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15 事故
夕方、スタジオの仕事を終えた怜が歩道を歩いていると、赤信号の交差点に進入した大型バイクがコントロールを失い、突っ込んでくるのが見えた。
避けようとした次の瞬間、怜は思わずギターケースを守るように両腕で抱え、激しい衝撃とともに体は地面に叩きつけられていた。
遠のきそうな意識の中、まわりに集まった人々の悲鳴やざわめきが聞こえていた。
しばらくして、救急車のサイレンが近づいてきた。
「聞こえますか? もう大丈夫ですからね」
誰かの声が聞こえた。
「ストレッチャーに乗せます。ケース、離してください」
誰かが怜の腕から、ギターケースを引きはがそうとしている。
「いっしょに持っていきますから、離して大丈夫ですよ」
「いや、だ」
怜は朦朧としながら抵抗した。
「俺、の、ギター」
意識が途切れた。




