第1話 学生食堂激震セリ
その日の学生食堂は異様だった………
他クラス間の優等生達にとって藤堂優等生クラスの駒達は『天下無敵の藤堂軍人』と通称されている。
『藤堂軍人』は練度もさることながら決して笑わない。
いや社交辞令としての笑顔はするのだが『藤堂軍人』は最下位からの叩き上げなので規律が厳しく他に心を許さないと言ったほうが的確だろう。
だがその日だけは違った……社交辞令ではない満面の笑みではしゃぐ『藤堂軍人』達………
そしてしきりに聞こえてくる『おしるこ』というワード。
はたしてこれを異様と言わずして何を異様と呼ぶのか?
しかして優等生達を悩ませる異様の答えはやって来るのであった。
「「「おしるこ~! こっちこっち!」」」
「おっ! 行こうぜ藤堂くん」
「うん」
あいつが『お・し・る・こ』………
藤堂と並んで歩いているが今までに見たことがない奴だな……転校生か?
高身長で爽やかフェイス……藤堂とは真逆と言ったところか。
しかし何故に『藤堂軍人』達は転校生に笑い掛けているんだ?
そいつは新入りなはず……規律が厳しい『藤堂軍人』ならば新入りは立場が低いはずだがあいつは一体?
いくら『優等生』であろうとも優等生達には理解できなかった。
それもそのはず、一学期開始3週目に生徒会長となった藤堂。
優等生達はこれに対抗するため『藤堂包囲網』を敷いたのだが、その時に立ちふさがったのが『藤堂軍人』達であったからだ。
藤堂優等生クラスの駒共は最下位、つまり全員高校デビューなわけだ。
藤堂は次期生徒会長席争奪戦争と同時進行で駒の育成を行い、わずか2週間で駒共に『藤堂軍人』としての土台を築き上げた事になる。
『藤堂軍人』の土台は2週間とは思えない程に仕上がっており、その後も成長を続ける『藤堂軍人』達により藤堂包囲網戦は優等生達の完全敗北に終わった。
隠しランクの真実を秘密裏に入手している一部の優等生達の間では、激戦を繰り広げた一学期終了時の『藤堂軍人』達は藤堂の指導によりカースト『最下位』から最低でも『上位』。最高だと『最上級』に昇級したのでは? と噂される程であった。
ちなみに『上位』は隠しランク50位以内で『最上級』は隠しランクの五本指の事である。
そして夏休み期間に実行されたであろう『強化合宿』により『藤堂軍人』達の実力は未知数となり一学期を超えた結束力を見せ付けて来るであろう事間違いなし。と優等生達の誰しもが予測していたのである。
だのに『藤堂軍人』共は満面の笑顔…………さっぱり分からん!!
ピーンポーン
ん?
「緊急放送緊急放送」
なんだ?
「本日、最上位優等生藤堂生徒会長と善哉おしるこのカーストチェンジ開催決定。繰り返す。最上位優等生藤堂生徒会長と善哉おしるこのカーストチェンジ開催決定。史上初のカーストチェンジにより21時より全校舎にてライブ配信を実施する! 全生徒全教師はこの歴史的瞬間を絶対に見逃すな!! 緊急放送終わり!」
『ウオオオオ!!』
気づいた時には優等生達は全員本能からくる雄叫びを上げていた。
ただでさえ机上の空論とされるカーストチェンジは藤堂包囲網時に最初に議題に上がったものの「『藤堂軍人』達の存在により内乱煽動不可」と断じられていたからだ。
それがたった今覆ったのだから雄叫びも出ようものである。
こうして自然と優等生達の視線は善哉おしるこという男に向けられるのだった。