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恋にっき  作者: きひめ
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おねがい

二ヶ月ぶりに会った君は大人になってた。

君がそうやって一歩一歩踏み出しているのがすごくうらやましかった。

この二ヶ月の間、たくさんの言葉のやりとりを文字や声で交わしていたのに、あたしは君に会ったその瞬間に、初めて会ったその日のように緊張してしまったんだ。


君はいつも素直に言いたいことを言って良いのだと言う。

あたしが何を言っても嫌いになったりしないのだと言う。


でも、とてもじゃないけど言えなかった。

言えないよ、そんなこと。


手をつないで歩くのが精一杯だよ。

お化粧が崩れてる気がして見ないで欲しいよ。

もっと可愛い格好してきたかったって後悔しているんだよ。

何を話していいのか、わからないよ。

顔が見れないの。


だって、好きだから。

君の事が好きで好きで堪らないから。



それなのに。

二人きりになったホテルの部屋で、君が眠いのをわかっていながら、ウソツキと何度も何度も言ってごめんなさい。

君が疲れているのに、そんな風に言って泣いてしまってごめんなさい。

寝ちゃだめって、抱きしめてくれてありがとう。

ごめんなって何度も謝ってくれて、うれしかった。


でも、あたし、気づいたんだ、あの時。


どんなに疲れていてもあたしに声を聞かせてくれる君も、何度だって愛してると言ってくれる君も、いつも優しい目をしてあたしを見つめる君も、忙しいのに手紙を書いてくれる君も。


あたしは信じられていないんだって、気づいたんだ。


それは、あたしの中で一番、一番、気づいてはいけない事で、あたしはショックだったの。

怖くて怖くて堪らなかったの。


お願い、愛して。

あたしだけ、愛して。

あたしだけ、好きでいて。

あたしの事、見ていて。

いつも側にいて。

ずっと側にいて。


たくさんの告げた言葉を君は守ってくれているのに。

遠く離れた土地から、あんなにも努力してくれているのに。


あたしは、君の事、信じきれていなかったんだ。



君はあたしの今までの人生を知ってくれて、理解してくれて、それでも良いんだって言ってくれる。

でも、君は自分にうそをつくから。

簡単に自分にうそをついてしまうから。




君もあたしも体を重ねることに、よくない思い出があるのに。

そのジレンマを解消出来ずに、手探りなだけなのに。




二ヶ月ぶりに会った君の前でたくさん泣かせてくれてありがとう。

たくさん時間をかけてあたしが誰にも言えない本音を言わせてくれてありがとう。

それでも好きって、愛してるって、ほんとだよって、何度も何度も。

ウソツキって言う度に言ってくれて、本当に、ありがとう。



あたしも君の事が大好きだよ。

今までにないくらい本当に愛してるよ。




だからね。

君を見送った後のあたしの話をそっとここに記そうと思う。


君が一番最初に歌ってくれたあの歌。

これは失恋じゃないんだねってあたしが言った時に、気づいた?って言ってくれたあの歌。

あの歌がどうしても聴きたくて、耳につけたイヤホンから流れてきた瞬間に涙があふれた。

電車を降りて歩き出して、もう止められなくて、ぼろぼろ泣いた。


つい三十分前までこの右手は君の左手と繋がっていたのに、もう、寂しくて。

隣を見れば君の横顔と長いまつげがそこにあったのに、もう、無くて。


次の約束したけど。

明日もきっと話すけど。


君が隣に居ないのが、今のあたしには、つらくて堪らない。



お願い、側に居て。

お願い、好きで居て。

お願い、愛していて。



お願い。



必ず、あたしを迎えにきて。

あたしを君の側へ攫っていって。

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