プロローグ 始まりは突然に
雲ひとつない青空。
太陽の光がジリジリとマンションの窓から入ってくる。
ジリジリと、溶かすほど暑くなる程に――
「いや暑すぎる!これが温暖化か!俺らを殺しに来てるだろコレ!」
一人が言う。この暑さに耐えきれなくなったのか、怒りを込めながら叫ぶように言う。
ホリが深く、短く刈り上げた髪の毛。そして額に真っ赤な色のタオルを巻いたその男は、ロールプレイングゲームをしていた。
「温暖化って年々進んでるよな。俺らにはどうする事も出来ないよな。あ、"ハル"、そこ進むと死ぬぞ」
ハルと呼ぶその男は、スマホを弄りながら横になっていた。
中性的な顔立ちに眼鏡をかけている。暑いからか、上はタンクトップ1枚で過ごしている。
「え?ああああああああ!!マジで死んだ!!」
ハルという男は操作しているキャラが死んで、そのまま硬直した。
「だはははは!!甘いなハル!次は俺がやる!貸せ!」
「いいけどよ…てゆーか俺よりも"ヨシ"の方が下手くそじゃねえかよ!」
「ふっふっふ…今までの俺とはひと味もふた味もさん味も違うぜ!闇の力を解放したなんとやらがエクスプロージョンしたからな!」
ヨシと呼ばれたその男は、まるで厨二病のようなセリフをいいながら、コントローラーをハルから貰う。
顔立ちは整っていて、女性に近い顔つきだ。イケメンと呼ぶにふさわしいだろう。
「あれ?ここってなんだっけあああああああ!?!?死んだ!死んだわ!!」
「なんでオレが死んだ場所で死んでんだよ!隣で見てただろ!」
「ほら、俺過去には興味ないから…」
「カッコつけて言うな!」
この男、頭が悪い。簡単に言うと言うとバカである。黙っていればイケメンなのに、いざ本性を知るとバカであるのだ。
「つか、"ナル"も分かってたんなら先に言ってくれよ!」
「そうだぞナル!なんで言わないんだ!」
「え、だって言ったらつまらんし?それにお前らが死んでんの見てて面白いし」
スマホを弄っていた男、ナルは不思議そうな顔で言う。この男、ナルはS気質である。
「なー。早く俺に代わってくれよー。腹減ったし」
「まぁ待てよ"タツ"!俺が死んだら代わってやるって!」
「そう言ってヨシは何回死んでるんだよぉ」
「んー…3回?」
「いやいや、5回死んでるぞヨシ!」
マイペースに話す男はタツと言われていた。この男は年中パーカーを着ている。夏は半袖のパーカー。冬もパーカーの上にジャンパーやコート。パーカーを来ていないのは見た事が無いくらいだ。
本人曰く「パーカーは最the高」らしい。
「いやー、でもこうして四人で遊んでもう何年くらいだ?」
「出会ったのが小学生だろ?軽く三十年いってんじゃね?」
「マジで?俺らもうオッサンじゃん!」
「まーほとんどこの四人で遊んでたしねー」
そう。この四人、アラサーである。
周りからしたら顔は若く見えるかもしれないが充分30を過ぎている。
「あー暑いし退屈だ!なんか面白い事とかねえのかなー!」
「それな。刺激のあるなんかが欲しいよな。隕石でも落ちたりとか」
「ありえないんだけどね~」
「「「「はぁ…」」」」
四人はため息をついた。
「どうせなら異世界とか行ってみたいよな!」
ヨシがそう言った。
「異世界転生ってやつ?」
ナルが聞く。
「いいねぇ。どうせならチート能力とかついて無双したいぜ!」
ハルも乗り気で答える。
「どうせなら美味しいものとか沢山食べたい…」
タツも気だるげに言う。
「いきなり神様がバーンと現れたりすんだよ!そっから異世界に連れてかれるって感じになってさ――」
ヨシがそう言った瞬間、テレビが光り始めた。
「うわ!なんだこれ!ナル!こんなイベントあったか!?」
「いや、こんなイベントなんて無いし、つかあったとしても目に悪すぎんだろソレ!訴えれるレベル!」
「ここで鋭いツッコミとは恐ろしい!」
「ヨシ、それ今言うー?」
この状況に驚愕しているハルとナルに対し、全く関係無いところを気にしているヨシにそれを指摘するタツ。
全く統一感の無い四人の前でただテレビの光は強さを増していき、やがて部屋を包み込んでいった。
「まじてこれまずくねぇかあああああ!?」
「目があああああ!!!」
「うおおおお!!聖なる光がこの俺を浄化していくうう!!!」
「まぶしいいー」
四人が見えなくなるほど明るくなった光はやがて消え、消えた時には四人は姿を消していた。
ただ、テレビにはGAME STARTという文字が浮かび上がっていた。