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初めてできた友達は、小さくて可愛いコスプレ好きなオタクの女子高生でした。  作者: 安田いこん
第三章 198センチの陰キャオタク君が球技大会で頑張る話
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第68話 それはそれとしてVtuberの話をしよう

「それでリンリン様、最近Vtuber追っかけ始めたんだ」

 

「は、はい! こころんさん! と、友達に……教えてもらった切り抜きを見始めて……。一回切り抜きを見ると関連動画V一色になって今自分のヨーチューブのトップすごいことになってます……」


 休日の日本大橋。もはやいつもの通りにailes d’angeに来店した倫太郎は、これまたいつもの様にこころんとオタク談義に花を咲かせていた。こころんの鼻にはもう詰め物はない。


『ごめんねー、注文が立て込んでて』と倫太郎ご入店した際にこころんに謝られたくらい、こころんは忙しなく接客していた。あのライブで大トラブルを乗り越えて伝説と化したこころんに、ファンがドンと増え始めたのだ。『大車輪の活躍をしてくれているよー』とこころんの代わりに接客してくれたキャストが頼もしそうにこころんを見ながら呟くのに、倫太郎は深くうなづいた。


(こころんさんは……かわいいもんな……)


 だから倫太郎に接客してくるのがだいぶ遅れた形となった。

 それでもこうしてコスプレ喫茶でメイド服を着たこころんと話す時間があるだけで、倫太郎はもうそれだけで十分幸せなのだった。

 

「Vtuver好きな人、結構多いもんなー。お姉様たちも推しのVのグッズ持ってる人いるわ」


「こ、こころんさんは、Vtuberは興味あったり、しますか……?」

 

「興味あんだけどなー、今のところ話題になった切り抜きをちょろっと見てる感じ。まだ浅瀬で水遊びしてる程度だわ。沼ってはない」


「ロリ系Vtuberとか……」


「でもガチでロリなわけないじゃん。あ、ちょっとまって、これ以上深い話しても大丈夫そう?」


「え、なんか深い話あるんですか」


「……Vtuberの中の人ってさぁ」


「一旦止めましょう」


「おう」


「でもあれじゃないですか、こう、のじゃロリみたいな感じじゃだめなんですか」


「やだ。幼い精神は幼い肉体にしか宿らないから」


「健全な精神は健全な肉体に宿るみたいなこと言う……」

 

「いやまあ、いいんだよ。ロリ系が麻雀配信してるとか、こう、楽しそうにロリっぽい声で演じてるところとか」


「演じてるって言っちゃってるじゃないですか」


「でもガチなこと言うけど、マジで肉体がロリだとして、そのロリにゲーム配信やらせたりするのとかはなんか労働的なあれでちょっと……みたいなところがある。本当に小学生にあんなゲームさせてんの、あんなセンシティブなASMRさせてんのって別の感情が入っちまうんだよな」


「いやまあ、それはそうなんですけど」


「あと気になってるVtuberの年齢を調べようと思ったらなんかわかんないけど全然違う名前の人の年齢が出てるのなんでなんだろうね」


「一旦止めましょう」


「おう」


「というよりあれじゃないですか? こころんさんのロリキャラに対し常に”本質”を問う姿勢と、二次元と三次元の間の存在であるVtuberってどうしても嚙み合わせが悪いんじゃないですか?」


「それはそう」


「俺はロリのVtuberでも多分普通にロリとして見ると思います。ああ、ロリなんだなぁって」


「君みたいな割り切り方ができるオタクがコンテンツを”芯”から楽しめるんだろうなぁ」


「なんかの切り抜きで、ロリキャラのVtuberが配信で『昨日飲みすぎてー』みたいなことポロっと出ちゃってコメントが大騒ぎになったっていうのがあったんですよ。別にコメント欄も本気で慌ててるんじゃなくて『やばいやばいwww』『通報されるってwwww』『じ、ジュースかもしれないから(震え声)』みたいなちょっとちょけてるんですよね。それでVtuberの人も笑いながら慌てたふりをして火消ししようとするっていうのが。なんかそういう、配信者と視聴者とのゆるーいロールプレイ? っていうのがなんかちょっと魅力的だなって思いました。もちろんVtuberの設定をしっかり守って突き通してる人もいるんですけど」


「あーなるほど……ロールプレイかぁ……。それがなぁ……」


「それがちょっと苦手なんですか?」

 

「なんというか……ゲームだとほら、私の嫁の神楽桜やんやって本当に存在するじゃん、まず前提として」


「え?」


「するじゃん」


「あっはい」


「そういう存在自体と言うかその見た目、性格とかが”確定”している……、ちがうな、Vtuberでいう視聴者みたいな、第四の壁を破ってくるような第三者的な眼差しはないわけだよ。そういう不可侵なところが……"実存"なんじゃないかなって思っちゃんだよな」


「……不可視の存在であるプレイヤーたちと隔絶されているのが”実存”だと……なるほど……。二次創作のネタを原作が悪ノリで逆輸入してしまう、みたいなのは苦手だったりします……?」


「うん、バリ苦手。でもVtuberってそういう視聴者自体がコメント欄としてコンテンツに明確に介入してくるっていう形じゃん。まあそれ言ったらストリーマー全員に言えることかもしれないけど、二次元と言う存在としてのVtuberっていう方向で見ると違和感のほうが大きくなっちゃう。それがこれまで接してきたコンテンツと全然違うから戸惑ってるっていうのが正直なところかも」


「なんかでもこころんさん、もう少しチューニングが合えばVtuberハマれると思うんですよね。Vtuber見て見ましょうよ、暇木君と手知君に教えてもらったテンセグ実況してたVの人、第四章の"ヴァルハラ条約"でフィリアがあの例のシーンでアメイジンググレイスを唄うところ……本当にボロ泣きしててめっちゃ信頼できる人だなってなりました。これまでかなりヘイト貯めてきたキャラクターなので、そのフィリアがかつて利用するだけして見放した学園の為に、1人大群の前に立ち向かうところとか……」


「あそのらへんのスチルいいよなぁ、フィリアの服が破れて胸元が開いてるところとか……」


「目の付け所がオッサンすぎませんか?」


「いいだろがよぉ」


「あそこは普段自分の威厳を周りに知らしめる為に身に纏うドレスに病的なまでに執着してて、少しでも汚れが付いたら側近に怒り散らかすような性格だったのが、大事なところが破れてもそれを手で隠そうともせずに敵の前に立ち向かうっていうのが尊いんですよ……!」


「わりい、サービスシーンだと思ってたわ」


「……今度から昼休みの屋上で、一緒にストーリー読み直しましょうね。もう、一から全部、俺が解説しますからね……」


「こわ」


 そんな話をしている二人の様子を、キャスト(大学生)たちはキッチンからこっそりと眺めては何やらニヤニヤと浮かれたような笑みを浮かべていた。


「いやぁ……ほんとリンリン様、こころんちゃんのこと好きだよねぇ」


「それ。こころんちゃんが接客してないときも、無意識のうちに目で追ってたもんね」


「これはもしかしたら、いや、もしかしなくても……」


「うふふ、青春のにおひ……」


「いやあ、若いっていいねぇ……。私もお酒を飲まないで楽しくコミュニケーションを取れてたあの若い時代に戻りたいよ……」


「わかる……」


「リンリン様、奥手だけど一歩踏み出せるかなぁ」


「いやぁ、頑張ってほしいですなぁ、若人には……」


 と、倫太郎に『押せ! 押せ!』と陰ながら応援するキャストたちに、キャストの一人であるほむらがあきれ顔でため息をついた。

 キャストの二人は、こころんのトラブルで誰よりも率先して声を出して救ったことを知っていた。だからこそ倫太郎に対して信頼していたし、倫太郎になら愛娘のように愛でるこころんを任してもいいのだと(謎の親目線で)思っていたのだ。


「なーにやってんすか、ねえさん。第三者が勝手に恋してるとかなんとか言っちゃだめっすよ。それに、お客様とキャストっすよ。やばいっすよ言ってること」


「なんだいなんだいほむらちゃん、お堅いわねぇ」


「そんなこと言って、ほむらちゃんも人の恋路には興味あるんでしょ?」


「ちゃいますってー。もう、ほんと自由な人たちなんだから」


 ふう、とほむらはため息をつきながら倫太郎とかなたの様子を見る。


 相変わらず倫太郎とかなたは和気あいあいと、むつまじく会話をしているようだ。その声までははっきりと聞こえてこない。


「……それで、リンリン様やい」


「え、な、なんですかこころんさん?」


「君が前にLANEで言ってた……うちのお仕事が終わった後の話だけど」


「あっ。それはもう、その、い、一緒に、駅まで、帰るって言う……」


「わーっと、それをお店の中で言うんじゃあないっ」

 

「あっ、す、すいません……」


「まったく……。だから前も言ったじゃあないか。あの、2回目のコスプレ喫茶の時に一緒に帰ったは帰ったけど、あれは平日のことだったし、休日の夕方すぎるくらいまで帰りを待ってもらう必要なんてないって」


「でも……、その、し、心配で」


「心配っつったって。お姉様たちと一緒に帰れるときは一緒に帰ってるし、別にいっつも一人で返ってるわけじゃないよ」


 じぃっと、倫太郎は上目遣いでかなたをみつめる。その倫太郎のまっすぐな眼差しに、こころんはたじろぎながらも言う。

 

「そんなに私が怪我をしたの、気にしてんのか?」


「それ、は」


「いいって、いいって! 気にすんなって! 大体、帰るときは大抵お姉さまたちと駅まで帰ってるし、いっつも私一人で帰るわけじゃあないよ。君と一緒に帰った時だって、君が待ってたからお姉さま置いて行っちゃっただけだし」


「……は、はい」


「ま、そのお気持ちだけは受け取っておくわ、ありがとね」

 

 2人の会話の中身までは聞こえないからわからない。


 でも、倫太郎がかなたに語りかける目つきは確かに……かなたを大切にしたいと想う気持ちに満ち溢れている。

 それを、恋だと、形容してもいいのかもしれなかった。


 そしてキャストの二人は、恋が成就するには、もっともっと倫太郎が押していかないと、と。

 

 臆病にならず、ガンガン攻めてったらいいじゃない、と。

 

(いや、どっちかっていうと……)

 

 ほむらの見立てでは、本当に問題となるのは、倫太郎ではないと思っていた。


(本当に一歩踏み出すのが必要なのは、きっと……)


 ほむらはこころんを、じっと見つめていた。


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