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ちょっと天然の女子はきらきらでピカピカになる  作者: ついざきまさひろ
第七章 好き、好き、大好き

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第4話(最終話) きらきらでピカピカのあなたへ

 アシカ選手になる予定の、デッカこと、チッチャは言っていました。

 泳ぎの楽しさの先には、苦しみやつらさがあって、その先にまた、すごい楽しさや喜びがあると。


 私は泳ぎの苦しみやつらさなんて知りません。


 泳げば、いつだって、楽しいですから。


 そこで、私は、カッパーさんの言葉も思い出しました。


 何かを手に入れると、何かを失うものだよ。

 新しく手に入れた何かは、いいものかもしれないし、悪いものかもしれない。


 もし、私が、泳ぎの楽しさの先の、苦しみやつらさを知れば、何かをどんどん失っていくのでしょうか。


 それは、私にとって、いいことなのでしょうか。


 それとも、悪いことなのでしょうか。


 今、私にはわかりません。


 でも、私は、泳ぎの楽しさの先にある、苦しみやつらさ、そして、その先にまたあるという楽しさや喜びを知りたい、味わってみたいと思いました。


 脳みそ鉄筋コンクリートの大人リクちゃんに、私も負けていられませんから。


 さらに西に傾いた夕日は、その赤みを濃くしていました。


 きれい。


「俺も、がんばる」


 リクちゃんは澄んだ瞳で、右の手を差し出してきました。


 握手です!


 私たちは、互いの右の手をしっかりと、にぎり合いました。


 私の頭の中は、また、きらきらでピカピカになりました。


「はい」


 リクちゃんは、左手で持っていたナナフシを、私の右手の甲に乗せてきました!


「きゃーっ!」


 私は思わず、右の手を引っこめ、何度も何度も、高速に払いました。


 ナナフシは、緑の草の上に落ちました。


 リクちゃんは、大きく目を見開いて、固まっています。


 私は、心臓、ドカドカです。


「もしかして、アユちゃん、ナナフシ、好きじゃないの?」


 リクちゃんは、私の顔を覗きこむようにして訊いてきました。


 私は、大きく、うなずきました。


「じゃあ、アユちゃんには、これを、あげる」


 リクちゃんは、短パンのポケットを探りだしました。

 

 えっ……、なあに? 


 川の中でリクちゃんを後ろから抱きしめた感触が、私によみがえってきました。


 身につけられるようなものをもらえたら、私、うれしいです。


 胸のドカドカが、ドキドキになっていました。


「はい」


 リクちゃんは、ポケットの中から、何やら、取り出しました。

 

 黒くて小さな楕円形の……。


 虫です! 


 ゲンゴロウ! 


 いつからポケットにいれてたの?


「いらなーい!」


 私は、首を横に、何度も何度も、振りました。


 胸のドキドキは、またナナフシの時と同じドカドカになっていました。


「アユちゃん。ゲンゴロウも、好きじゃないの?」


 リクちゃんは、目をぱちくりさせます。


 私は、何度も何度も、うなずきました。


「そうなんだあ。俺は、ゲンゴロウ、大好きなんだけどなあ」

 リクちゃんは、真顔で言います。


 やっぱり、リクちゃんは、全然、大人になんか、なっていません!

 

 でも、私は、こんなリクちゃんが、好き、好き、大好きなんです。(了)



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