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27  彼の選択

「おめでとう、そりゃいい、そうかそうか」

先方に伝える前に、上司の野々村に正式交際の旨を伝えた。

繭子を紹介してくれた義理もある。

野々村は自分のことのように喜んでくれた。


野々村が話を広めたのか、翌日には他の部署の同僚にも伝わっていた。

遼一はさまざまなところで祝福された。


「聞いたよ。おめでとう」

出社するとエントランスで同期の小暮と顔を合わせた。

小暮が顎で応接コーナーに遼一を誘った。

「ホントに心配してたんだ。ここんとこ、珍しく女っ気もなかったしな」

小暮は当然、リリコの存在を知らない。

「忙しくって、それどこじゃなかったんだ」

「わかるよ、中川の仕事ぶり見てりゃ。

とにかく、良縁に恵まれた、ってやつだな、おめでとう」

「心配かけたな」

「そりゃいいけど、中川ロス?で女子たち元気なくてさ、うちの部署まで」

「だから、女子じゃなくて、女性、な」

「はいはい、女性社員が、まあ暗い暗い、お通夜でさ」

「すまない」

「まあ、中川が謝ることじゃないけどな」

そう言って小暮がうなずく。

「とにかく、おめでとう」


これでいい。


周囲に祝福されて、結婚する、それが幸せなのだろう。

それがリリコ言うところの『平凡な地獄』だったとしても。

自分にはそれがお似合いだ。


遼一は思った。


怜からは、あんなことがあったにもかかわらず、

「今日、会える?」

あいかわらず連日のようにLINEが届く。

遼一は返信しなかった。

どんな気持ちでLINEしているのか、思うと気持ちが揺れた。


あの夜、ふたりの関係は中途半端に終わったが、あれはあれでよかったのだ。

たとえ、ひとつになれなかったとしても、

ふたりの魂はたしかに繋がれていたのだから。


その記憶さえあればいい。

それだけでいい。


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