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穴を巡る話

作者: 双海みりん
掲載日:2012/10/22

 穴があります。


 深い深い穴です。


 暗い暗い穴です。


 この穴を掘っているのは≪彼≫です。


 ≪彼≫は朝早くにやってきて、ひたすらに穴を掘ります。


 泥がついても気にせずに穴を掘ります。


 そして月が真上に昇る頃に穴を去っていきます。


 以前どうして穴を掘るのかと聞いてみました。


 すると≪彼≫は、


≪自分に不利なことを言ってしまったからさ≫


 と穴を掘るのを止めずに言いました。


 今日も≪彼≫は穴を掘っています。





 穴があります。


 深い深い穴です。


 暗い暗い穴です。


 この穴に潜っているのは『彼女』です。


 『彼女』は時々やってきて、ひたすらに穴に潜ります。


 泥がついても気にせずに穴に潜ります。


 そして日が地平に沈む頃に外に出ていきます。


 以前どうして穴を潜るのかと聞いてみました。


 すると『彼女』は、


『ちょっと恥ずかしいことを言ってしまったからよ』


 と穴に潜るのを止めずに言いました。


 今日も『彼女』は穴に潜っています。





 穴があります。


 深い深い穴です。


 暗い暗い穴です。


 この穴に叫んでいるのは〔彼〕です。


 〔彼〕はしばしばやってきて、ひたすらに穴に叫びます。


 泥がついても気にせずに穴に叫びます。


 そして日が南に昇る頃に穴から帰っていきます。


 以前どうして穴を叫ぶのかと聞いてみました。


 すると〔彼〕は、


〔誰にも言えない秘密だけど言いたいからさ〕


 と穴に叫ぶのを止めずに言いました。


 今日も〔彼〕は穴に叫んでいます。





 穴があります。


 深い深い穴です。


 暗い暗い穴です。


 この穴で暮らしているのは 僕 です。


 僕 はずっと穴の底で暮らしています。


 泥がつくことなんか気にしません。


 だってそれが当たり前なんですから。


 そんな 僕 が、


 穴を掘る≪彼≫と出会い、


 穴に潜る『彼女』を見守り、


 穴に叫ぶ〔彼〕を見上げています。


 彼らはいつも去り際に言います。


≪穴で暮らして寂しくないか≫


『一緒に穴を抜け出さないか』


〔穴の外を知りたくないか〕


 僕 は首を振って断ります。


 穴の外に興味がないわけじゃありません。


 でも、 僕 は決して穴から飛び出ません。


 穴の底から見える丸い青空はきれいだし、


 太陽も月も他と差別なく 僕 を照らしてくれる。


 それに、別に 僕 は大海を知らなくても生きていける。


 僕 はこの土に囲まれた小さな世界だけでも、十分満足しているのです。


 だから 僕 は、今日も穴の底で暮らしています。














 穴がありました。


 深い深い穴でした。


 暗い暗い穴でした。


 この穴を埋めたのは 私 です。


 私 はたまたまやってきて、たまたま穴を見つけて埋めました。


 泥がつくのを少し気にしながら穴を埋めました。


 穴を埋めた後、何処からか声がしました。


〔『≪どうして穴を埋めるのか≫』〕


 私 は声に答えました。


「今日は丁度暇だったので」
















==穴を巡る話==



 不思議な話が書きたかったのです

 これは童話なのだろうか、ホラーなのだろうか、詩なのだろうか

 まぁなんにしても何か読者の心に残せたら私の勝ちかなと思います



 十月 双海みりん

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