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あれから2カ月が経つ。佐伯からの連絡はない。内定はひとつだけ貰った。年休120日以上月平均残業20時間以下の人材派遣会社。そこで僕は施工管理士になるらしい。
なるつもりはないから就活は続けている。
スーツを着て例のドトールコーヒーにいるのは、そういう事情からだ。
ライター職の応募課題に取り組みながら、白紙のWord画面を睨んだ。僕のか弱い眼差しでは文章を浮かべられなくて、視線を前方にやった。
通りではサラリーマンや外国人旅行客が闊歩している。誰もが前だけを見て一心不乱に歩いている。立ち止まる者は誰もいない。
青白のチェック柄シャツを着た冴えない風貌の男が、スマホを片手にキョロキョロとしていた。何度か通りを往復してから、ガードレールに寄って立ち止まった。
彼が何かの拍子に逆上して女の子を刺そうとして、そして返り討ちに遭う未来を想像した。
止めるべきなのだろうか。他人事ではない、最悪の結末を。
彼を思いとどまらせる術が思いつかない内に、見知らぬ女の子がスマホ片手に彼に声を掛けた。
2人は連れ立って去って行った。視線を画面に戻す。文章は思い浮かばない。
インスタを開いて佐伯にDMを送った。
『あの後どうなったの?』
何もできなくてごめん――メッセージはその前で途切れている。