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『植物図鑑』片手に過ごす辺境伯生活  作者: とおりすがりのふに族団長
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第三話 『辺境伯』との邂逅。どんどんスローライフから離れてる件

意識が戻ったっと思ったら、偉いデカくて豪勢な食卓で出される料理を山賊のように食い散らかしてた(;^_^Aこれは恥ずかしい。

正直腹が減り過ぎていて、今までの記憶が全く無い。

俺の前方の席には車いすに乗った老人と、それを支えるメイドさん・・しかも滅茶苦茶色っぽいエルフさん。横にはアイリーンさんが控えてて、俺の食事の世話をしてくれている。

「おや?ようやく私に気付いてくれたね。この館の主でありカイル・ヴァ―デン辺境伯だ」

「あ、片山恭介・・・いや、『キョースケ・カタヤマ』です。お見苦しい姿で申し訳ありません」

「気にしないでくれ。この国の『辺境伯』は特別でね。中央から離れているから貴族特有の舞踏会とかもあまりやらないし、私自身も貴族の生まれでは無いから他の貴族からは毛嫌いされている」

え!?そうなの?

「そうとも。元々この領地の殆どは私が若き日に先代の国王陛下と若き日の現陛下と共に隣国との戦争の結果獲得した領土でね」

40年ほど前に挑発的な小競り合いを国境沿いで仕掛けて来た隣国に対して国境警備の担当者だった若き日のカイルさんがキレて逆に相手の国境付近の村に乗り込んだ。

そこで見たあまりに酷い隣国の貴族による搾取に苦しむ人々を見かねて当時の国王に進言して征伐に動いたそうだ。

「そうして私がここを治めるようになって40年。私なりに領民に以前よりは安定した生活を提供出来たと自負している。が、連中は思ったよりしつこくてね。見ての通り私は後継者を得られぬままこの年まで来てしまった。」

カイルさんが身を粉にして戦ってきた40年に報いるために、現国王は征伐軍を編成して現在、国境の街を超えて隣国に侵攻中だそうだ。

しかし、現在起きているのは王国軍(正確には本隊から遅れて王都を出た補給部隊だそうな)による辺境伯領民への略奪行為。街であの有様だと、町や村だともっとこの混乱でダメージを受けている所が多いのではないだろうか?

「被害については部下を領内に走らせている。被害状況を把握次第、君の『時渡りの神器』の力を借りてこの事態に対処したいと考えている」

「いや、えーとこれは俺の召喚魔法でして~」

「あぁ、誤魔化しは不要だよ。実はこの世界には『前例』が合ってね。吟遊詩人たちは君たちの事を『時渡り』と呼称して物語を紡いている」

あー、なるほど。あの『転生特典レース』って定期的に行われてる行事だったのか。

「ちなみにウチのアイリーンは『時渡り伝承』の大ファンでね。キミの補佐に付けるから宜しく頼む。ひとまず部下の情報が纏まるまではアイリーンからこの世界の常識を学んでくれ。」

そういうとメイドエルフさんに連れられてカイルさんは去って行った。こっちの返事位聞いて欲しいもんである・・・もっともめっちゃ横で期待のまなざし向けて来るアイリーンさん相手に断るという選択は不可能かもしれないけどさ。


~ 一週間後 ~

「ちょっとアイリーンさんや?これは何かね?」

「はい、恭介様のお召し物になります。東方の服とは大分異なりますから着慣れないとは思いますが。辺境伯の代行を行う以上はそれなりの服を召して頂かないと」

いや、俺が言ってるのは眼前に並ぶ高級服の山では無く、机上に光る純金製のヴァ―デン辺境伯の紋章バッチの事なんですけどどどど!?後、東方の服とやらもあんまり馴染み無いですorz。

「俺はじーさんの手伝いするだけじゃなかったっけ?」

「嬉しくないのですか?食客で終わる所が辺境伯の代行ですよ!!」

そりゃ普通の人は嬉しいかもしれんけど!

「辺境伯領って滅茶苦茶広いじゃんか!?いきなりこんな領土の領主なんて荷が重いわ!!」

『辺境』って文言で侮ってたけど、領土・領民・税収どれも半端無いんですけど!?ホントにこれ一回の戦争で奪った領地なの?寧ろこれだけの土地を失った西の国とやらはよく40年も持ってるもんだと感心する。

小心者の俺としては、できればもうちょい小さい所から始めたい所存。

「その領地が今、食糧危機で崩れそうになっているんです。この危機を救えるのは恭介様の『図鑑』だけです!旦那様が後継者に考えるのは不思議な事ではないと思います」

元々『時渡り伝承マニア』のアイリーンさん、この一週間『図鑑』の能力を見て俺の株が急上昇らしく、興奮気味に持論を述べる。

確かに今回の暴挙が国王に伝われば処分はされてもかなり先の事になるだろう。事は食料の問題なだけに普通の領主さんには解決が難しいかもしれない。

「それに小さな領地からなんて仰ってますが・・・これだけの種を作れてしまう『図鑑』を持ってたら直ぐにパンクしますよ?」

一週間かけて召喚した領内各地に送る為の大量の種を仕分けしてる他のメイドさん達を指さす彼女に返す言葉が無くなる。

現物に比べて種はコストが大分低いので、概ね要望通りの数を生産出来てしまった。

「それに恭介様の体力からして農業の実労働はあまり出来ないでしょうから、労働力が一杯あるこのポジションを確保するべきです!」

目をキラキラさせながら追撃で人の弱点を抉ってくる。ええ、認めましょう。農業侮ってすいませんでしたァァァ!!

ヤケクソ気味に叫んでたらメイドさん達から五月蠅いだのイチャイチャするなだの超文句言われた。

あれ?もしかしてこの能力ってスローライフに収まらないヤバい能力なんじゃ?と思い始めたけど、あらかじめ頼んでおいたアップルパイ(当然リンゴは『図鑑』製)とアイリーンさんの淹れた紅茶が美味しすぎたので頭の隅っこに追いやった。

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