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ハーレムサイド エピソード3 カーロラーナ

 “ユウシャ”は問題児だ。


 カーロラーナの中でそれは、とても困ったことだった。


 カーロラーナとユウシャは友達である。

 トリスタニアとも友達だが、これは家が決めた主従関係でもある。

 しかしユウシャとは地位も何も関係なく本当にただの友達だった。


 ユウシャが3歳になるまでは、家族も、周囲の大人も、トリスタニアとユウシャが遊ぶことを止めなかった。それどころか、ニコニコして見ていた。

 それを6歳のカーロラーナはじっと観察していた。騎士たるものは、全てを自分の目で見極めなければならないと教えられて育ってきたからだ。向けられている笑顔の意味を考えなさいと、母親からいつも言われていた。


 カーロラーナがトリスタニアの騎士になることが決まったのは、4歳のときであった。カーロラーナの生まれは代々王族の護衛騎士などを輩出してきた伯爵家だったし、年齢も性別もちょうどよく、魔法の才能があることも大きかった。


 護衛する相手は女の子だと聞いていたカーロラーナは、男の子のようなトリスタニアに驚いたものの、子どもだからこその柔軟さでそれを“そういうもの”なのだろうと受け入れた。トリスタニアが男の子のような振る舞いをしている理由を知ったのはもっと大きくなってからだったが、その時にはすでにカーロラーナの中でトリスタニアのイメージが固まってしまっていたため、やはり“そういうもの”なのだろうとするりと飲み込んだのだった。

 ちなみにカーロラーナは護衛騎士に決まったときから“女性騎士”として淑女教育がはじまっており、4歳の時点で口調もしぐさも男の恰好で男のような言葉遣いをするトリスタニアよりもはるかに女の子だった。


 なんでも受け入れてくれるカーロラーナに、トリスタニアは懐いた。そして、いつの間にかそこに追加されていたのが、ユウシャであった。


 ユウシャには親がいないとのことだった。トリスタニアに聞いても「わからない。」というし、侍女に聞いても曖昧な言葉ばかりで幼いカーロラーナにはよくわからない。

 もしかしたら4歳児と5歳児の女の子2人となら、やんちゃになり始めた2歳の男児も一緒に見れば楽だろうとかいう安易な考えがあって一緒の部屋に放りこまれたのかもしれない。特に5歳になったカーロラーナは家でのしつけもありだいぶしっかりしたお姉さんだった。


 そのお姉さんぶりを発揮して、カーロラーナはユウシャの遊び相手になった。もちろんトリスタニアも入れて3人でおままごとだ。いわゆるヒーローごっこも3人でやった。

 カーロラーナが城でも剣の練習をし始めると、トリスタニアもユウシャも一緒にするようになった。そうやって共通の時間を過ごすうち、3人はいつでも一緒にいるようになった。


 しかしそれはユウシャが4歳になったあたりから、突然難しくなった。


 そのころにはカーロラーナは6歳で、家の者からもユウシャがどういったものなのか、その名前の意味を聞かされていた。勇者ではなかった場合、将来的にどうなるのかもやんわりと教えられた。

 それを聞いたカーロラーナがまず考えたのが、トリスタニアがショックを受けるだろうということだった。あの2人はカーロラーナとユウシャの関係と同じで、主従も何もない数少ない同等の友達だったから。


 トリスタニアに馬鹿正直に言うわけにはいかない。

 できるだけ穏便にユウシャと距離を取るしかない。しかし相手はヤンチャ盛りの4歳児で、相手をしているトリスタニアも楽しそうなのでなかなかうまくいかなかった。


 トリスタニアはトリスタニアで、なぜかユウシャと一緒にいたがるのだ。しかし、ユウシャといればいるほどトリスタニアの王宮での評価が下がっていく。以前はあんなにニコニコしていた周りの大人も、眉を顰めるようになった。

 しかも、なぜかトリスタニアはユウシャといるだけで実の兄である皇子たちから馬鹿にされるようになった。ますますカーロラーナはトリスタニアとユウシャを離そうとしたのだが、大人の手にも負えないユウシャは6歳児の手には余り過ぎであった。


 結局、カーロラーナは諦めた。家族にも、「トリスタニア様の騎士である私が、トリスタニア様の意に反することはできません。」と言い切った。

 カーロラーナは、トリスタニアとユウシャと3人の時間を楽しむことにしたのだ。ユウシャが勇者でなくても、それはユウシャの責任ではない。ぜんぶ大人が悪いのだ。カーロラーナは、何があってもトリスタニアの味方でいようと決めた。


 そうしてユウシャは5歳になった。



 ユウシャは、クルスになった。

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