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異世界に転生したら召喚士の家系だったから獣カフェをはじめたら  作者: 入蔵蔵人
異世界に転生したら召喚士の家系だったから獣カフェをはじめたら
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すずめ亭とぼっち

お店の説明回と、ぼっち。

「ぬ……。なんだこの召喚獣は……」


 膝に【猫:メインクーン】を乗せた青い地肌の大柄な魔族が、わなわなと震える手でそっと包み込んでいるのは、私が召喚した渾身(こんしん)の【小鳥:シマエナガ】だ。


「新しくレパートリーを増やしたんですよ。ふふん、可愛いでしょう!(たぶんどっかの学者さんが)シマエナガと名付けたのです!」

 私は(自分でいうのもなんだが)無い胸をはって自信満々に答えた。

「し、シマエナガ……?こんな小さな召喚獣が、一体何の役にたつというのだ?……なんと矮小な……。」


 動物たちを傷つけないようトゲトゲ装備はきちんとロッカーにしまい、膝の上でまるまって寝ている猫や足の甲の上で伸びる猫、そして手の中に収まる小鳥に細心の注意を払っている魔族が一体何を言っているのやら。

 ちなみにこの魔族、10日に1回は必ず顔を出す。いわゆる常連というやつである。

「可愛い。それが全てです。」

 私はそう言い切って、にっこりと笑った。




 ここは、私が経営する獣カフェ【すずめ亭】。


 【すずめ亭】があるのは、ダイガル界とかいう剣とか魔法とか勇者とかエルフとかドラゴンとかがいるようなファンタジー感あふれる世界だ。魔王もいる。今、目の前に。(笑)

 もっと詳しく説明すると、ダイガル界の北にあるノストーク大陸の、少し南寄りにある気持ちちょっと寒い土地にドーンと構えている帝国カトランダムの中央に位置する帝都の、南端らへんだ。

 そこに、なんかうっかり死んじゃった時に出会った神様の気まぐれでガッツリ日本人の記憶を残され、インターネット検索サービスCoocle(クークル)に脳みそ(?)を接続したままで転生とかしてしまった私の名前は、【秋野すずめ】という。


 ――といっても、この世界では、超有名な召喚師のひ孫という肩書の乗っかった“フィフトニカ・サラサ・レミリシアン”という名前のほうで呼ばれてはいるが。


 このレミリシアン家は、ずっと昔から強力な召喚士を輩出してきた名門中の名門で、私もその類に漏れず、2才(!)の頃から英才教育をばっしばっしと受けて育った。

 英才教育は、なんというか耐え難いものがあって最初は逃げ回っていたが、曽祖父(ひーじい)さんに、自由に想像したものを形にして生み出すことが出来るという召喚の仕組みを聞いて躍り上がって喜んだものだ。


 日本に遺して(・・・)きてしまったあの子達に、また、会えるのかと。

 何を隠そう、私は、前世では常に10匹以上の猫や犬と生活をともにしていたのだ。


 ――もちろん、召喚獣に心はない。


 でも、極めれば自然の獣のように振る舞うことができるようになると、曾祖父(ひーじい)さんは言っていた。


 あの子達に会いたい。


 もう、曾祖父(ひーじい)さんにどん引かれるほど必死に修行をし、リアルに血反吐を吐いて、私は課された修行の全行程をこなした。

 全ては、夢のリア獣ハーレムを創るために!


 そうして、右葉曲折を経て出来たのが、この【獣カフェ すずめ亭】だ。


 そう。猫カフェならぬ、獣カフェである。

 召喚獣を愛でながらお茶を楽しむ。それだけの店だ。


 もちろん、そんな風習なんて一切なかった帝都でソレをするにはかなり大変だったが、開店からしばらくすると店は予約でいっぱいになり、他国のお偉いさんや他種族までもがこの店に予約を入れるようになった。


 1日5組限定の完全予約制にしたのは、【すずめ亭】を、私が一人で経営しているから。

 ちょっとした事情でバイトを雇うわけにもいかなかったし、接客はすべて召喚獣に任せているので私の仕事は飲み物の補充とレジがメイン。

 基本的に客は召喚獣を愛でるのに忙しいので、実際には私の仕事はそんなに多くないのも一人でやっていける理由だ。


 まあ、中には、なぜか私に世間話をしてきたり、仕事の愚痴を言ったり、よくわからない恋愛事情を延々と垂れ流したり、悩み相談をしてきたりする客もいる。

 他にも、極秘な情報をやり取りする場に使っている人たちもたまにいる。

 けど、子犬に顔をべろべろと舐められて嬉しそうに鼻の下を伸ばしながら「暗殺は阻止された。」だの、猫のふわふわの下腹部を撫でていたら思いっきり手を爪の伸びた四肢で拘束されて噛みつかれ、「王からの密約の書簡はここに痛ッ!!」だのやっているのを見ていると、まあ、密会は名目だけなのかもな、とも思う。

 あ、もちろん、猫が割と本気で(・・・・・)引っ掻いたり噛んだりするのはきちんと客側にも言ってあるし、大抵の客は「ご褒美です!」と喜ぶので、クレームはまずない。回復魔法ですぐに傷は癒えるしね。私は使えないけど。


 この店はカフェなので、一応飲み物も取り扱っている。

 タイガル界ではオーソドックスなお茶的なものから、帝国名産のハーブティー各種、帝国ではあまり手に入らない南国の果実水、あとはチャイみたいな香辛料のミルクティーみたいなのとか。お酒はないものの、うちのメニューはなかなかに幅広い。

 ちなみに食べ物はない。私が作れないからね!

 得意料理は、お湯をわかすことです☆ミ


 それはさておき、本当は、女子力がにじみ出そうなお洒落にミルクでデコってあるカフェラテとか、甘党の私の大好物であるマシュマロとホイップのせココアとかも出したいのだが、そもそもコーヒー豆やらなんやらがないようなので諦めた。チョコレートももちろんない。ぐぬん。

 まあ、同じような木の実?……種?があっても、どうせ作り方が分からないのでどっちにしろ出来ない。


 そんなこんなで、今日も私の店には私の召喚する前世の世界に生きていた動物達を目当てに、客が来店するのである。




 今日の一組目は、この魔族だ。自称、魔王らしい。右側頭部から、見たこともないごっつい角が生えている。左側頭部からは少し小さな角が生えている。アシンメトリーである。

 いつもぼっちでくるので、私はぼっち魔王と呼んでいる。


 魔王、というか、そもそも魔族はこの国では討伐対象だったりするのに、このぼっち魔王はどうやってかうまい具合に帝都に侵入しては時間いっぱい猫を可愛がり、次の予約を入れて帰っていく。

 【すずめ亭】がある帝都にはこの世界で唯一魔王を倒すことができるとかいう伝説の勇者もいるし、水路を使って描かれた巨大な魔法陣に覆われて魔族や魔獣はは入れなくなっているはずなのに、なんとも不思議である。


 ぼっち魔王は、主にメインクーンやノルウェージャンフォレストキャットのような大きい長毛種の猫が好きだ。

 魔王いわく「しなやか」で「強さの中にも繊細さ」があり「優雅」で「美しい」らしい。私もそう思う。すごくそう思う。同意しかない。しかもぼっちなので、私の同志だ。

 そんなぼっち魔王に、ライオンとかトラとかヒョウも見せてみたい気もするが、“小動物しか召喚できない未熟者”でいるためには、そういう戦えそうな動物を公に召喚するわけにもいかず、諦めるしかない。

 まあ、人間社会と対立している魔王が相手なら、見せても別に問題ない気もするけど。


 そんな孤独(笑)な魔王の為に、今日、私は新しい召喚獣を用意していた。

 それが、新ジャンル【小鳥】である。

 地球でもこっちでもずっと犬や猫ばかりを愛でいたのだが、昨日、窓辺に止まっていた小鳥を見てふと思ったのだ。


 小鳥ももふもふだなあ、と。


 そして、前世にはたしか白くてかわいい小鳥がいたはずだ!と調べて見つけたのが、このシマエナガだった。

 “可愛い小鳥”とCoocle(クークル)くく(検索す)れば、必ず出てくる定番中の定番、それが、シマエナガ。シマエナガにだったら目玉を(ついばま)まれても「ご褒美です!」と叫べる人は多いはずだ。可愛いは正義だし???


「店主よ、お前はなぜいつも、こんな……こんなものを創造できるのだ?通常、召喚獣に意思はないはずなのに、なぜこうも、これらは自然体なのだ……」


 ぼっち魔王が小鳥を見つめながら深いため息を吐く。

 渾身(こんしん)の出来である【小鳥:シマエナガ】は今、彼の手のひらの上で落ち着いたのか、座り込みじっと目を閉じていた。


 私は頭の中のCoocle(クークル)で検索して、写真や動画で動きを研究し、それを忠実に模しているだけなので、実はそんな大したことはしていない。

 だが、そんなことはつゆほども知らない客はいつもこう言って首を傾げるのだ。


 「愛、ですかね……。」


 などと適当な事を言いつつ、私は、「猫もいいが、これもなかなか。」とつぶやいている“ギャップ萌え”という言葉をそのまま形にしたようなこのぼっち魔王を眺めて、今日も癒やされるのだった。


 次は何を召喚しようかな~?

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