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異世界に転生したら召喚士の家系だったから獣カフェをはじめたら  作者: 入蔵蔵人
異世界に転生したら召喚士の家系だったから獣カフェをはじめたら
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パレード(表)

ハーレム構成員について。

 わあああああああああ……


 魔法の花吹雪が帝都の大通りを舞い、大通りの中央をゆっくりと進む一団を民衆の声と共に祝福する。

 その中心で、幌のない4頭引きの豪奢な馬車に乗っているのは、魔王を討伐した勇者パーティーだった。


 馬車の先頭に乗っているのは、金髪碧眼の勇者クルス。

 未婚の赤毛の母親から生まれたという、神の祝福を受けし子供だ。

 魔王と戦うための光の剣は腰にさしているものの、戦闘スタイルはどちらかと言えば魔法がメインで、あまり最前線で戦うことはない。

 彼は一度は魔王の前に倒れるも、不屈の精神で再び戦いを挑み、一騎打ちで見事魔王に勝利したという。

 その性格は温厚の一言につき、出来るだけ相手を殺さないという優しい心を持ち、民衆からの信頼も厚い。

 ただし仲間を傷つけられると性格が豹変し、一切の感情を無くして相手を破壊し尽くす、らしい。


 その隣に乗っているのは、男装の麗人トリスタニア。

 茶色の髪は短く切りそろえられ、宝石のような薄い緑の瞳は男女問わず見るものを魅了する。

 彼女はこの帝都を守護する騎士団の団長で、凄腕の魔法剣士であり、勇者の幼馴染でもある。

 その正体は、王位継承権もある帝王の実の娘なのだが、既に、将来は勇者に嫁ぐことが決定しているらしい。

 今は勇者の傍らで静かに微笑んでいるが、戦いになればマントを翻し強力無比な雷の魔法で戦場を駆け抜ける一陣の風となる。


 トリスタニアの後ろに、隠れるように座っている赤毛の少女がいる。アニスだ。

 5才という異例の若さで神の祝福を受けてしまい体の成長は止まってしまっているものの、操る神聖魔法はそこらの大神官を凌ぐほどで、今回の旅でも勇者とその仲間を大いに助けた。

 しかし、元々はその見た目のせいで帝国で一番大きな神殿の奥に隠されひっそり暮らしていた彼女を勇者がどうやって見つけたのか、神官たちの中では様々な噂が流れている。


 アニスを気遣いながらも声援に対して手を振って応えているのは、全身鎧を着込んだカーロラーナだ。

 今日は兜を脱ぎ、太陽の光を浴びてキラキラと輝く金髪を露わにしている。

 魔法剣士であるトリスタニアとは違い、重たい鎧に身を包んだ彼女の役目は、すべての攻撃を受け、そして耐える壁だ。

 今回の戦いでは、魔王の魔法すら防ぐという守護魔法で、勇者と仲間たちを守った。帝国騎士団に在籍していた時も、最前列に立って敵国の大魔法からトリスタニアを何度も守ったという。

 鎧に入り切らないほど存在を主張する胸元を、あえてそこだけ鉄板を取り去ってしまっているその女性らしい型の鎧は彼女の特注品で、デザインしたのは勇者だという噂もあるが、真相は謎である。


 カーロラーナの後ろで、同じく……いや、その何倍も手を振りながら満面の笑みを振りまいているのは、ハーティアだ。

 褐色の肌には日差しがよく似合い、短い銀髪も風にサラサラと気持ちが良さそうに揺れている。

 この勇者パーティーで唯一の近接職である彼女の武器は、己の体だ。

 岩をも砕く拳に、鉄をも貫く蹴り。それは、彼女の部族に伝わる古の強化魔法によるものだ。

 しかし、彼女は元々は奴隷だった。……というのは、すでに帝都では有名な話である。

 そもそも彼女の部族は珍しい褐色の肌をしており、同じ人族でありながら地方では亜人とまで呼ばれていた。

 見世物奴隷として扱われていた彼女をたまたま見かけた勇者が、その戦闘能力に惚れ込み、言い値で彼女を買ったという。

 しかし、奴隷契約はその場で破棄され、今ではこうして勇者パーティーの一員として受け入れられており、彼女に奴隷だった頃の陰りは全くない。


 そうして勇者パーティーの最後の一人は、ぎゅっとトンガリ帽子のつばを持って恥ずかしがっている、長い黒髪に赤いリボンが映える魔術師、ラーニアである。

 彼女は帝国の魔法学院を最年少でなおかつ首席で卒業するという偉業を成し遂げた天才魔術師だ。

 しかし、魔法学院を卒業して1年も経たないうちに、なぜか行方知れずになっていた。

 当時は、王侯貴族の誰かに無理やり囲われただの、敵国の王子に惚れられて囚われただの、魔法に失敗して死んだだの様々な噂が流れたが、結局はどれも噂の範囲を出ず、人々は次第に彼女のことを忘れていった。

 そんな頃だった。帝都の人々は、再びラーニアを見かけるようになったのだ。

 しかも、その周りには勇者とその仲間たちがいる。人々は、勇者がラーニアをどこからか救い出してくれたのだと噂し、ラーニアの無事を喜んだ。


「あれ?……そういや、もう一人パーティーメンバーが増えたって言ってなかったっけ?」


 と、誰かがつぶやいた。


「最初から、この5人だっただろ?」

「いや、また女のメンバーが増えたらしいって聞いたぞ。」

「あー……何だったっけ、俺も聞いた。」

「荷物持ちの召喚士だろ?魔王討伐には関係ないんだからパレードに参加できるわけないだろ。」

「俺もその話聞いたわ。荷物持ちなのか?噂じゃ、あのレミリシアン家の召喚士だって話だったけど。」

「ギリトニアのレミリシアンか?そんなわけないだろ、あそこの国とウチは仲悪いんだろ?」

「ギリトニアっていやあ、魔王が死んで魔族の勢いが収まったら戦争始めるって聞いたぞ。」

「まじかよ。」


 勇者パーティーの謎の6人目の仲間の噂が静かに民衆に広がっていくが、それもすぐに別の話題になる。

 パレードが終わり帝都をあげた祭りが始まるとそれも消え、人々は勇者の勝利とこれから訪れる100年の平和を心から祝った。

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