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リアンとの握手の後、再び、ソファーに座り直した。謎の液体も机に置かれたままである。
さぁ…、早く飲め!
とでも言いたいのか、さっきまでなかった異臭を感じるようになった。
……リアンには悪いけど、口を付けるのは止めておこう。
それにしても……。
「…ん? どーしたの? 真一くん」
リアンが首を傾げて尋ねて来た。きっと表情に出てたのだろう。
俺は思った事をリアンに言った。
「さっきから、その……感覚? 温かいとか、ふかふかだとか感じるようになって来たみたいで…」
……あれ? 前からだっけ? と言うか、こっちに来てから?
でも確か、あっちで死神とぶつかった時には痛かったけど、その前に壁とか人とかはすり抜けた訳だし。
んー、聞きたい事がごちゃごちゃしてきた。どうリアンに伝えれば……。
俺がもごもごと言いよどんでいたけど、リアンは理解してくれたみたいだ。
「えっと。真一くんが知りたいのは、あっちでは物や人に触れられなかったのに、こっちでは何で出来るかって事?」
「はい。それと、あっちで死が……あいつとぶつかった時だけ痛かった理由とかも」
俺は死神と言いかけて、言い直した。
だって俺は死神に此処に連れて来られて、リアンに会ったんだ。
だからきっと、リアンもそうな訳で…。
一括りにしない方がいいと思ったんだ。
だけど……。
そういや、名前知らなかったな。
俺は無意識の内に、視線を床に倒れている奴へと向けていた。
◇
リアンの説明を聞き終えた。
「……と、言うことなの。それでね? 真一くんに此処まで来てもらったのは、直接聞きたい事があって……」
「聞きたい事?」
何だろう? 答えられるかな。
リアンが机から身を乗り出し、真剣な表情で口を開いた。
「真一くん、どうして死んじゃったの?」
………………………………………………………………………はい?
いや、むしろ俺が聞きたい事だし。それ。
それに此処は普通、俺の死因について説明される流れだと思うんだけど。
何で逆に聞かれてるんだよ。
そう思いながら、俺はリアンに答えた。
「えっと、俺にもよく分からなくて…」
「……本当に? 何か思い出せる事とかないかな? どんな小さな事でもいいから。お願いだよ、真一くん」
そう言われても……。
思い出せる事はない。そう言いたいのにリアンの表情はとても必死で、切羽詰まったようにも見える。
何故だろう?
そんな疑問を頭に浮かべながら、俺は瞼を閉じた。
さて、何か思い出せるかな?