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3.血液型

 梅雨入りしたばかりのある日の放課後。


 朝は晴れ間が出ていたにも関わらず、昼過ぎから突然天気が崩れ、土砂降りになっていた。傘は持ってない。


 下駄箱から一歩出れば、あまり身体によろしくない天然のシャワーに見舞われることになる。流石にそれは避けたいので、小降りになるまで待つことにしようかと考えていた時…


「よお、菜奈。傘ないのか?」


 高橋がいつもの調子で話しかけてきた。

呼び捨ての許可を出した覚えもないが、無駄な抵抗のように思えたので見逃す事にした。


「まあね」


 彼の手にも傘はない。


「なあ、お前って血液型なに?」


 なんの前触れもない唐突な質問だったが、慣れてきた自分に心の広さを感じた…


「何それ?合コンですか??」


「まあ、暇つぶしだ。で、何型?」


 自信たっぷりに言い放つ高橋。

占いでも始まるのかと一応答えてみる。


「AB型」


「うわ~マジか~超変人だな?」


 こいつにだけは言われたくなかった…


「AB型って、2重人格で、自分を出さず、人とのつきあいが苦手なんだろ?」


「彼氏とかいるのか?お前?」


 随分な言われようである。


「今はいない…」


「だろうな~まあ仕方ないよな?元気出せ?な?」


 ここまでバカにされて黙っているほど、まだ私の心は広くなっていなかった…


「あんたは?」


「ん?ああ、彼女か?モテすぎて選びきれない」


 オーラに変化はない。


「……血液型聞いてるんですけど!」


「なんだ、そっちか」


 突っ込みどころが多過ぎて大変である。お笑いのプロの方を紹介してほしい。


 しかし血液型性格判断ならある程度はわかる。様々な雑誌で星座占いや血液型占いにもまれた現役女子高生をなめてもらっては困る。どの血液型でも弱点はあるのだ。


 私は頭の中で各血液型の突っ込みどころを整理していた。


「AB」


「はぁ??」


「いや、だからABだ。俺」


 整理していた脳内情報ファイルが一瞬でデリートされた。


「あんたアホ!?本物のアホなの??」


 こちらの台詞は聞いていないらしく、続けて言い放つ。


「いや~~同じ血液型とはな~~世の中狭いな?」


 この台詞で私の中の何かが壊れた。


「ぐは!!あはははははははは!!!」


「よ、世の中狭いの、つ、使い方、あは!!あははは!!!」


 もはや突っ込み不要の清々しいアホっぷりだ。


「女子高生とは思えない豪快な笑い方だな、天晴れだ」


「い、いやいや、あんたの方が天晴れだよ!ハーハー…」


 笑いも収まりきらぬ中続けて彼は言った。


「そういえば、俺はお前の事、下の名前で呼び捨てにしてるから、俺も名前呼び捨てでいいぞ?」


「あーはいはい。もう好きにして」


 私は許可した覚えはないけれど、彼は許可を出した。笑い過ぎて突っ込む気力はもうない。


…ふと、彼の手元を見るといつの間にか折り畳み傘を持っていた。


「傘もってんじゃん!!!」


 萎えたはずの気力が蘇り突込みが出た自分に少し驚いた。


「持ってないとは一言もいってないぞ?」


 言いながら傘を私に差し出す。まだ雨はやむ気配なく降り続いていた。


「それ私に貸したらあんたどうすんの?」


「走って帰る」


「何それ?どこのラブコメ??古っ!!」


「カッコいいだろ?惚れるなよ」


 オーラに全く揺らぎはない。本心で言ってるらしい。半ば強引に傘を私に手渡すと、本当に走り出した。


「ちゃんと洗って返せよ!またな!」


 傘を洗う話は私の17年の人生では聞いたことがなかった。


 天気とは裏腹に、久しぶりに心の底から笑った気がする……




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