第十五話 接待から久々のお茶会
「さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!異世界産高級フルーツとケーキだよ食わなきゃ損だよぉ!」
図鑑から取り出した果物は即座に処理して皿に並べて貰い、まずは予め帰還時に俺達が食べる為にと用意して貰ってたケーキ類を前面に押し出す。
館のメイドを骨抜きにしたイチゴショートと和栗モンブランの二大巨頭に殿下と側近の毒見役が衝撃を受けたように夢中になって食べ始める。
「さぁ、この美味しいケーキを作りたるはァァァ!!前辺境伯邸のシェフ夫妻のの長女。黒髪ポニテ委員長風美少女!その名はぁぁクレア」
レニー・●ートさん張りの声でこの館の厨房主たるクレアちゃんの名前を高らかに叫ぼうとしたら眉間にすっごい裏拳が突き刺さって悶絶した。
「殿下の前なんだから少しは自重しなさい!恭介様の記憶から私たちが再現した異世界のお菓子です。存分にご賞味下さい」
普段はめったにみれない営業スマイル全開で対応してるクレアに抗議の声を上げる。
「いや、これはふざけてるわけじゃ無くてね、クレアの料理の腕前を殿下一行しらしめようと・・・」
「うーん、どうせなら素材の味が強いケーキじゃ無くて夕食でアピールして欲しいんだけど・・・とゆうか何故メモに隠れ巨乳だの安産型の良いお尻だの書いてあるわけ?」
最初は照れてて可愛かったのに、手にしたメモを見られた途端にスッゴイ怖い笑顔で詰められる。
「もちろん果物も美味しいですけど・・・このクリームと台座のカステラみたいな部分の味も見事ですよ。夕飯も楽しみにさせて頂きますね」
詰められてる俺に救いの天の声ならぬ殿下の声が投下された為に、クレアちゃんの制裁から逃れた俺はテーブルに近づいて別のメイドに指示を出す。
「続いては異世界の茶葉から作った紅茶を召し上がれ。提供するのわぁ」
体をかがめて再び叫ぼうとしたらやんわりかつ有無を言わせぬ魔法パワーで次のメイドに画面外へ弾かれる俺。
俺と入れ替わって優雅な仕草で殿下の前で一礼するのは異世界なら出羽のピンク色のツインテ髪が特徴的な小柄なメイドだった。
「縁あって辺境伯様のお世話になってあります。エリスと申します。我が主の神器から作り出した茶葉となります。どうぞご賞味くださいませ。」
挨拶と同じく優雅な仕草で紅茶を淹れるエリス。なんでも名のある貴族の末子らしいのだが、望まぬ厄介な婚約関係から彼女を護るためにじーさんが引き取ってる女の子だ。
最初は俺と同じく館の客人という扱いで、アイリーンが別の仕事で俺の傍に入れない時とかにこのせかいの常識の教育係&仕事の手伝いをやってくれていたりしたが、最近俺付きのメイドとなることを選択したそうな。
「これは香りも味も良い物ですね。でも『図鑑』から加工品は作れない以上。一から作るのは手間だったでしょう?」
「はい、さらに恭介様と来たら『何がケーキに合うかわからんから適当に試してみて』言って数十種類の茶葉を私とクレアさんに丸投げされてしまったのでそれはそれは苦労しましたわ」
そういえば葉っぱから紅茶にする過程の苦労をスッパリ抜け落ちてたから紅茶の知ってる名前適当に『図鑑』から生成して二人に丸投げした記憶が蘇る。
俺がエリスに平伏してお小言と代金と言う名の欲しい物メモ(買い物行く日時指定済み)を受け取ってる間に果物を処理し終えたクレアが盛り付けた皿をヴァネッサとアイリーンが皆さんに配って茶会が始まっていた。
「このイチゴのケーキすっごく美味しい!もっと食べたーい」
「今日はあんまり数が無いからダメ!今度たくさん作ってあげるから」
ブーブー文句を言ってるヴァネッサを制するクレア。おや?いつの間にか殿下の前に家臣の列が
「殿下・・・・長らくお世話になりました。ちょっと暇を頂いて再就職したい先が出来まして(キリッ」
「いや、キミたち近衛入った時点で終身雇用だから」
声にならない悲鳴を上げる一同。大丈夫か?王国近衛兵・・・
その後も目まぐるしくぎゃいのぎゃいの騒いでクレアが夕飯の準備あるからと撤収を宣言するまで続いた。
形としては殿下への接待だが、久々に皆とおバカなやり取りしてお茶とお菓子楽しめて良かった。
「問題はレア果物のストックが無くなったことだけどまあいい『早急に対策して下さい!』」
満場一致で言われてしまったので早急な対策が必要らしい。