第二話 異世界生活スタート・・・と思ったらゴーストタウン!?
ゲートを通ると、そこは誰もがイメージするファンタジーって感じの世界だった。
そこそこ大きな街なのか、中央通りの石畳もちゃんと整備されてるし、道幅も大きい。
自分自身の装備を確認すると、街ゆく人たちとそんなに変わらない服にお財布(というか皮袋)。中には金貨や銀貨がそこそこ入ってるので、まずは何か買って通貨の価値を調べないと。
「さしあたっては街を一通り回ってから今日の宿を探すか!」
~ 一時間後 ~
「活気無さすぎぃぃ!!」
一時間街を歩き回った正直な感想がこれである。
ちょっとメインストリートで開いてる店が少ないと思ったら、飲食店が殆ど開いておらず、開いてる他の店ですれ違う人間は口々に物価の高さにため息と不満を漏らしている。
「何だ何だ!?もしかしていきなりハードモード搾取型の領主が治める所に転送されてしまったのか?」
情報収集するべくさらに人の会話に耳を澄ました結果、おおよその事情が分かった。
前提として、この国は現在、魔族を崇める物騒な隣国と戦争中だそうで、国王率いる大遠征軍が隣国に向かう際にかなりの食料を持って行かれて食糧難に陥っているそうだ。
この領地は国の西側に位置しており、物騒な隣国と国境を接している。
そんな地方故に、住民も行政も食料の備蓄をしていない訳では無かったのだが・・・問題は軍が通常の備蓄を貰うだけでなく、兵隊を使って田畑から作物を強引に収穫した将軍が出たせいでこの先の収穫がお先真っ暗になった事である。
何考えてるのか『勝利の後、占領地にて使う』という意味不明な理由で種まで持って行ったらしい。
その為、野菜を含む食料の生産供給の先行き不安でこの領地全体が暗い雰囲気になっていたという事らしい。
「考えようによっては俺の能力を活かすチャンス!」
問題はより良く買ってくれる相手にアピールしたい所だが、急に空腹な事を自覚する。
「そういや元々腹ペコ状態で帰宅中だったな。まずは宿決めて飯を食おう」
碌に飲食店が開いて無いので、何か食べたい一心で宿屋街へと歩みを進める。ってちょっと待った。宿屋の前に街の風景にそぐわないめっちゃ綺麗なメイドさんがおる!?
ありゃ『クラシックメイド』ってやつだな。メイドさんなんてコスプレ喫茶位でしか見た事無いからな~しかも着てるのが滅茶苦茶な金髪の美人さんだから一瞬で目を奪われた。
「っと見とれてばかりは居られない。めっちゃ男に囲まれてるじゃん!?」
ちらっと状況を観察するに、露店やってる商人とその用心棒達と言い争っているようだ。商品が野菜な辺り、色々とお察しだな。
「今が商売時という考えは理解しますが、物には限度があります!!通常の3倍以上を吹っ掛けるなんて正気ですか?しかも解凍に別料金を取るなんて」
「嫌なら買わなきゃ良いんだよ。それに解凍に金払いたく無いなら自然解凍させて食えば良いのさ!たとえアンタの主人の辺境伯にでも文句言われる筋合いはないね!!」
大分近づいたから会話が良く聞こえる。それに野菜が凍ってるのと、後ろにローブと杖装備した魔法使いらしい男も見える。
(どれどれ・・・キャベツ一個銅貨一枚(約750円)とか高過ぎぃぃ!!)
これに解凍代まで取るとか商売じゃないだろ・・・本来生ものなのに魔法で長期保存できるのが強気の秘密かな?もしかしたら特別な魔法で魔法で解凍するまでずっとそのままの可能性もありえるな。
つーか辺境伯?聞きなれない爵位だけどメイドさんの服を見る限り上等な服っぽいし貴族だよな。売り込み半分、異世界で美人にカッコつけたい半分で話に割って入る。
「メイドさん。なら俺が同じ量の野菜をこの街の皆に売ってあげるよ。もちろん標準価格でね♪」
『図鑑』を手の上に出してざっと露店に出てる野菜と同じ量の野菜を次々に出現させる。
「とりあえずお近づきのしるしに、リンゴ一個どうぞ」
突然の事態に目を白黒させてる金髪碧眼メイドさんにリンゴを手渡しする。
つーか前世で円が無い位の美人さん過ぎてマジで直視するのがキツい。
背丈は176の俺がギリ勝って感じだから170位。それで居て小顔という埒外性生命体(=リアル8等身)。最初はクールな印象を抱いたけど、リンゴ渡された時に見せてくれたキョトンとした顔は可愛かったな。
メイドさんは暫し手渡されたリンゴを眺めると、一口齧った。
『ア、アイリーンさん!(さま)』
彼女の行動に、周囲の野次馬達が声を上げる。多分彼女はこの街では有名人なんだろう。周囲からは止めるように進言する声もあるが、無視してリンゴを齧るアイリーンさん。
「ごちそうさまでした。美味しいリンゴありがとうございました。この品質なら普通に2倍でも売れるかもしれませんね」
笑顔で言われたお礼の言葉と称賛がこそばゆい。やはり慣れないことはするもんじゃ無いな。
「ど、どういたしまして。そっちのアンタも食ってみなよ」
ちょっとこれ以上アイリーンさんを直視するとさっき気付いた豊満な胸部に目が行きそうになるので、商人の護衛の一人にリンゴを投げる。
「・・・確かに信じられん位上手い。全てこの品質なら、凍らせてしまったこの野菜では相手にならんな」
正直な感想と冷凍野菜への不満を吐き出す護衛さん。
「俺も買って良いのか?」
「ちゃんと並んだらな。」
悪徳商人を無視して、アイリーンさんに手伝って貰いながら急増の八百屋さんを始めた結果、終了時にはかなり疲労したけど、商人を撤退させる事と、護衛の人達の切り離しには成功した。
その後、彼女の誘いを受けて、辺境伯のお屋敷に招かれる事になったのだが、馬車に乗り込ん暫くして、大問題が発生した。
「腹減ってるの忘れてた」
めっちゃドでかく腹を鳴らした挙句、断じて故意では無いけど・・・アイリーンさんの膝の上に乗っかった所で意識を手放してしまった。
後に皆から『ギルティ』と言われたけど、断じて違うと言いたい。何にも覚えて無いんだっつーのorz
~神様監視中~
「・・・ギルティ」
「良い事したんだから多めに見てあげましょうよ・・・ギルティ」