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【短編】シリーズじゃないシリーズ

大人の屋根裏

作者: 千東風子

 

 僕の家には屋根裏がある。


 二階の廊下の天井に長四角(ながしかく)の枠があって、先っぽがフックになってる棒をそこの取っ手に引っかけて下に引くと、折りたたみのはしごが出てくるんだ。

 すごいでしょ!?

 まるで魔法か忍者屋敷、それかゲームの『調べる』をしなきゃ見つからない階段みたいだ!


 でも、僕はその棒に触るのもはしごを下ろすのも屋根裏に上るのもダメだって、お父さんが言うんだ。ちぇっ。


「屋根裏はお父さんの仕事の大事な物がたくさん置いてあるから、一人で上がっちゃダメだ」


 お父さんがいる時にだけ、何も触らない約束で僕も屋根裏に上がっていいことになってる。

 初めて上った時、お父さんが「秘密基地にようこそ」って言ってくれたんだ。


 すっごくワクワクした!!


 屋根裏はすごく広いけど、天井は斜めで低くて、僕は立てるけどお父さんはかがんで歩いてた。

 屋根裏には天窓が一つと小さな窓が二つ、あとは壁全部が本棚で、まるで図書館みたくお父さんの仕事の本がぎっしりつまってる。

 他にはテーブルと座椅子があって、お父さんはここで調べものをしながら仕事をするんだけど、夏は暑くて冬は寒いから、リビングでもパソコンをカタカタしてるんだって。

 ここの本で調べたい時や、一人になりたい時にお父さんは屋根裏に上るんだ。


 なんか大人(おっとな)~って感じでかっこいいよね!

 僕も大きくなったら大人の屋根裏(秘密基地)がある家を建てるんだ!


 そうお母さんに言ったら、超微妙な顔して力無く笑ってた。……変なの!







「……だってよ?」


「はは……」


 妻から聞く息子の言葉に、俺は笑うしかなかった。


「子どもの夢を壊さないように、北側の棚の奥の列、何とかしてよね」


 屋根裏には確かに仕事で使う大事な本や資料がある。だがそれだけではない。……奥行きのある棚は前後二列になっていて、見えない奥の列には、背表紙からして子どもの教育によろしくない(たぐい)の本や雑誌、映像作品がある。


 まあ、一言で言えば、大人の趣味(秘密)である。


「特に二段目の奥のヤツ、絶対見つからないようにしてよね」


 コレクションの中でもえぐい部類の棚である。……結構把握されとるな。


 趣味に寛容な妻からの指令に「子どもは入れないように暖簾(のれん)でも下げようかな」と呟いたら、「一人レンタルビデオ屋すんなや」と妻に怒られた。


 いつか息子に棚の奥が知られる日が来るかも知れない。だがきっと、その時は息子も大人側だろうから理解を示してくれるはずだ……たぶん。


 うん、……ちょっと整理しようかな。




読んでくださり、ありがとうございました。


ほのぼのクスッとしてもらえたら嬉しいです。


1000文字、やっぱり難しいですね。

今回バッサリ切りましたが、実はお母さんは、下屋裏収納(一階の天井部分)にヲタの全てを隠しています……。

出入口の引き戸に鍵をかけ、更に出入口の前にキャスター付き棚を置いて、完全に隠蔽。息子には収納の存在自体を教えていません。

はしごを上るのが不便だけど広い屋根裏を取るか、二階からそのまま入れて便利だけど狭い下屋裏を取るか、夫婦で戦争になったとか……。

1000文字で収まるはずがなかった(^_^;)。


息子君は、滅多に上れない屋根裏に益々憧れるばかり。

息子君から見た『大人の屋根裏』と、お父さんのガチな『大人の屋根裏』の認識が合致する日は、いつか来る……かも。



励みになりますので、よかったらお星様やいいねをお願いいたします。

m(_ _)m


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