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『植物図鑑』片手に過ごす辺境伯生活  作者: とおりすがりのふに族団長
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第七話 二人目の『時渡り』の影

この世界には俺の様に異世界から来た人間(通称『時渡り』)が所持する不思議なアイテムを持って成した偉業を伝承として吟遊詩人たちが語り継いでいる。

しかしその多くは単純に新たな発明を理解できてない人々に『時渡り』扱いされたものであったりハナから作り話というのが殆どらしい。

実話を元にしているのは2つ。『聖剣を持って邪竜を打ち取った勇者』、『異形の生物を操って国を乗っ取った悪王』どちらも強力な戦闘力を持つ神器だったようだが、この二つは随分時代が違ったらしい。

だから勝手に『時渡り』は同じ世界に二人同時に現れないと思ってたけど、この状況からして今回はそうでは無いらしい。

今回の首謀者が持つアイテムは恐らく生前の世界で人気だった某RPGゲームプレイヤーが使用する『謎の容量を持つ道具袋』だと推測される。

コテージだろうが剣だろうが同じ名前のアイテムを99個入れられるという、よくよく考えたら凄いアイテムだ。

恐らく一度袋に入れたら重量関係なくなるからサイロ一杯の草も仕訳け方を変えて詰め込んだんだろう。

アイリーンとメルバーン子爵に俺の予想を説明した所、子爵は常識完全無視のこ『時渡りアイテム』の力にかなり驚いた様子だった。

「しかし、これは困った。野菜やら作物の種はどうにか『図鑑』で補填出来たけど、この量は補填できないぞ。どうにか相手から奪い返さないと」

幸いなことに非常用の干し草はあるらしいが、当然全てを賄って冬を越すことなど出来ない量なので早く回収しないと『間引き』を考えないといけなくなる。

一度システム化した物が狂うと元に戻すのは難しい。この辺境伯領の畜産も担ってるここが崩れる事は何としても阻止しないと。

「そもそもこの部隊ってどの貴族が率いてるの?」

「第一王子の直轄で実際に部隊を統率しているのは『ヒューム伯爵家』になります。」

アイリーンの詳細説明によると、国の首都からすこし北上した所に、メルバーン領とは比較にならない規模の牧場&穀倉地帯を持つ貴族であり、国軍の第二補給部隊をほぼ自前で運営している。(第一部隊は近衛部隊が兼務)

「元々は第一王子と懇意にしてる家だったのですが最近は悪評が立っていて王子との関係も微妙な物になっているそうです」

「というと?」

「奥方と世継ぎの男子が次々と病死したという事情があるとはいえ、方々から若い貴族の子女を娶ろうとしているそうです。」

そこで子爵がおずおずと手を挙手する。

「実は、当家も年齢がヴァネッサ以下の年齢の娘3人に打診が来ておりまして・・・対応に苦慮している所です・・・」

被害者が目の前に居たー。ってヴァネッサ以下って17歳以下!?

さっき出迎え来てた子たちか!?いくら貴族でも結婚には早そうな子達だったぞ!?アイリーンに視線を向けると「伯爵は50半ばですね」というから第一王子も対応困ってるだろうな。

「アイリーン。ちょっと調べたい事があるから『早紙』出してくれる?」

『早紙』とは『伯爵』以上の貴族に与えられる国の諜報部への依頼書兼回答書である。この世界の転送魔法は一般的に固定された箇所間ならさほど難易度は高くないが、片方が固定されて無いと難易度が跳ね上がるそうだ。

それを実現しているのがこの魔道具。造形としては羊皮紙に小さな宝石(魔力が込められた魔石)が埋め込まれてるだけの代物。仕組みは以下の通り。

①羊皮紙に質問書いてサインを書くと、羊皮紙が諜報部に転送される。書いた人の手元には魔石だけが残る。

②しばらくすると回答が魔石の持ち主に転送されて来る。

「はい、此方に」

小型の『アイテムボックス』から取り出した羊皮紙とペンをテーブル上に用意すると一礼して席を立って俺の後ろに立つ。

アイリーンの仕草に釣られてメルバーンまで立ち上がってピシッと直立不動になってしまう。

いや、そんなに畏まらないでと笑いそうになる自分を必死に抑えてペンを走らせる。

問い合わせ内容は『ヒューム伯爵家で勤続10年以上になる人の情報』。ヒューム伯の周囲で変化が合ったのが10年前なら、あっちの『転生者』はその辺りで彼に近づき、当主一人を残して元々居た『家族』と『部下』を残らず『始末』したんじゃないか?

ハズレたらアイリーンからキツいお小言ラッシュだけど、これに関しては確信に近いものがある。

サインをすると、羊皮紙が青い光に包まれて消えて、俺の手の中に青く光る『魔石』だけが残る。

待つこと約5分。返事の羊皮紙が転送されて来た。

「ふーん、やっぱりここ十年で長らく使えてた人間も次々と消えてる。で、残ってるのが10年くらい前から入った人間一人。今は部隊の長だってさ」

紙をアイリーンに渡して、先に国境の街に行ってるリスティへの連絡を頼む。

「どうみても日本人顔なのに『ジョージ・マケイン』とは・・・『ジョウジマ・ケイ』って所だろうな。作れるだけ草作って明日向かおう」

「どうかよろしくお願い致します!お二人の堂々たる所作、若き日の辺境伯様を思い出しましたぞ!!」

あぁ、そっち!?

「嬉しいけど複雑だなぁ。凄い人物なのは分かるけど、俺的には年甲斐無く遊んでるじーさんにしか見えないけど」

「それは昔からですよ。かくいう私も昔は・・・」

そこまで言った所で子爵が急に口ごもる。ってアイリーンの視線が大分キツい!?、子爵にアイコンタクトして一緒に倉庫に退散する。

まずは草を用意しないと。ちなみにかなり疲れたけど1週間くらいは持ちそうな牧草を出すことが出来た。

俺の能力を見て、何故かテンションアゲアゲになった子爵が夕食の席で偉い豪華な食事で俺達をもてなして上機嫌に語るもんだから嬉しいやら恥ずかしいやら。

酒が入ってからはもはや緊張感もクソもなくて、子爵家の子女の玩具にされたり、不機嫌になったアイリーンへの対応に大わらわになったり大変だった。

調子に乗ってヴァネッサは踊り始めるし・・・しかし、元々気付いてはいたけど足なっが&踊ってる間だけ色っぽい。普段アホ面晒して居眠りしまくってる姿をスマホで撮影して子爵家の皆さんに共有できないのが口惜しい限りである。

「結局また俺がおぶって部屋に連れて行くのかよ」

「残念でしたね~コブが居るせいで手が出せなくて」

結局、ほぼ全員酔っ払いになってしまったので俺がヴァネッサちゃんを送る事になった次第なんだけど・・・いやいや、そんな事しないってアイリーンも酔ってて若干面倒な人になってる(汗。

明日か明後日には補給部隊とはいえ王国軍と一戦交えるかもしれないのにこの調子で大丈夫だろうか?

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