第十一話 王の手紙と後始末
渡された手紙の封をナイフで切って中身を確認する。
前世では全く偉い人から手紙を受け取るなんて機会は無かったから相手がこの場に居るわけでも無いのに緊張する。
「どれどれ、どんな事が書かれているのかな・・・」
こらこらアイリーンとリスティさんや、後ろからのぞき込もうとするんじゃありません。
見せないように避けようかとも思ったけどその必要は無かった。あまりにも文章が短かったからだ。
定型の挨拶文が終わると指示が2つ。
ひとつめは街にいる被害者の対応は王国軍が行うので引き継いでほしいとの事。
ふたつめは屋敷に戻って今回の事態に関する損害額を算定されたしとの事。
読み終えるなり、街の門から数名の王国軍の兵士さんが姿を見せた。
屋敷下の街でも王国軍の兵士を見かけたことが有るけど、彼らとは纏ってる雰囲気と鎧の装飾が違う。
「はい、恭介様が考えている通り、彼らは王家直属の近衛騎士です」
聞かなくても補足してくれるアイリーンはマジ有能。これだけ手回し早いという事は向こうもこの件には疑念を持って網を張ってたか。
俺が求めた情報とリスティの動きをチェックしてればこのタイミングで近衛が出て来る素早さも納得できる。
「リスティ、ここは任せて良い?」
「良いッスけど・・・ちゃんとイチゴ一杯用意して下さいよー!!」
近衛騎士さん達にリスティを預けて国王陛下からの指示通り屋敷に戻るべく馬車にUターンする。
「所でアイリーンさんや?」
「なんでしょうか?」
「近衛騎士の隊長さんが俺の事を『代行』呼びしなかったんだけど・・・どういうこと?」
「詳細は良く分かりませんが、既に陛下と先代の間で話がついていたようですね。」
お祝いの言葉必要ですか?などどいうアイリーンの言葉に耳を塞いで聞こえないフリしつつ、辺境伯就任イベントを回避する手段が何かないかない頭を回転させる俺であった。
「しかし『ジョージ』先輩はこれからあの近衛兵達から取り調べ受けるのか・・・キツそうだなぁ」
だが。簡単に現状を覆す策など簡単に思いつくはずも無く、ただの雑談を始めてしまう俺。
「いえ、確かに彼らの取り調べは厳しい物でしょうが、私はリスティの方が厳しいと思いますよ」
「マジで!?」
意外な意見にビックリする。確かに辺境伯屋敷の用心棒的なポジションだから強いとは思ってたけど、軍人より評価が上とは・・・
「直接見た事はありませんが、彼女がこの領地に来て以来というもの、スパイや重犯罪が劇的に減ったのは数字でハッキリしています」
その数字たるや来る前と比較して50%!?一人でそんなに抑止力になるとかおかしいだろ!?
「背景には少し前までは年老いた上に世継ぎが決まっていなかった先代様を狙おうと考える勢力が多かったみたいです」
いや、過去形で言ってるけど世継ぎはまだ決まって無いんじゃないですかね!!(切実)
獣人の中でもレアな狼タイプの高い戦闘力を持つ彼女は戦闘の他に、相手の口を割らせるのが上手いそうな。
「強いのは分かってるつもりだったけど意外だったなぁ」
「昔はもっと尖ってましたから、最近のリスティの姿には驚きですよ」
その後はしばし尖ってた頃のリスティ談義で花を咲かせた。
後にリスティをこのネタで弄ったら、報復として尖ってた頃のアイリーンネタが提供されて地獄の争いが勃発してのはご愛敬。