水の底
あたしは、いま、水の底にいる。
その水は冷たくて、でも澄んでいて、でも、暗くて。
上を見上げるとキラキラした光が見える。
その光に手を伸ばしても、届かない。
上へ行こうともがく力もなくって、パラパラと、毎日、小さな光が落ちてくるのを待つばかり。
小さな光は1日にたくさん落ちてこない。
それでも、あたしは「もう少しだけ気にかけて。時間作って」て、泡をぷくぷく上げてみる。
泡は『君』に届くことなく、水面で消えていく。
あたしが居る水の底は、あたしが自分で生み出した『不安』や『不満』や『寂しさ』が、固い形をして敷き詰められていて、居心地が悪い。
ねぇ、もしかしたら、
『君』じゃない誰かが、あたしを水の底から引っ張り出すかもしれないって、思ったりしないの?
その違う誰かの手を取っても、『君』は後悔しないの?
『君』はあの時、【あの人】に言われた言葉を忘れた?
ねぇ、どうしてあたしは水の底に居るの?
あたしが病気だから?
外に出れないから?
もう、どうでも良いから?
どうして、
クリスマスの日を、
空けておいて、
くれないの?
会えないから、たまには、ゆっくり話そうよ、とか。
普段、会話してないからしようよ、とか。
『君』は一言もなく、友達が泊まりにくるんだって、光のかけらをここまで落としてきたね。
それを見た時、あたしは、なんだかどこかがズキズキした。
今朝になってそれがどこか、ようやく分かった。
それはあたしの、こころ、だ。
ねぇ、気付いてる?
『君』は【あの人】と同じことをしているよ。
ねぇ、気付いてる?
【あの人】は、同じ風に光のかけらをくれなかったけど、側には居たよ。
ねぇ、『君』は、どうしたいの?
いつまで待ったら水の底から、引っ張り出してくれるの?
あたしが命を絶とうとした、あの時みたいに。
ねぇ、今度は『君』があたしに、命を絶ちたいと思わせるの?
【あの人】の事を許せないとか最低だと言っていた、『君』はどこに行ってしまったの?
あたしが病気で、外に出れないからって、逢えないか、なんとか逢えないか、考えてもくれないの?
話し合う時間も、挑戦もしないの?
ねぇ、あたしの居る場所、すごく冷たいよ。
もう、本当は『君』にとって、あたしは、要らないの?
この、あたしの周りにある水は、なかなか泣くことが出来ない、あたしの【涙】だよ。
【あの人】と同じことして、楽しい?
そんな『君』へ、これがあたしからのクリスマスプレゼント、だよ。
メリークリスマス。