第1話 不屈の藤堂
~4時間目~
ついに4時間目が始まった……今日はここが僕の天王山だ!
気合いだ! 気合いだ! 気合いだ!
「~であるからして」
根性ぉぉっ! 根性ぉぉぉっ!!
「つまりですね…」
気合いだぁぁぁ!!
「このことから言えるのですが……」
根性ぉ! 根性!! 根性ぅぅっ!!!
「え~××さん、これ解いてみて下さい」
「はい」
ハアッ! フウッ! ハアッ! フウッ! フウーー!!
やあ…藤堂だ……腹痛は中々の強敵だったよ…
だがしかし! ついに昼休み突入まで15分を切った……残り15分……このままの調子でいければ確実にトイレ迄保たせることができるだろう。
後はトイレに行くまでの体運びを考えなくては……不必要な振動は最悪の結末に一直線だからね。さて……どうす
ガラガラガラッ! ピッシャーン!!
(な!? ウッ!!)
「やあ!!」
「なっなんだね君は!?………いや本当に……誰だね?」
(何だ…一体何が起こった!?)
原因を究明すべく、僕は尋常ではない腹痛に紙一重で抵抗しつつ脂汗滲む顔を音の発生源に向ける。
誰だあいつは? 見たことがないし、あんなデカイ奴を忘れる訳がない……
そうか! 転校生か!! 最悪のタイミングできやがったな!!
「あの」
「あのっ!」
(ウウッーー!!)
「あ! の!!」
うるさいよ!? こっちは腹が痛いんだよ!! そんな遅刻野郎に声掛けなくていいよ!! ちっきしょー転校生め!!
最悪のタイミングで入ってきやがって恨むぞ糞が! 何ニヤニヤしてやがる!!
「あの!! おーい!! 聞こえてますかー!!」
うるせぇぇぇ!! 根性ぉぉ!! 気合いだぁぁ!!
「聞こえてるぜ、ねーちゃん」
「ねっ! ねーちゃん!?」
ウオォォォォ!! 気合いだぁぁぁ!!
「ねーちゃん、一つ聞きたいことがあるんだがいいかい?」
「え?……ええっ!……なっ何かしら…」
根性根性!!
「あいつの名は何というんだ?」
「あいつ?」
アイツって誰だよ!! 気合い気合い!
「あいつだ……」
根性! って僕かよ!!
「ああ……彼は、生徒会長の藤堂くんよ……一年生で生徒会長になったなんてすごいわよねぇ」
気合い! いや言うなよ!?
「ほう……ありがとな、ねーちゃん」
「どういたしまして、それに私はねーちゃんじゃなくて『まこと』っていう名前があるのよ!」
「わかったよ、ねーちゃん」
「話聞いてる!?」
根性! ってこっちに来るなぁぁ!
なんだその爽やかな笑顔は一体何なんだ! 僕が何をしたっていうんだ………はっ!!
まさか……こいつ……知っているのか?
実は公式カーストには隠しランクというものが存在する。
これは学年トップの優等生が生徒会長になった時にのみ学校側から知らされるクラス配分の真実である。
例えばギャル。ギャルにも最上位と最下位が存在し、当然ではあるが駒としての優秀さは最上位ギャルにある。
高校デビューギャルより中学デビューギャルのほうがギャルとしてのキャリアは上であるがカリスマギャルはキャリアギャルの概念に捕らわれない、などの評価基準を元にギャルな講師陣などが精査していき学校側がランク付けをする。
これが隠しランクである。 当然、優等生にもそれは適用されておりクラス同士を均等にするということは隠しランクの平均化を指し示す。
つまり最上位優等生の僕の在籍するクラスの公式カーストは僕以外全員最下位ランク。
それでもまだ他クラスより優位であると評されている。
駒が最下位でも重要なのは駒の使い方ではなく生かし方。
学校側は駒が優等生化すれば儲けものだし、そうでなくても駒としての成長だけでも充分なのである。
何が言いたいのかというと、このクラスに転校生が転入してくるのならば、そいつは何かしらの役割に分類される公式カースト最下位ランクの駒だということだ。
しかし……こいつ……この転校生が駒? いいや違う。
こいつはこちら側(優等生側)の人間だ!
つまりこいつは、この隠しランクの絡繰りを転入手続き時の資料で暴いたということになる。
絡繰りを理解したこいつは公式カースト隠しランク最下位の転校生として、このクラスに入り込んだ。
おそらく目的は学年最上位優等生であるこの僕を駒扱いすることだろう!
そんな馬鹿な話があってたまるか!!
先生……先生の言った通りにこいつはかなりの大物らしいな………
だが僕は駒にはならんよ! こんな遅刻野郎なんかの駒にはな!
しかし、こいつは知っているのだろう……今の僕の腹具合をなぁ!!
糞ったれがぁ!!! 根性!!