表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/7

最終話 ガハハ、めでたしめでたしだぜ!

 雲一つない快晴の午後。

 モーガン王国首都にある教会にて、ある男女の結婚式が営まれていた。


 新郎は――白タキシードに身を包んだドルファ。

 巨体の彼に合う特注のタキシード作りは、職人にとっても大いにやりがいのある仕事であったという。


 新婦は――ウェディングドレス姿のパメラ。

 普段は凛とした女剣士という風貌の彼女が、今日だけは天使と見まがう美しさを放っている。


 二人が登場すると、招待客らは大いに沸いた。


 一番間近で拍手するのは少年剣士カイとその母マリア。

 毒に侵されていたマリアの病状もすっかり回復し、血色のよい笑顔を浮かべている。

 カイは剣の稽古を毎日こなし、規模の小さい大会ではあるが剣術大会で優勝を果たしたという。


「ドルファさーん、パメラさーん、おめでとう!」


 カイは大声で二人を祝福した。


 式場の隅ではあるが、そこには驚くべきことにかつてパメラに振られた貴族、ケビン・ドレークの姿があった。

 彼を守護する精鋭部隊“十鬼士”も一緒だ。


 ドルファに懲らしめられて以降の彼は、以前のように傲慢に振舞うのをやめ、領民からも「多少はマシになった」などと評されている。

 結婚式への招待状が来た時は憤ってはいたが、結局こうして来てしまった。


 美しく着飾ったパメラを見て、ケビンはぽつりとこうつぶやいた。


「ふん……僕には勿体ない女だったな」


 式場の一角にはロン老師が大勢の弟子を引き連れ、祝福に訪れていた。

 今や彼の道場には100人以上の弟子が詰めかけ、ロン老師は「人生の最後に伝えられるものは全て伝える」とはりきっている。


「おぬしらのおかげで充実した老後を送れそうじゃ、ありがとうよ。幸せにな!」


 弟子であるドルファとパメラの晴れ姿に、ロン老師は涙をこぼした。

 なお、彼の隣にはかつて魔法協会会長であったムーアの姿もある。彼もまた権力への妄執から解き放たれ、救われた人間である。


 そんなムーアから地位を引き継いだ賢者アレンも結婚式に駆け付けていた。


「ドルファさん、今思うとあなたに負けてよかったと思いますよ。あなたに負けてどん底を味わったおかげで……私は成長することができたのですから」


 青い瞳の美男子がにこやかな笑みを浮かべている。


 確かに闘技大会出場時の彼は、魔法を過信しているところがあった。

 しかし、ホームレス生活も体験した今、そのような慢心はない。あるのは純粋に魔法を極め、発展させたいという信念のみ。

 アレンはこれからさらに魔法協会を大きくしていくことだろう。


 ドルファと決勝戦で戦ったベルギスもまた、客席で拍手を送る。

 彼が勤める食堂の店主らも一緒だ。


 ドルファに敗北し、魔界に居場所がなくなったベルギスではあるが、そのおかげで彼は人間への親愛に目覚めることができた。

 魔族でありながら、人間の世界で懸命に働く彼の姿は、人と魔を繋ぐ架け橋といってもよいだろう。

 ベルギスはこれから、人間界と魔界に多くのものをもたらすに違いない。


「二人とモ……おめでとウ!」


 ベルギスは心からの祝福の言葉を贈った。



……



 式がいよいよクライマックスを迎える。

 教会の神父がドルファとパメラに問う。


「永遠の愛を誓いますか?」


 二人は同時に答える。


「誓います」


 神父は二人に促す。


「では……誓いのキスを」


 向かい合うドルファとパメラ。天使のようなパメラを見て、ドルファは心臓の高鳴りが抑えられない。二人はまだ、口づけを交わしたことさえなかったのだ。

 こみ上げる照れを隠すために、つい叫んでしまう。


「ガハハ、初めてのキスの相手はお前かよ!」


 パメラはにっこり微笑んだ。


「そうだ、私だ」


 そして、二人は誓いのキスを交わした。ドルファは体が大きいので、だいぶ体を屈めてのキスとなった。


 口づけを終えた二人。

 パメラは堂々としたものであるが、ドルファはキスの余韻からなかなか冷めないのか、赤面したまま呼吸を荒くしている。


 これを見たカイ、ドルファに向かってこんな軽口を飛ばす。


「ドルファさん、真っ赤になってる!」


「う、うるせえ!」


 そう返すドルファの顔は、まさに湯気が出てもおかしくないほどだった。


 闘技大会では圧勝したが、キスという体験には圧倒されてしまったドルファに、会場の皆が祝福の笑みを浮かべた。


 最強の大男ドルファと、美しき女剣士パメラ。

 二人のこれからの人生に幸あれ――






~おわり~

お読み下さりありがとうございました。

少しでも楽しんで頂けたら評価・感想等頂けると嬉しいです。


他にも長編や短編を書いておりますので、よろしければ是非読んでみて下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
豪快な男の豪快な解決。これもまたありかな!
[一言] にまにましちまったぜい! さすがエタメタノールさん、面白かったです!
[良い点] まさかの噛ませ犬のセリフから、勝ち上がり、出オチ的なストーリー? まさかエタメタさんに限ってそんな、と思ったら、やっぱり最高の文句の付け所ない出来映え! アンタ最高だぜ! Σb( `・ω・…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ