8 リリコの予感
「さて、どこかな、重病の患者さんは?」
やっと帰宅してベッドに入ったものの、いつにも増して疲れているはずなのに、遼一は眠れずにいた。
夜遅く、明け方近く呼び出されてやってきたにもかかわらず、リリコはまぶしいほど明るく、ベッドに横になっている遼一の顔を片頬に笑みを浮かべて覗き込んだ。
「これはこれはホントに重症だわ、恋に疲れてるのね」
「仕事だよ、仕事で疲れてるんだよ」
怪しむようにリリコが目を細めて遼一を見た。
「仕事じゃないわ」
「仕事」
リリコが聞こえないそぶりで、
「こんないい男を苦しめるなんて罪ね」
「だから、違うって」
首を振りながら、シャツのボタンを外している。
「違わない、リリコにはわかるの」
自分で頷き、
「恋してる男の顔してるんだもの」
ひとり納得した表情になった。
「どんな顔だよ?」
「だから、こんな顔」
リリコは遼一の顔を両手で優しく包み込み、そっとキスしてきた。
「恋って誰に?」
「そんなの、リリコは知らないわよ? 自分の胸に手を当ててみれば」
リリコが遼一の裸の胸を指先でくすぐる。
「やめろ、インチキな占いも、な」
「インチキじゃないわ」
するりとリリコがベッドに滑り込んできた。
「認めたくないんだ」
耳に甘い息を吹きかけて言う。
「だから辛いんだ...ね?」
不意打ちに遼一は乱暴にリリコにのしかかり、両手を押さえつけると荒々しくリリコの唇を唇でふさいだ。
「図星でしょ」
乱れた息でリリコが遼一に笑いかけた。




