第十六話 図鑑能力アップの為の考察
さて、翌日からは陛下から依頼されてる被害額の算定作業が始まって居るのだが・・・ぶっちゃけまだ情報の取りまとめを屋敷の文官担当がやってる段階なのでやる事が無い。
なので昨日皆から要求されたレア果物の増産方法とか考えてみる。とはいえ図鑑使用時の消耗率は品種ごとに違うし可視化もされていないので効率的な運用は出来ていないのが実情である。
「ステータスオープン!とかいってMP見れたら楽なのに」
「恭介様・・・お疲れでしたらお部屋でお休みになりますか?」
「寝ぼけてるんだったらエリスの魔法で水ぶっ掛けてもらったら?」
可愛そうなものを見る目で優しい提案をしてくるエリスといつも通りツンの度合い強いクレア。あ、ちょっと閃いた!
「エリスって魔法得意だよな?」
「ええ、当然アイリーンさんにはとても敵いませんが」
「いや、今俺が聞きたいのは運用方法についてなんだ。その辺彼女に聞いても要領を得なくて」
何とは言っても普通の魔法なら特にMP切れとか起こさないと豪語する人間にMPやりくりの方法聞いても参考にならないのだ。
「確かに魔力は数値化が難しい物ですわね。一般的には自分の属性魔法の基礎魔法を何回連発出来るかを基準にしていますわ」
右手にソフトボール位の火の玉を出しながら説明してくれる。
「基準点を作るのか。通常の種とかを生産する時には計画立てやすくなるかな」
しかし、今一番欲しい情報は使用回数を増やす方法だ。
「と言われましても、恭介様が所望するような飲んで魔法力が回復するような薬は有りませんし・・・」
大体、体の成長が終わるのと同時に魔力量が固定されてしまって、そこから自力で回数が増えることはあまり無いそうな。
例外として、精霊等と契約することで上限を超える事が可能らしいが、契約コストや体の許容量を超える力を扱うリスクなどを考えるとお勧め出来ないらしい。
「後は緊急的に気付け薬を使うとかが有りますけど、焼け石に水ですわねぇ」
「ですなぁ」
美味しい紅茶を味わっても中々新しいアイデアは出て来ない。
「いっそのこと溢れる煩悩パワーをエネルギーにしてくれればいいのに!」
「あら大変!もしそうなったら館が果樹園になってしまいますわね」
「アンタや上級貴族の人間は三大欲求殆どMAXでみたしてるでしょーよ。そ・れ・と!いつまでも人のお尻触ってると夕飯干し肉にするわよ?」
アホな事言ったら今度はダブルツン口撃されてしまった。真っ昼間からセクハラはゴメンナサイ。それでも干し肉用意してくれるクレアちゃんマジ天使!
バカな事ばっか言ってないでちゃんと働きなさい!って真っ赤な顔で捨て台詞残して去って行くクレア。いや、まだ仕事が来ないのでこんなバカ話してるんですが。
「そしてエリスさんや?何故さっきまでクレアが居た場所に立つのでせう?紅茶のお代わりが欲しいのですが?」
「え?この場世に立てば恭介様に可愛がって頂けると聞きまして」
ダメです。キミまだ13でしょーよ。本人も当然分かってるから笑いながら離れて紅茶を淹れなおし始める。
「では魔法から一回離れてこういうのは如何でしょう?」
「古今東西あらゆる殿方にやる気を出させるのに有効な手段はただ一つ。『ご褒美』ですわ!!」
「ご褒美・・・・だと!?」
その甘い言葉の響きに浸ってる俺を他所に部屋の棚の一つから巻貝を取り出して持って来る。
「私たちメイドが毎日代わる代わる応援メッセージとご褒美を吹き込みますから、それでレア果実狙いで100個ほど作って試すと言うのは如何でしょう?」
「おぉ、なんかやる気が出そうな気がする。でも皆乗っかるかな?」
「誰も乗らないなら私の独り勝ちとして果物独り占めさせて頂きますわ」
アニメキャラ並みの決めウインクしてそんな強気な事をいうエリス。
結論から言えば。この試みでレア出現率がちょっとだけ上がった。
上昇率トップがエリスだったので、、超ドヤ顔してたけどその内容が『13歳にしては随分とおませなASMR(かなり柔らかい表現)』だと俺が自首したので、二人揃ってバケツもって廊下に立つ羽目になった。
「うーん、何で毎度毎度この屋敷は少し離れると不可思議な状況が広がってるんすか?」
国境から戻って来たリスティの呆れた声に俺は返す言葉が見当たらなかった。