2、牛の腹
満の町で食事をすませた三人は、牛の腹というところを歩いていた。
と、前方にやけに華やかな一団がいた。カーキ色の軍服に長靴、身体のラインや胸のラインが協調されてる女性もおり、宝塚みたいな感じだ。頭に鉢がねをして、頭部保護や髪の束ねらしいが、キラキラと飾りが輝き仏像の宝飾品のように華やかだ。
「待ちなさい」
一団が呼び止めた。
「あなた方、何者です。何処へ、何しに行くのです」
「観光旅行の者です。これから乳山に登るつもりです」
「あなた方、羅漢国の人でしょう。何しに来た。正直に言いなさい」
「まいったなあ。だから、乳山に登るのです。別にいかがわしい行いをするわけじゃない」
「舐めるな~!」
一団は槍を一斉に構えた。
「隊長、どうしましょう」
「隊長はよせ」
「ふふふ、シッポを出したな」
「もう、バレバレなのよ」
「う~ん、では、一対一で勝負をしませんか。あなた方が勝ったら、すべて白状します。ワシらが勝ったら、そのまま乳の山観光で・・・・」
一団は、一斉に一人の一段と煌びやかな女性を見た。
「破魔娘さま、どうしましょう」
「面白い。受けてたちましょう」
「ええ~、いいのですか」
「いいのよ」
女が前に出た。槍を構えて「受けてたつわ」と宣言した。
「ああん、勝負は槍でなく、相撲でどうだろう」
一団は再び円陣を組み協議を始めた。
「イヤらしい。スケベ心が丸見えよ」
「セクハラするつもりよ」
「はだか、ふんどし、耐えられない~」
「きっと、登美子さんを見て相撲なんて言い出したんだわ」
「何よ、私が相撲取り体型だっていいたいわけ」
「ま~まぁ、私に考えがある。私がでる」
「え~姫さまが~」
「およしなさい。はしたない」
「ま~まぁ、相手の弱点を突くのよ。金的。前蹴りで相手の金玉を蹴り潰せばこっちの勝ちよ。いひひひ」
「ひ、姫さま、顔が・・・・」
侍女がサッと手鏡を差し出した。破魔娘は、歪んだ顔をパンパンと叩いて歪みを修正し、
「さっ、支度を」と、言った。
土俵も出来、支度は整った。そして、勝負は5番と決まった。
「私は満地破魔娘。さあ、かかって来なさい」
「えっ!今、何と言いました」
「何か、すごい名前だな」
「マンチ、ハマコ・・・・イヤらしい名だ」
「ええいー!黙らっしゃい。このお方を何と心得る。頭が高~い!。この方は女御国の名門、満地家の姫様であるぞー。頭が高い、控えおろう~」
「何だ、このオバさん。いつの時代の人だよ」
「へんなの、見過ぎてんじゃねえの」
塗手が一歩前に出た。
「ワシは塗手金玉。金の玉と書いて金玉だ」
一団から悲鳴が上がった。
「まあ、金玉」
「塗手金玉、自分はスケベエと言ってるようなものじゃない」
「よく、そんな恥ずかしい名前をぶら下げて生きていけるわね~」
「親の顔を見てみたいもんだわ~」
「へん、何とでも言いやがれ」
塗手は子供の頃から名前でからかわれて、不感症になっていた。