第42話動き出す影と謎の使者
第42話:動き出す影と謎の使者
封印獣が倒れた森に、静寂が訪れた。
木々のざわめきさえも息をひそめたように、世界はしんと黙りこくっている。
だが、その静けさを破ったのは——誰かの足音だった。
「……誰だ」
クロウが即座に剣を抜く。エリスも魔力を帯びた指先をかざした。俺もセレスの前に立ち、手にした新たな剣を構える。
現れたのは、フードを深く被ったひとりの男。
彼の気配は、普通の人間とは思えなかった。
殺気もないのに、圧がある。ただそこに立っているだけで、空気が張りつめる。
「……落ち着け。私は敵ではない」
男はそう言って、フードを下ろした。
現れたのは、鋭い目つきと銀色の髪を持つ青年。年齢は俺たちより少し上くらいだろうか。
「名を、レイヴァンという。王都直属の“観測者”だ」
「観測者……?」
エリスが眉をひそめる。
「都市伝説かと思ってたわ。王族にさえ干渉しない、第三の目……」
「その通り。そして君たちの動きは、我々の観測対象になった」
レイヴァンの目が俺たちを順に見渡す。だが、すぐに視線はセレスへと定まった。
「——その少女の“歌”。その力が、既にいくつかの封印を解除し始めている。……もはや、無視できるレベルではない」
「それで? 止めに来たのか?」
クロウが険しい目で睨むが、レイヴァンは首を振る。
「いや。むしろ……協力を要請しに来た。君たちと、特にその少女の力が必要なんだ」
場が静まる。
協力? 今までの連中は、セレスを“脅威”としか見てこなかった。だが、こいつは違う——?
「何が目的だ」
俺が問うと、レイヴァンは少し間を置いて言った。
「この世界には、もう一体……“完全なる封印獣”が存在する。すべての獣を封じた最後の“原初”の存在が、蘇ろうとしている」
「……!」
「その存在が目覚めれば、国家も人種も関係ない。世界が終わる。——だから、セレスの歌が必要だ。封印を解きながら、真実へと辿り着くために」
彼の言葉に、俺たちは言葉を失った。
“歌の力”は、人を癒すためのものでも、封印を解くだけのものでもなかった。
もっと深い、もっと大きな意味を——
セレスが震える声で呟く。
「……私が、世界を壊す鍵になるなら……それでも……生きたい。みんなと、一緒に……!」
俺は頷いた。クロウもエリスも、すでに覚悟はできている。
「なら、決まりだな」
俺たちは新たな道を進み始める。
影の奥から、真実がこちらを見つめているとも知らずに——
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次回:「王都への旅立ちとセレスの決意」




