表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

涼夏(夏祭り①)

喫茶店で公開告白をした後、私はちゃっかり先輩の連絡先を入手していた。


唐突な告白だったせいで、返事は保留にされたけど、あの場で振られなかったということは、先輩の彼女になれる可能性があるってことで、そう考えるだけで口元が緩む。


『夏祭り 花火大会 九月七日』


短大の構内に貼られてた夏祭りのチラシを思い出す。


先輩と一緒に行けたら楽しいだろうな。


ケータイのメール画面を開きながらしばし考え込む。


彼女でもないのに迷惑かなぁ。でも、学生時代最後の夏だよ? やっぱり思い出は欲しいよね。それに、九月七日……だし。


部屋のベッドに横になり、ぐるぐる悩んだ末、ままよと先輩にお誘いのメールを送った。


◆◆◆


次の日の昼間、なかなか返信がこなくてやきもきしてたとき、ピロンとケータイの着信音が鳴った。


「お兄ちゃん! 私ちょっと台所離れるから、残りの皿洗いお願い!」

「……まじかよ。りょーかい」


のんびりテレビ見てるとこすみませんね。お兄ちゃんもたまには台所仕事して。


居間のソファにだらりと腰掛けていた兄が、むくりと立ち上がるのを後目(しりめ)に、階段を駆け上がり、自室に飛び込んだ。


ベッドの柵に寄りかかって座り、メールを開く。


『夏祭りのお誘いありがとう。行こうか悩んでたから、早乙女さんと一緒に行けるなら喜んで。待ち合わせ場所は、会場の最寄り駅とかどうかな? 九月七日、楽しみにしています』


「……ッやったぁ!」


二度三度と読み返し、お誘いが成功したことに舞い上がった。


先輩の方から、待ち合わせ場所まで提案してくれるなんて! これは脈ありでしょ。脈ありであれ!


ひとしきり喜びを噛み締めた後、はたと我に返る。


浴衣(ゆかた)ってあったかな。え、買いに行くべき? ど、どうしよ、まだ付き合ってないのに、気合い入りすぎ? いや、でも、夏祭りといえば浴衣だよね。相談、(あや)ちゃんに相談しよう!


◆◆◆


「突然呼び出されてびっくりしたよ」

「ごめん綾ちゃん。真っ先に浮かんだのが綾ちゃんの顔だったから」


駅ビルの中にあるカフェで、目前に座ってる中学時代からの友人に向かって頭を下げる。


錦織綾乃(にしきおりあやの)。呉服屋さんの跡取り娘だからか、着物や浴衣に詳しい。


「暇してたから問題ないよー。それで、好きな人との花火大会に、浴衣を着て行くべきか(いな)かだっけ。着るべきでしょー」


「まだ付き合ってなくても?」


「私なら着て行く。絶好のアピールチャンスだし。浴衣を着る機会はそんなに無いんだよ? 相手さんも満更(まんざら)でもなさそうだし、一気に悩殺(のうさつ)しておいで」


「悩殺って」


でも、綾ちゃんのいうことも一理ある。告白の返事もそろそろ貰いたいし、できれば付き合いたいし。気合い入れて悪いことはないよね。


「綾ちゃんありがとう。浴衣、着て行くことにする」

「うんうん。それじゃ、私の家で浴衣買う? 予算はどのくらい? 今なら友人価格で割引中だよー」

「相変わらず、商売上手だね」


さっそく私相手に営業をかけてくる友人に、くすりと笑いながら、予算を伝える。


相談して良かった。


カフェで少しだけ雑談した後、綾ちゃんの家で、私は無事に浴衣一式を揃えることができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ