第1話 転校生は爽やか外道
「やあ…藤堂くん…でいいかな?」
藤堂は答えない。
否! 答えることが出来ないのだ。
奴の肛門は決壊寸前! 優等生故にここまで堪えることが出来ていたのだろうが授業時間はまだ残り10分も存在する。
「君、今は授業中なんだがね?」
「先生! 『気にせずに』授業を続いて下さい」
「わかったよ」
そう、俺はこの学校の教育システムをかなり理解している。
まあまあな男だった親父とハイスペック母さんとの間に生まれた俺はまあまあハイスペックな男として育ったのだ。
この学校における教師陣は管理者の面に比重が置かれており、生徒の授業態度を改めるなどという非生産的な事は一切しない。
教師陣の授業での目的は、教室内がどのような状況であろうと《生徒が単位を履修した》という既成事実を造り上げる事。
そのためにただ坦々と授業を遂行するのだ。
つまり教室内に生徒がいようがいまいが履修した事になるのである。
先程も「授業中なんだが」と「ね」の間には「君達を無視していい?」という一応聞いておくか…といった先生の温情が隠されていたのだ。
それに対して俺は、俺達という存在は初めからいなかったものとして『気にせずに』と返したわけだ。
この学校では全クラスを競わせるシステムにより原則として教師は担任教師を除いて生徒に接触しないよう定められている。
駒の態度は優等生次第。一部の駒の授業態度が悪くて駒全体の能力が低いままになってしまっても優等生次第という事だ。
教師陣に責任はなく、優等生に責任がある。これが絶対のルール!
そして藤堂。一年生にして生徒会長ということはこのクラスの優等生であることは確定。
お前が只の駒だったのならば俺の知名度向上に利用するだけで終わっていたが優等生ならば話は別だ。
お前の信頼度を同時に低下させる為に今すぐ決壊させてやろう!
「どうしたんだい? 藤堂くん?」
バシッ! 藤堂の右肩を掴む俺。
フゥーフゥー
「大丈夫かい? 藤堂くん?」
バシッ! 藤堂の左肩を掴む俺。
ヒグッ! フグゥッ!
「ああっ! そういえばまだ名を名乗ってなかったね! 俺の名前は善哉おしるこ。よろしくな!」
「プッ! アハハハハハハ! おしるこて! あっ………」
ブリブリブリブリブリブリッ! ビチャビチャビチャッ! プーブリュブリュブッブッブップーウプゥッ!
「あはは……」
「おいおい……マジかよ」
(悪いな藤堂!)
「「「キャアアアア!!」」」
「おいっちょっ! くさぁ!」
「おい! くっせえぞ!!」
「オエエェ!」
「頭おかしいんじゃあないの!?」
「まじありえん」
「つか換気換気」
(終わってしまったようだな藤堂!)