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私の居場所 3

数秒後、香織は何事もなく立ち上がって中倉小町を凝視した。





「虐めは無くならない。これからもずっとずぅ~と、虐めは起こり続ける・・だけど一番怖いことは虐められる事じゃない。独りぼっちになることなんだ!それを知ったお前の望みは、いじめっ子が苦しむ事でもいなくなることでも無く・・レイコさんに化けて、自分の居場所を手に入れたかっただけだ。」


「どうしたんだ香織?!」


明彦は中倉に激しい口調で話す香織に目を疑った。


中倉は目を伏し目がちにして唇をかんでいる。


「頭痛はおさまったの?香織ちゃん。」と、悠子。


茜も豹変ともいえる香織の口調に目を見張っている。


その時、今まで月夜だったのが嘘のように雨が教室の窓ガラスをたたき始めた。


香織は刺すような視線を、窓ガラスをたたく雨に向けて話し始めるのであった。


「・・あの日も朝から雨が降っていた。私の精神は限界に来ていて、放課後虐めの主犯格である南原京子と屋上にいた。」








”もう虐めはやめて限界なのよ。”


”100万持ってきな。それで止やめてやるよ・・”


”そんなお金・・。”


”だったら永久に虐められていな。もとはと言えばお前が、虐められていた小野泰子を庇かばったんだろ、その小野にも裏切られて・・惨めなもんだな玲子!?"


南原京子は鼻で笑い玲子に背を向け空を仰いだ。


”また雨か。”


朝から降ったり病んだりしていた空から、また、ポツリ・ポツリと雨が落ちてきた。


”待ってまだ話が・・・”


南原京子は背中で手を振りながら、屋上から出て行こうとしている。


雨が強くなってきた。


"道連れにしてやる!”


”やめてよ、危な~~い!!”


二人は雨の中もみ合いながら屋上の奥へと移動していく・・・。


”私はもう死ぬしか、考えられない。貴女も一緒に死んで!”


”いやよ!死にたいのなら一人で飛び降りなさいよ。この偽善者!!”


その言葉に、相原玲子は一瞬ひるんだ。


二人の目と目が合い、南原京子はニヤリと笑い・・・”飛び降りろ!”





相原玲子は雨の屋上から真っ暗な闇へと消えて行った。


南原京子の父親は街の権力者であり、PTAの会長でもあった。








香織は窓ガラスを叩く雨を見たままだ。他の四人は呆然として香織の豹変に驚いている。


そんな仲間たちを一瞥しながら香織(れいこ)は話を続けた。


「私が深い眠りから覚めたのは香織の身体の中だった、香織は私の幽霊となって夜の学校を徘徊していた(それは後で分かった事である)。私は自分が突き落とされて死んだ事を思い出し怒りのエネルギーで”レイコさん”になった。


奇声を上げながら逃げ惑う虐めっ子たち・・・快楽が香織の身体から私に伝わってくる・・・。


しかし突然香織はレイコさんに成るのをやめ、私はまた深い眠りへと誘われていくのであった。





突然私は見知らぬ女生徒の身体の中で目覚めた。


その女生徒もレイコさんに成って、虐めっ子たちを怖がらせている。ただ香織の時と違うのはこの女生徒(なかくら)の身体が私を拒絶している事だった。快楽と違和感の狭間で揺れていた・・・そんな時、興南高生に成っている香織を見つけた。


そして、香織の中へ入ろうとしたがもうレイコさんではない香織には、自我が邪魔をしているのか入れなかった。


だが、女生徒(なかくら)がレイコさんから本人に心が戻った時に、私は奇跡的にも香織の中に入れていた。」





雨は激しく教室の窓を叩きつけている。


四人は黙ったまま香織の話を聞いていた。


「本当に今は香織(れいこ)さんなのか?!」


明彦が恐る恐る聞いた。


香織は頷いた。


「嘘だ!香織悪ふざけは終わりにしょうぜ!?」


ヒステリックに茜が叫んだ時。


閃光がきらめき電気が消えた。


電気が消える前四人は見た・・・香織の顔がレイコさんに変わったのを。


四人は闇の中恐怖で声も出ない。


何かが這っている音がする・・・雨に交じってかすかに聞こえる。


「香織を連れて行かないでくれ!!」


明彦が叫んだ。


「香織!?」


「香織さん・・。」


「香織ちゃん行っちゃダメ。」


他の三人もそれぞれに叫んでいた。





数十秒後電気が点き、あれだけ激しく降っていた雨が止んだ。





「かおり~~~~!」


四人は香織が消えた教室に青ざめた顔で佇んでいるだけだった・・・・・・・・・・・・・・・























・・・・・それからどれだけの年月が過ぎ去っただろうか、





「おい、優美ゆみ虐められたくなかったら金を出しな!」


ここは、興南高校の演劇部の部室である。


冬休みの部活後、一人の部員が三人の先輩に囲まれている。


優美は鞄の中から財布を出すふりをして部室のドアを開け脱兎の如く逃げ出した。


「追え、逃がすなよ。」リーダー格の南原美羽が二人に叫んだ。


”先生助けて・・・。”


優美は暗くなった学校内を必死で逃げていた。








ズルズル・・・ズルズル・・


「どうした、逃がしたのか?!」


南原美羽は異様な雰囲気を感じた・


”フフフ・・・ミウ、お・か・ね・貸して・・・。”


部室のドアが開いて入って来たのは。顔が潰れたざんばら髪のレイコさんであった。


”虐めをやめなければ、呪いコロシテヤル!”


レイコさんはニヤリと笑った。


「ぎゃあ~!化物・・・。」 南原美羽は近づいて来る、レイコさんに奇声を上げながら失神した。




















”タノシイネ、オネエチャン。”


”カオリゴメンネ、アナタヲマキゾエニシテ ”


”カオリハシアワセヨ、ダッテイツモオネエチャント、イッショダモノ・・・。”














                                  完


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