手で面白い子だよ~」


 いえ、その件に関して全く心当たりございません。


「うん。もっとクールで人と距離をとるタイプかと思ってた」


 はい。自分ではそういう分析ですが。なにか?


 で、実際のところは、1年の頃課題をサボりまくってた晃がその穴埋めで担任から指名され文化祭のクラス実行委員になったとき同じく別のクラスで実行委員だった麻里と知り合ったと。なんのドラマもない感じだった。


 まあ現実はそんなものですよね。


 真面目に話を聞いた私の時間をかえせ魔王。



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