第八話 移動中だからこそ緊張感ない駄弁りをたのしむべし
あーさーがーきーたー。
他の皆ほど酒を飲まなかったせいか気分も良いし、天気も最高!
夜明け前よりちょっと早く起きたから、アイリーンの寝室いけばワンチャン普段クール装ってる我が専属メイドが寝ぼけてる姿を見れる可能背が微レ存!
早起きしした時の謎の全能感と思い付きのままに素早く着替えてダッシュで部屋を出るが・・・
「いや、ノーチャンスですけど、何か?」
待ち構えてたアイリーンにアイアンクローで捕獲されて、馬車まで強制連行されました。
親しき中にも礼儀ありって事ですね。(白目)
朝こちらが出発した段階では本命は国境の街には着いていないそうだが、昨日あたりからちらほらと補給部隊の面々が集結しているらしい。
皆の見立てでは昼前には到着する見込みらしい。
早速馬車で出発するわけだが・・・はっや!こんなスピードで走らせて馬持つの?しかもスピードの割に揺れが小さい気がする
「屋敷下の街で馬を替えるから問題ありません。ちなみに揺れが小さいのは魔道具のおかげです。」
ついでに調整にはセンスが居るらしく、馬車の揺れぐらいで腕利きの魔導士を抱えられる力ある貴族か否かを見極める事ができるらしい。
「屋敷のデカさで分かってたけど、見た目以上に子爵はすげーんだな」
業務重視の為か、ちょっと屋敷と農業施設やら倉庫やらが近くてごちゃごちゃした建物の配置ではあった物の、かなり金がかかる建物だったのは分かる。
「つーか、あの大きさは辺境伯屋敷負ける一歩手前なんじゃ?」
「えーと・・・大きな誤解があるみたいですが、我々が今使ってるお屋敷は別館です。元々は迎賓館だったそうですよ」
「えっ!?」
ここで今まで全然知らんかった事実のカミングアウトが来た。迎賓館ですと!?
「じゃあ本館は?」
「丘を少し上がった場所にありますよ。館だけで我々が今使ってるお屋敷の5倍は広さがあります。」
ちなみに辺境伯屋敷は城下街の少し上の丘の上に位置している。確かに今の場所が天辺じゃないとは思ってたけど上に巨大な本館があるとは・・・。
「屋敷の規模の割に使用人が多いと思ったらそう言う事か・・・」
「辺境伯をなんだと思ってたんですか・・・もうっ」
まだ国境の街まで距離があるのでサンドイッチ食いながら雑談に花を咲かす事にする。
「しかしそんなにデカい建物あるとは知らなかったな」
「今の館や下の街からは直接見えにくい位置ですからね。本館から見たら裏山の陰に位置してるので」
「せっかく豪華なのに何でそんな見えにくい位置に?」
「全て話すと長い話になりますが・・・元々、西の国との戦いが最初に落ち着いたのが館のある丘だったそうです。」
戦線が一回膠着した段階で、先王は若き日のじーさんを辺境伯に任命することを宣言し、丘の上に敵側から見える豪華絢爛な屋敷を建築して自国の力と富を誇示したらしい。
やってる事が完全に小田原城を包囲した秀吉である。
「でも、そんなことしたら遠距離魔法で壊されるんじゃないの?」
「そこは魔法を防御する魔法もありますので、デカいからといって簡単に壊せる訳ではありません。」
かくて高地を奪ったじーさんと先王を戦局を優位に進めて領土拡大に成功したそうな・・・・
「この一件が片付いたらご案内しますね。『辺境伯なんて荷が重い』なんて言えなくなりますよ」
めっちゃ可愛いウインクしても辺境伯相続の件は納得しとらんぜよ!?しかしここで疑問が一つ。
「丘の上の豪邸って・・・実は不便じゃね?」
率直な疑問に対してアイリーンは明後日の方向を見るこて「良い景色ですね♪」なんて話を逸らす対応で応えた。
やはり、丘の上の豪邸は住みにくいらしい。