第0話 衝撃の結末
ドッゴォォォン!
ピンポピンポピンポピンポーン!
ドッゴォォォン!
「開けろコラァ!」
「アケロアケロアケロアケロアケロ」←お姉さん
ドッゴォォォン!
ピンポピンポピンポーン!
「お前たちは包囲されている! 逃げ場はないぞ!」←お姉さん
ドッゴォォォン!
やあ、おしるこだ。あれから十分くらい経った。お姉さんもノリノリで何だか俺も段々楽しくなってきたぜ!
ブッ…ブツッ…
「「ごっごめんなさい~」」
(おや?)
「インターフォンとは随分ふざけた態度ね!」
「「いっ今から玄関開けて謝りますから勘弁してくださいぃ~」」
「言葉にする前に行動じゃねえのか? あ?」
「「はっはい~」」
ちなみにこの間俺は何もしゃべっていない。
「「ごめんなさい」」
「昼間は学校で居ないんで、次からは昼間にやってください」
「「はい」」
「昼間からサカってるとかゴミね!」
「「うう」」
お姉さんは辛辣である。
「じゃあ念書を書いてください」
「「へっ?」」
「次からは昼間にセックスして夜はセックスしません。っていう馬鹿な念書を書けっていってんのよ! そんな事も理解できないの? この発情猿共が!!」
「「はっはい」」
二人には念書を書いてもらった。これで一安心である。
「「かっ書きました~」」
「よっし。もう失せろ!」←お姉さん
「「はっはい~」」
ガチャリ
「ようやく終わったわね!」
「お姉さんもお疲れさまでした」
「いいのよ! あんたのお陰で私は人生の壁を一つ乗り越えたわ!」
「それは何よりです」
「私は旅に出るわ」
「旅ですか?」
「そう! 私は今まで自分の短気を短所と思ってこんな閑静な所に引っ越してきたのよ! 閑静すぎて怒る回数が減れば短気も矯正出来るんじゃないかって思ってね!」
「はい」
「でも今回のことで分かったのよ! 私の短気は私にとっては長所なんだって! 他人を怒鳴りつけることで私の心は晴天の青空のように晴れやかになっていくのよ!」
さすがお姉さん。すっげえ笑顔だが言ってる事は最悪である。
「あんたの常識知らずの騒音返しで腸煮えくり返っていたのだけれども、それも今となっては感謝の念に耐えないわね! さあー所かまわず理不尽ないちゃもんつけて怒鳴り散らすわよー!」
やっぱり言ってる事は最悪である。
「お姉さん俺は…」
「やめなさい!」
「………」
「わかっているんでしょう?」
「はい……」
「私にとってあんたは少年。あんたにとっての私はお姉さん。これでいいじゃない。それ以上何を望むの?」
「お姉さんは凄いですね」
「そりゃあお姉さんだからね。少年!」
一期一会という言葉がある。俺とお姉さんは二度と会うことは無いだろう。しかし今生の別れとなるであろう俺とお姉さんの表情は実に晴れやかなるものであった。
ガチャッ!×2
「さようなら! お姉さん!」
「さらばだ!少年!」
バタン!×2
お姉さんは知っていたのだ。
この話がプロットの段階では存在せず、急遽作られた話でありお姉さん自身使い捨てのモブキャラだという事実を。
当然だが隣の二人もモブキャラだ。
お姉さんに名前はないし当然二人にもない。
俺はお姉さんに名を名乗りお姉さんの名前を聞こうとした。そうすればお姉さんは名を名乗らなくては流れとして不自然だからだ。
しかし、お姉さんはそれを良しとしなかった。
身の程をわきまえたお姉さんの英断である。
自身の役目を全うしたお姉さんを俺は尊敬する。
お姉さんありがとう。本当にありがとう!