贈る言葉
少し連載を休憩して書きました。
野球が出てきますが、連載の登場人物とは全く関係ありません。
実際、私が経験した物語です。
こんな風に人を愛せたことを誇りに思う。
大好きな人に、大好きだと伝えなかったこと。
全く後悔してないと言えば嘘になるけれど、これで良かったのだと笑うことはできる。
先輩。
凄く頑張っている人だった。
野球部のエースだった。
全国から注目を浴びる人だった。
私には、誰よりも輝いて見えた。
1番を背負った背中は頼もしくて、笑顔でマウンドに立つ姿が大好きだった。
憧れでした。最初は。
野球が好きで、選んだ高校だった。
見に行った大会で、気付いた。
一人オーラをまとっている人に。
ピンチを迎え、マウンドに集まる仲間たちに貴方は何を言ったのかな。
次の瞬間、ナインに笑顔が溢れた。緊迫した空気が嘘の様に軽くなった。
チームの雰囲気がかわった。
そこから三振の山。一点も許さなかった。
逆転サヨナラ大勝利。
そこには本物の『エース』がいた。
本当に嬉しそうに笑う。
本当に楽しそうにプレーする。
そんな姿に恋をした。
先輩の投球は、才能じゃない。努力から生まれたものだった。
人一倍野球が好きで、誰よりも努力を重ねる人だった。
辛いときこそ笑い、プレッシャーをも力に変える。仲間に勇気を与えるエース。
大好きだった。
私の贈ったエールに笑顔で応えてくれたこと。
ありがとう、と眩しいほどの笑顔で言ってくれたこと。
涙が出るほど嬉しかった。
先輩の隣にはいつも、先輩を支え続けてきた彼女の姿があった。
私が入る隙間なんてないことは、十分すぎるほど分かっていた。
だから、泣いた。何度も何度も。
忘れようとして失敗して。
見ないふりして。気付かないふりして。
どうしてかな。
どうして私じゃ駄目なんだろう。
この想い。誰にも負けない自信があるのに。
ある日、分かった。
私じゃ駄目なんじゃ、なくて…
先輩があの人じゃなきゃ駄目なんだって。
あの人以外じゃ、駄目なんだって。
やっと分かった。
告わないと、決めた。
私が伝えたいのはそんなことじゃないから。
青い空に見守られた、卒業式の日。
貴方に最後の言葉を贈りました。
貴方の胸には届きましたか?
「卒業おめでとうございます。いっぱい、いっぱいありがとうございました。
これからも頑張って下さい。ずっとずっと応援しています。
先輩の活躍を、心から祈っています!」
貴方はあの笑顔で、ありがとうと応えてくれた。
だから私も。笑って見送ったよ。
貴方の姿が見えなくなるまで、泣かなかったよ。
手元には、笑ってピースしてくれた一枚の写真。
ねぇ、先輩。
大好きだったよ。
苦しいほど、大好きだった。
だから、応援するって決めたんだ。
私が貴方のためにできること。
必死で考えたけど、応援することだけだったから。
精一杯のエールを、贈り続けます。
だから頑張って、先輩。
どうか、忘れないで。貴方のことを応援してる人がいるよ。
私が貴方に望むのは、好きになって欲しいでも、彼女になりたいでもないよ。
貴方の活躍と貴方の幸せ。
本当だよ?
大好きだから。幸せを祈る。
先輩が、生きていてくれること。
笑っていてくれること。
頑張り続けてくれること。
活躍してくれること。
誰よりも幸せになってくれること。
それが私の望み。それが私の願い。
だから、幸せになってね。
私と出会ってくれてありがとう。
こんなに好きにならせてくれてありがとう。
貴方の存在があったから、私は強くなれた。
貴方がいたあの日々は、私にとってかけがえのないものになりました。
たくさん泣いたけれど。
貴方を好きになったこと、後悔したことは一度もないよ。
貴方に会えて良かった。
貴方を好きになれて良かった。
本当に、ありがとう先輩。
貴方と出会えた私は、世界中の誰よりも幸せだと思う。
野球漬けだった三年間。
かけがえのない仲間と出会った。
壊れそうになる度に、声枯れるまで怒鳴り合った。
苦しみも喜びも分かち合い、笑うときはいつも一緒だった。
倒れそうなときには肩を貸してくれ、泣きたいときは何も言わず側にいてくれた。
努力することの意味と、仲間がいることの大切さを学んだ。
汗のしみ込んだグランドに、泥だらけのユニフォーム。
夢を託した白いボール。
憧れの場所に立ち、自分を育ててくれた全てに感謝した。
二度と戻らないけれど、いつまでも色褪せることなく輝き続ける。
青春の日々。
貴方の素晴らしい思い出の、ほんの一瞬でも、私はいますか?
もし貴方が、ほんの少しでも頑張ろうって思ってくれたら。
私の想いは報われる。
同じ空の下。
貴方がどこかで頑張り続けている。
大好きなあの笑顔で、笑ってる。
そう思うだけで、強くなれます。頑張れます。
ありがとう先輩。
永遠の1番。
きっとずっと忘れない。
頑張れ。
愛する貴方に、贈る言葉。