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5.黄昏の時間

 数日後の放課後


 自席で帰る支度をしつつ、先日の傘と小山君の件のお礼をどうしようかと考えていると麻里が声をかけてきた。


「菜奈、難しい顔してどうしたの?」


「え、私難しい顔してた?」


「そうだね~。でもそういう顔もなんか”できるOL”みたいで似合ってるよ?」


「いや、できるOLって…」


 たしかに年上に見られることは多いけど、褒められているのか貶されてるのか微妙な表現にも思える。麻里に他意がないことはわかってるのだけれど…


「で、何悩んでるの~?」


 そんな大層なお礼を考えていたわけでもないけれど、ここは麻里に一知恵借りるのもいいかな


「あのね、この前ちょっと晃に借り作っちゃって、利息が膨らむ前に何か返しとこうかなってね」


 臨時収入もあって懐は温かいので、普段お世話になってる麻里にもなにかおごる旨の話を含め説明する。


「フフフ」


 なんだか聖女のような微笑で笑う麻里皆まで言わずともわかってますよ的な笑顔見透かされて困るような事はないけれど、それでもなにかくすぐったいようで返事に困っていると


「よし、私にまかせなさ~い!」


 言いながら席を立ち教室の扉を開け廊下へ出る麻里


「ほら、菜奈もいくよ?はやくはやく」


 廊下から振り返り手招きしつつ、ポカンとしてる私をよそにそのまま歩き出している。あっけにとられつつ席を立って麻里を追いかける。


 着いたのは晃の教室だった。


「あきらくーん」


 麻里が声をかけながら近づいていくと、晃は自席らしい場所に座ったまま、友人らしい男子と話をしていた。


「あんた友達いたんだ?」


 我ながらまた可愛げのないことを言ってるなと思いつつ教室に入る。


「なにいってんだ100円玉。俺は友達多い選手権で総理大臣に次いで暫定23位ぐらいだぞ」


「いや、それ超わかりにくいから、しかも100円玉設定まだ生きてたんだ…」


 そんないつものくだらないやり取りをしていると晃の友人らしき男子が声をかけてきた


「へー、晃とこんな感じでやり取りする女子いたんだ?」


「え?どういうこと?」


 思わず問いただしてしまったけれど、考えてみたら別に私はそこまで普段の晃を知ってるわけでもなく、彼の交友関係や人当りなど自分に対してのものしか知らない。


「ああ、ごめんごめん。気にしないでくれ。俺は達川たつかわ 大樹だいき。晃とはまあ…中学の頃からの腐れ縁って感じかな」


 私と麻里も自己紹介を返す。達川君は身長が晃より少し高く髪型も今時でいい感じに制服を着崩した中々のイケメンさんである。オーラは赤に近いオレンジ色。見た目の冷静な感じとは逆の情熱的な色だった。まあ晃も黙っていれば、なかなか絵になる二人なのかもしれない。


「で、話があってね~」


 麻里がここに来た目的を話し出す。


「……というわけで、皆でファストフードいこー!菜奈のおごりです!」


 お礼含め云々の話を上手くまとめて話す麻里。こういう才能もあるんだよねこの子。


「それ、俺もついてっていいの?」


 達川君が遠慮気味に聞いてくる


「いいっていいって!菜奈の恩は俺の恩、俺の恩は大樹の恩ってな?」


「恩が多すぎてわけわかんねえよ」


 冷静に突っ込む達川君。なるほど腐れ縁だけあって慣れたものらしい。


「別にいいよ。私今懐あたたかいし」


 私が了解の旨を伝えると晃が目を見開いて呟くように口を開く


「!…これはもう夏目の君…いや福沢の君と呼んだほうが…!?」


「もうそのくだりはいいから…」



 なんだかんだで駅前のファストフード店につきセットメニューを私に言伝して麻里だけ先に席の確保に向かう3人で注文を終え店内で麻里をさがすと、かなり混んでる中いつもながらの運というか行動力で見事4人席をキープしていた。


 席に着き食べながらなんとなくという感じで達川君が口を開く。


「そういえば後藤さんと晃ってどうやって知り合ったんだ?」


 間を置かずして晃が答える。


「そう、あれは運命の日、黄昏の時間…」

「平日の放課後ね」


「様々な色が織りなす至高のシソーラス、そう機械仕掛けのスクウェアの前で」

「ジュースの自動販売機前よ。補習組の癖に妙な単語は知ってるのね」


「その手から零れ落ちる輝く雫」

「小銭を落としたわ」


「その奇跡のような光景に俺は一瞬にして目を奪われ…」


「ああ、大体わかったからもういいぞ。後藤さん解説ありがと」


 達川君の一言で若干残念そうにしながらも晃の説明が終わる。流れのついでというわけでもないけれど、私も少し気になってたことを聞いてみることにした。


「ところで麻里と晃はどういう知り合いなの?」


「あ~私とあきらくんはね~」


「まった。それは俺の口から言おう」


 麻里が言いかけたところで晃が割って入る。


「いや、一応私真面目にきいてるんだけど…」


「皆まで言うな、わかってる。真面目に答えよう」


 今までの経験からまったくもって信用ならない。麻里はまた聖女のような微笑で見守っている…

 

 達川君は表情ではわからないが、いつもの事?なのか達観してる風にさえ見て取れる。若干あきれ気味の私に気が付いたのか、


「わかってる。ちゃんと話すから聞いとけって」


 いつもより真剣な口調で話し始める晃だった…





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