表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/64

第57話楔の力と王都の震え

第57話:楔の力と王都の震え

 王都の石畳が、微かに震え始めた。

 街の人々は空を見上げ、恐怖と驚愕の入り混じった声を上げる。

「……な、何が起きてるんだ?」

 市民の一人が叫ぶ。建物の軋む音、風に混ざる低い振動——それは単なる魔法や自然現象ではない、存在そのものの力だった。

 俺とセレスは、王都の中央に立つ広場で肩を並べている。

 セレスの胸から放たれる歌の振動は、空気を揺らし、建物や人々の心に直接響いていた。

 ——楔としての力が、世界に反応している。

 クロウが警戒の構えを取りつつも、息を呑む。

「……すげぇ……存在感が半端じゃねぇ」

 彼の目の前で、空気が光を帯び、微細な波紋が街全体に広がる。

 エリスも書物を掲げ、解析を続ける。

「……これは楔の力……。歌と意志が合わさった瞬間、物理と魔法を超えた干渉が起きている」

 言葉の意味を理解した瞬間、俺は背筋が凍った。

 ——世界が、俺たちを“計算外”として認める証拠だ。

 その時、民衆の中でざわめきが広がる。

 小さな子供たちが笑い、泣き、恐怖に震え、そして光に目を奪われる。

 セレスの歌は、感情に触れ、世界のバランスを微かに変えていた。

「……信じられない」

 クロウが小声で呟く。

「これ……俺たちが楔になってるってことか?」

 エリスはうなずく。

「楔……世界が災厄として認識する存在を支える者。あなたたち二人がその役割を担っている」

 セレスは胸に手を当て、震える指で俺の腕を握った。

「……怖い。でも、私たちなら……」

 その声には、恐怖よりも決意が勝っていた。

 突然、地面の亀裂から、黒い影が無数に立ち上がる。

 世界の意思の具現——災厄の端末とも言える存在だ。

 それらは楔の力に反応し、セレスの歌と俺の存在を目標に動き出す。

「来る……準備しろ!」

 クロウが叫ぶ。

 俺も剣を握り、セレスの歌に合わせて意識を集中する。

 空間そのものが揺れ、王都の空気はまるで嵐の中にいるようだった。

 ——しかし、何より衝撃的だったのは、民衆の反応だった。

 彼らは恐怖で逃げるのではなく、自然と楔の力の周りに集まる。

 歌の振動に合わせ、心の奥底で安心感を感じ、目を輝かせる。

 世界は、楔としての存在を“認めた”のだ。

 セレスの歌が最高潮に達した瞬間、王都全体に柔らかな光が広がる。

 黒い影は消え、亀裂は閉じ、街の人々は安堵の表情を浮かべた。

 だが、俺たちは知っていた——これはほんの序章に過ぎない。

 楔としての役割は、まだ終わっていない。

 世界は次の裁定を静かに、しかし確実に準備している。

 俺はセレスの肩に手を置き、静かに言った。

「……ここからだ。俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだ」

 セレスは小さく頷き、胸の奥で歌を整える。

 楔として、守る者として——二人で立ち向かう覚悟を、世界に示した瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ