13.天使
登校日の放課後、魔王が賢者を引き連れやってきた。
もとい、晃が大樹君を連れて教室にきた。
「今度花火大会あるだろ?それ皆でいこうぜ」
「いいね~私も皆を誘おうかなって思ってたんだよ~」
晃の提案に麻里が乗っかった所で大樹君が口を開く。
「あー、その花火だけどさ、妹が行きたがってて、うち両親共働きでその日仕事で妹の付き添いしなくちゃダメなんだよなあ。うちの親妹に甘くてさ、家庭内ヒエラルキーは俺が最下位なんだ」
主人公属性の意外な弱点を発見したけれど、ちょっと大樹君がかわいそうな気もする。そんなことを考えていると晃が口を開いた。
「いいじゃん妹も連れて皆で行けば」
おお、晃にしてはまともな提案でちょっと関心した。でも。
「うーん。でもなあ、せっかくの花火大会なのに皆に迷惑かかるだろ?あと晃はちらっと見たことあるだろうけど、知らないお姉さんと一緒だとあいつ緊張するんじゃねーかな?」
「お前の妹そんなタマか?」
最後に晃が言った言葉が少しだけ気になるけれど、それは私も考えていたことだった。知らない人だらけの中で小学生一人。人見知りの子だったら花火楽しめないんじゃないだろうか。
「へー花火大会いいわね。せっかく仲良くなったんだから私も是非まぜて欲しいわ」
ヒロイン候補、真野悠里様の登場である。
そんなに仲良くなった記憶が私には全く無いけれど、ヒロイン様が仰ることなので、生徒Aな私は逆らうことなどできない。
「それに私がいれば雫ちゃんも気楽なんじゃないの?」
ああなるほど、悠里ちゃんは幼馴染だから妹さんとも仲いいんだね。しかし…兄が大樹で妹が雫とか、言い方おかしいかもだけど、名づけセンスいいなご両親。さすが主人公補正。
「いいね~人数多いほうが楽しいし、大樹くんの妹さんも見てみたいよ~」
おお、さすが麻里。悠里ちゃんの威圧?にも負けずマイペースを貫いている。さすがダブルヒロイン候補。生徒Aとは役者が違う。
そして悠里様。そんな目で私を見ないでください。花火大会の件、提案したのは晃です。私は無実です。しかもここまで一言も発してません。
ああ、何だろう。もう帰りたい。帰ってクーラーの効いた部屋でアイス食べるんだ。ハイーパーカップのチョコがいいなあ。でもたまには気分をかえて抹茶という手も…等と現実逃避していると。
「今から楽しみだよ~、ね~菜奈?」
聖女まりえもんから声がかかった。
「うんうん。そうだねー」
町娘生徒Aはモブ笑顔を浮かべながら空気を読むのがやっとであった。もう私の属性が訳わからないとこになっている。
◇
そして迎えた運命の日。
はい。花火大会当日です。大げさでスミマセン。待ち合わせは会場から少し離れたコンビニだった。地方都市最大の花火大会ということもあって現地集合は難しいことが予想されるための対策だ。集合前に先に麻里と合流してコンビニへと向かう。
「うわ~菜奈、浴衣凄い似合ってるね~水仙柄とかイメージにピッタリだよ~」
私は浴衣なんて持ってなかったのだけれど、花火大会に行くことを母親に言ったら、自分の若いころの浴衣を取り出して嬉しそうに着付けしてくれた。紺色でそんなに派手なイメージもないため私もなかなか気に入っている。
まあもっとも女子高生らしい可愛さとか華やかさがあるかと言われれば否と答えざるをえないけれど。
「麻里こそホント可愛いし、くそう…私にもその萌え要素をよこせ」
ホントに私と対照的というかなんというか、白地に朝顔が可憐に咲いている。無いものねだりをしても仕方のないことだけれど…来世は麻里のような女の子に生まれたい。見た目も性格も。
コンビニにつくとすでに晃が待っていた。浴衣とかではなく普通の服だ。
「晃く~ん早いねぇ~」
麻里が手を振りながら近づくと晃が答える。
「こう見えても俺は無遅刻無欠席で…」
ああそういえばモールの時言ってたなと思いだす。確かに今日の様子を見ても待ち合わせとか約束事は守る人のようだ。
3人でそんなやり取りを始めたところで大樹ご一行が登場した。
「よっす。待たせたか?」
晃と同じく普通の服な大樹君と少し遅れて浴衣の悠里ちゃん。ちなみに黒地に椿の柄で恐ろしく似合っている。日本美人感が半端ない。
そしてもう一人。悠里ちゃんと手をつないだ、ピンク地に牡丹柄浴衣の美少女天使がいた。




