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犯人隠避罪、と警察は言った。大村という、中年の男だった。
「事件現場を見てて一緒にいたらさ、そりゃ疑われるよね。犯罪者が逃げるのを手伝ったら、それも犯罪なんだよ」
はい、と言ったはずだが、言えていない。だから代わりに頷いた。
「結局佐伯とはどういう関係なの?」
「友人、ですかね」
「どこで知り合ったの?」
「就活で説明会が一緒になって……」
「へえー。彼女とかじゃないんでしょ?」
「そうですね。そういうのは、全然」
「でも佐伯の家に泊ってたんだ」
もはや隠すつもりはなかった。というより、そもそも隠せるようなことがない。
佐伯を僕の家に匿ったわけでもないし、あの男を刺すのを手伝ったわけじゃない。
大した意味もなく美人についていっただけの僕を、大村は軽んじているようですらあった。
同時に、性欲に踊らされた浅はかな男を犯罪因子にしないよう、徹底的に脅しつけるようでもあった。
「きみ大学生なんだよね、刑法とかやってないの?」
「いえ、そういうのは……」
「ふーん。犯罪隠避罪ってよくあるんだよね。友達とか家族の頼みだからーてのもあるし。自分にも後ろめたいことがーってのもあるし。判例もあるよ?」
「はい。でも僕――」
「一番くだらないのがさ、見た目だけはいい女の子に騙された男ね。そういうパターンって、大体いいように使われてるだけなの。自分でそれ思わなかった?」
「――思いました」
取調室は寒いくらい殺風景だ。真っ白な壁、頼りないパイプ椅子、凹みと傷だらけのテーブル。一番目に付くのは窓に取り付けられた鉄格子だ。
大村はひと息吐いた。うんざりしたように眉間に皺を寄せている。
取調室はうっすら暑かった。梅雨もまだ始まってないのに、どこからこの熱が出ているのか不思議だ。同時に寒気も感じるのだから、余計に不思議だ。
「今回で佐藤くんを何か罪に問うってことはないんだけどさ」
二度と来るなよ。大村に見送られて警察署を後にした。
家に帰ったときには20時を過ぎていた。
母親も父親もあらましを知っていた。母親は口元を覆って泣き崩れ、父親は「風呂できてるぞ」と言ったきり口を真一文字に結んだ。
まる1日着続けた服からは嫌な匂いがする気がして、まとめて洗濯機に放り込んだ。シャワーを浴びて全身をくまなく洗った。
風呂を出てから、何も言わずにすすり泣く両親に改めて説明した。
佐伯のこと、事件のこと、通り魔のこと、昨晩のこと。
僕は「男を刺した女に騙された大学生」でもあり「通り魔に襲われた可哀想な大学生」でもあった。警察は両親にそう伝えていたらしい。
佐伯を助けた、とは誰も言わなかった。
「ごめんなさい」
2人に頭を下げた。数秒そのままでいると「もう二度とやらないでね」と母親が涙声で言った。
自室に戻ってから知ったことが2つある。
新宿で中年男が刺された事件の続きはまるで報じられていないこと。
昨日受けたIT系ベンチャー企業は不採用だったこと。