第1話 根暗外道藤堂
(この藤堂がしてやられるとはな……善哉おしるこ!!)
藤堂はシャワールームで身体を洗い終わると制服を手洗いしていた。洗濯機に投入する前に少しでも糞を落とす為だ。
(そして善哉おしるこ! 貴様この藤堂の素を見抜いているな! 侮れん奴め!!)
そう『公式カーストはほぼ本人の素』が『ほぼ』となっているのは優等生だけが素の部分に当てはまらないからだ。
素でクラス(国)の頂点である優等生になれる訳がないし、ましてや三年間にも渡る争いを戦い続ける事など不可能なのである。
藤堂が一人称を僕にし始めたのはこの学校の受験を決めてからであった。
(よし! 大分落ちたし洗濯機に入れても大丈夫そうだ。早く教室に戻って糞の後処理をしなくては!)
藤堂は焦っていた。糞が他クラスの者にバレるのは一大事だし、それを理由にクラスメイトが処理していてもそれはそれでマズいのだ。
なにせ今は昼休み、他人の糞の後処理など昼食時に悪影響を与えてしまう。
下手しなくてもリバースの危険性があるため何としても自分で処理する必要があるのだ。
体操着を着た藤堂は他クラスの者に不審がられないように堂々と気づきにくい程度の早歩きで教室に戻った。
ガラガラガラッ! ガラガラガラッピシャ!
(どうやら怪しまれなかったようだな)
一安心する藤堂であったが予想外の人物から恐るべき言葉をかけられる事となる。
「やあ、藤堂くん」
(何ぃ! おしるこだけだとぉ!)
「先程はすまなかったね。お詫びに後処理はして置いたし学食は俺の奢りだ。」
(なん………だ…と……? 今な…)
「皆には藤堂くんではなく藤堂くんを下手に刺激してしまった俺の責任として謝罪して置いたから」
(こいつ……やりやがった……)
「藤堂くんは『何も気にする必要はない』よ。さあ皆待っている食堂に行こうか」
(………はっ!!)
「……あっ…ああ! いや気にしないでくれ。僕も善哉君の名前を笑っしまって大変申し訳なかった。だのに後処理のみならず汚名を被ってまで僕の名誉を守ってくれて本当に感謝するよ。じゃあ学食に行こうか」
この藤堂をここまで激怒させるとはな……だが……生徒会長には偶然なれるものではない。分かるだろう? おしるこ!!!
どれほどかは知らんが貴様が駒共の好感度を上昇させたのは理解した。
成る程そうすれば物理的にと精神的にの両方を用いて、この藤堂を脱糞させたのも納得がいこうというものだ。
貴様はこの藤堂を落として上げた……そして上げる時にのみ相乗り。
結果、貴様は無名の転校生で更には遅刻という失態を上書きした形で評価が上昇。
そしてこの藤堂はただ脱糞しただけという訳か………
ハハハハ!『何も気にする必要はない』だと?ふざけるなよ!!
ただ脱糞して評価が少し低下しただけで致命的ではないのだから気にするなとでもいいたいのか!
貴様はカーストチェンジを有利にするためにこの藤堂に脱糞させたのだろうが!
だが今更騒いでも仕方がない事……今最優先に行うべき事はおしるこに対する駒共の好感度がどの程度かを見極めることだな……
「藤堂くん食堂についたみたいだね」
「そうだね善哉君」
「「「おしるこ~! こっちこっち!」」」
「おっ! 行こうぜ藤堂くん!」
「うん」
(馬鹿な!? ここまで親密になっているとは………完全に予測を越えていやがる!!)
ピーンポーン
「緊急放送緊急放送」
(緊急放送?)
「本日、最上位優等生藤堂生徒会長と善哉おしるこのカーストチェンジ開催決定。繰り返す。最上位優等生藤堂生徒会長と善哉おしるこのカーストチェンジ開催決定。史上初のカーストチェンジにより21時より全校舎にてライブ配信を実施する! 全生徒全教師はこの歴史的瞬間を絶対に見逃すな!! 緊急放送終わり!」
『ウオオオオ!!』
学食中が騒ぎ立てる中、藤堂はブチ切れていた。
(女校長!! 貴様もこの藤堂をコケにする気かぁ!!)