涼夏(季節の変わり目②)
おかゆを作った後、大和さんのとこに持ってくると、彼は熟睡していた。
起こすのは可哀想だから、ラップをかけて帰ろう。
テーブルにおかゆを置き、サランラップを借りておかゆに蓋をする。
カバンからメモ帳を取り出し、書き置きを残すと、大和さんの顔をしばらく眺めて、玄関に向かった。
やりたいこと、だいたいできたし、満足、満足。本当はもう少し様子を見てたいけど、これ以上いても逆に気を遣わせそうだから、我慢しよ。
玄関のドアを開けると、外はザーザー降りの大雨だった。しかも雷のおまけ付き。
雷特有の光と音。
私は悲鳴を上げて、部屋に逃げ込んだ。
むり、ムリ、無理!! 怖い怖い! 雷は無理だってば!
「涼夏さん、どうしたの?」
伏せていた顔を上げる。
布団から上半身だけ起き上がらせた大和さんが、心配げな表情でこちらを見ていた。
起こしてしまった。だけど、起きてくれて良かった。
「雷が……怖くて」
大和さんが優しく抱き締めてくれた。
多分縋り付くような表情をしてたんだと思う。
部屋の中にも稲光が入ってきたけど、抱き締められてるおかげで、少しだけ恐怖が和らいだ。
お見舞いに来たはずなのに、結局大和さんに迷惑をかけてしまってる。
雷鳴ごときで動けなくなるなんて情けない。
「おかゆ、ありがとう。おかげで薬を飲むことができるよ」
「あ、まだ飲んでなかったんですね」
「食後の薬だったから、何か食べてから飲もうとしてたんだけど、ご覧のありさまで。涼夏さんが来てくれて、本当に助かったんだよ。だけど、もう夜だし、雷が鳴るくらい天気も悪いから、一人で外を歩かせたく無いんだよね」
私を落ち着かせるためか、大和さんは時折頭を撫でてくれながら、ゆっくりと話し続けてくれている。
外を歩くのは、私も遠慮したい。せめて雷が鳴らなくなるまでは、ここに居たい。
「涼夏さんさえ良ければ……泊まってく? 風邪は移しちゃうかもしれないけど、夜道を歩かせるほうが危険だから……」
お泊まり! 本気で!? いいんですか? ちょっと雷、好きに……はならないけど!
「風邪は人に移せば治るとも言いますし。病は気からとも聞きますから、気にしないでください。それより、本当に……良いんですか!? 本気にしますよ、お泊まり!」
「いや、極力移さないようにするけどね!? うん、良いよ」
急遽、大和さんの家に泊まることになった私は、浮かれながら母に泊まる旨のメールを送った。
◆◆◆
次の日の朝、私は大和さんの腕の中で目覚めた。
何も……なかった! キスすらなかったよ!? 寝る時も二人してマスクしてたし……。はい、風邪を移さない努力は感じました。だけど、ちょっと、自信無くすんですが。
幸せそうに寝ている大和さん。恨めしくも愛おしい。
眠る彼の瞼に軽く口づけを落とし、私は朝食を作るために起き上がった。




