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テモンとナッスガ  作者: 宇宙猫
異世界の人々
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第2話 荒れる総種会



 数百年前……種族間大戦争が終結した折に公正なる話し合いの場を望んだ各種族の有志達の尽力により創設された公式では初の国際機関“総種族連盟”


 “総種族連盟”とは言うが創設の翌年に“人族”が脱退し“人族”と入れ変わるように創設時に除外されていた“異世界人族”が加入


 更にここ十年で“人族”以来初の脱退を行ったのが六傑を保有する六種族であり“総種族連盟”創設時における『あらゆる種族と公平な話し合いの場を設ける』という目的が近年……というよりかは“人族”脱退時から既に形骸化していたのだろう



 “総種族連盟”の活動は年に二回行われる本会議が主であり、本会議にて種族間で新たに発生した問題や未だ解決に至っていない諸問題について話し合いによる解決を行っているのが常なのだが、今回は龍神竜連合軍が結成された事で緊急会議が開催されていた


 時は六傑が勇者国に宣戦布告した日より数日遡る




 ◇



 ◇総種族連盟『導大堂』:大会議場◇



「あなた方は何を考えているのか!?」


「知れた事です。“人族”の絶滅を考えているのです。魔王殿もご存知の筈ですが……」


「そういう問題ではない! 何故“人族”を絶滅させる為だけに龍神竜連合軍などという過剰戦力を結集させたのかと問うているのだ!」


「まあ確かに過剰戦力と言えば過剰戦力ではありますが……それが何か問題ですかね?」


「問題大有りだ!」


「ふむ……我々は特にこれといった問題は感じられないのですが……」


「問題は“人族”ではない! そのような過剰戦力を結集すれば六傑が動くと言っているんだ!」


「六傑? ふふっ! 皆様方お聞きになられたでしょうか! どうやら魔王殿は六傑などという名ばかりの俗物を大層警戒なさっているご様子ですぞぉ!」



 ドッ ギャハハハハハハハハハ!!!!!!!!



 “神族”の報道官セムトトが魔王リンデールの六傑発言を馬鹿にした事で大会議場内は一部の者達を除いて爆笑の渦に包まれる


 一般的には名ばかりの俗物であると認識されている六傑に対し警戒感を露わにする魔王リンデールの姿は滑稽であったのだ


 だが一部の者達は口には出さないが魔王リンデールと考えは同じである……故に今回の爆笑は一部の者達にとって魔王の発言の重要性を理解出来ない種族が大半を占める“総種族連盟”に見切りをつける良い判断材料となり得たのである



「兎に角! 一刻も早く龍神竜連合軍を解散させるべきだ」


「それは無理な話ですな。今回の事で“人族”は当然として、かの六種族も成敗しなければならない可能性も出て来た訳ですしね」


「何だと!!?」


「魔王殿は六傑に対し非常に警戒しておられる」


「何が言いたい……」


「つまり、我々龍神竜連合軍と致しましても魔王殿が警戒心を露わにする程にかの六種族が脅威であると認識出来れば……いえ、確認出来次第“人族”と“六種族”をまとめて『滅ぼす』という事です」


「馬鹿な!」


「馬鹿な事を言っておられるのは魔王殿の方ではないでしょうか? 総種族連盟とは協調平和維持機関である事は誰しもが知り得る事実。その平和維持機関から脱退し、あまつさえ今回のテルダ村のような惨劇を“人族”が引き起した原因は? 原因は創設の翌年に脱退した不届き種族である“人族”を今まで放置していた事ではないでしょうか?」


「それは……」


「という事は……今は良くても脱退している以上、かの六種族も今回のような事件を引き起こす可能性があるという事になります」


「だからといって無闇やたらに刺激していい訳がないだろうが!」


「だから何度も言っていますが今回の連合は万全を期すための連合である為に刺激などという見方は完全に見当違いと」


「御託はもう沢山だ! 兎に角、私は許可しないからな!」


「それは困りました。議長どうにかなりませんかねえ?」


「認められない。魔王殿の発言にもある通り、連合軍の戦力が過剰である事はかの六種族を刺激する事だけではなく総種族連盟の同士諸君に与える影響が大き過ぎる。以上の事から龍神竜連合軍が連盟公認を得たければ全加盟種族の許可が必要であるという議長審議会での決定は覆せない。喩え残す種族が魔族だけであっても例外は有り得ない」


「ふむ、分かりました。今日の所はとりあえず引き下がりましょう。ですが、次こそは許可していただきますよ魔王殿」


「何度言っても無駄だ!」


「それでは閉会! 次の会議は一週間後とする。それでは」



 緊急召集から一回目の会議が終わり、議長と報道官セムトトが会議場から立ち去ると辺りは一気に騒がしくなった


 話題は当然、龍神竜連合軍についてである




「下手に怒りを買いたくないから許可したけど連中は一体何を考えているんだ」

「知るかよ」

「いくら何でも可笑しな話しだよな」

「連盟に喧嘩売ってんでしょ」

「喧嘩売って連中に何か得でもあんのか?」

「無い」

「大義名分を得た上で暴れたいだけなんじゃない?」

「……というか明らかに三種族とも軍事力拡大に走るよな?」

「いずれはそうなるだろうね」

「は? 何で?」

「馬鹿! 今回の連合で他の二種族の軍事力が分かっちまうだろうが!」

「あ……それって」

「このままじゃ種族間大戦争が再来するかもしれんって事だ」

「ええ……」

「まあ兎に角、我々に残された道は備えるという事だな」

「連盟の崩壊も間近って事か」

「ああ…最悪だなあ……」




 それぞれが思い思いを口にする


 大多数の種族にとっての懸念材料は三馬鹿種族が組んだという一点のみ


 下手に逆らい恨みを買えば後々どうなるか分からない為に仕方なく許可を出したが本当は許可を出したくなかったのだ


 六種族などどうでもいい。むしろ根の部分が粗暴である三種族の方が予測がつかない分危険であるというのが大多数の見解である


 さて、先程一人だけ連合軍の結成に異を唱えた魔王リンデールは……





「麗しのリンデール姫。私とお茶でもいかがかな?」


「あ? 何だお前は?」




 廊下でナンパされていた





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