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『植物図鑑』片手に過ごす辺境伯生活  作者: とおりすがりのふに族団長
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第一話『転生特典レース』

俺の名前は片山恭介。年齢20の普通の大学生である・・・いや、正確には『だった』と言う方が正しいか。

何故なら俺は、ついさっき交通事故で死んだのである。

青信号を渡ってたら、暴走トラックが突入という異世界転生作品のテンプレートな死に方をしてしまった。いや、情けない事に全く動けなかった。

起きてしまったことはどうしようも無いとして、問題は俺が置かれている状況である。

ついさっきまで体の感触が無い、曖昧な感じだったのにいきなり五感が回復している。ケガもなさそうだ・・・

一瞬、『大きなケガせずに助かったでは?』等という甘い考えが過るが、前方で我先に前に進もうとダッシュしている方々の頭にある輪っかがその考えを否定する。

自分の頭部は見えないがおそらく俺も彼らとと同じく頭の上に死人の証(?)と思しき輪っかが付いているのだろう。

「そういや、みんな我先に前に行って・・・何を争ってるんだ?」

よくよく見ると、前方には机が並べられており、その上に置かれた武器や防具や本を皆が奪いあっている。

気に入った物を取ったやつは順次さらに奥に設置されているアニメでしか見た事無い転送ゲートっぽい所に向かって、ニコニコ笑顔の天使さんの案内でゲートから姿を消して行く。

「モシモシ、片山恭介さん?あなたも早く行かないと良い特典が無くなりますよ?それとも説明受けてませんか?」

争いに参加していない俺が気になったのか、天使さんの一人が声を掛けてくれた。

「わざわざありがとうございます。確かに説明は受けて無いんですけど、状況は見れば大体わかりますよ。皆、より良い『転生特典』を争ってるんですよね?」

「その通りです。しかし説明が無かったとは災難でしたね・・・というか分かってて行かないんですか?」

ビックリしてる天使さん。

「いや、人数分無いってことは無いと思うんで。『余り物には福がある』作戦で行こうと思ってます」

「確かに人数分有りますけど・・・こんな人初めてですよ」

そりゃカッコ良さげな剣や槍とか銃とか気になるけど、平和に生きてた俺にはどうせ扱えないだろうし、皆の様子をみるに武器系が残る可能性は低いので、魔導書や道具系が残る確率が高いと踏んでいる。

~5分経過~

俺を除く全員が『特典』を持ってゲート前に並んだので、俺も机の前に進む。

最初は人が多くて気が付かなかったが、なんか天使さんと比べて明らかに違うオーラ纏ってる人・・・ではなくおそらくは『神様』の前に立つ。

最後だからか手渡すつもりなのか、その手には『特典』と思しき本が有る。

「おう、若いの!20で交通事故とは災難だったな。これがお前さんの『特典』だ。残り物とはいえ立派な『神のアイテム』だからしっかり使いな!!」

がっしりとした手で俺の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でて『特典』を渡して来る。

「『植物図鑑』ですか?」

渡された本・・・というか『図鑑』のタイトルをそのまんま読み上げる。『植物図鑑』って聞くと一瞬ガッカリしそうになるけれど、異世界で使える確かな知識が有るというのは有難い。草も生えない荒れた土地に行かない限り、食べれる植物が分かれば大抵は何とかなるはずだ。最低でも毒草を自分で積むことも無いだろう。

「勿論ただの図鑑じゃないぜ。詳しくは『ヘルプ機能』を参照しな。転生先では達者に生きろよ!」

神様から励ましの言葉を貰ってちょっと感激・・・おっと、天使さんがゲートの列への移動を促してくれたので神様に一礼して列に並ぶ。

自分の番を待ちながらヘルプ機能を使用して、この『植物図鑑』の機能を把握する。

何でもこの『図鑑』は俺が元々住んでいた世界に存在する全ての植物を網羅しているそうで、俺の体力を引き換え(消費量は植物のレア度による)にして種or実物を召喚することが可能。

育成方法も基本的には記載されており、多少気候が本来の条件と違っても高い確率で育ってくれるらしい。

上手く使えば、異世界スローライフを実現できそうなアイテムでテンション上がる。なんで売れ残ったんだろ?タイトルからしてただの『図鑑』と判断されたのかな?

確かに図鑑から種や現物取り出せるなんて思わないよな。この辺りは神様のイタズラ心なのかな?

尚、行った世界の植物に関しては、一定の量を『蒐集』する事で『図鑑』に登録できるそうだ。

普通の野菜を作るのは低コストで行けるみたいだから、余程酷い場所じゃない限りは第二の人生即終了ってことは無さそうで安心した。

図鑑の機能把握に勤しんでたら、まだまだ先だと思っていた順番があっという間に来た。

「それではこのゲートをくぐり抜けたら貴方の新しい世界です。貴方の新しい人生が良い物になる事を祈っています」

「ありがとうございます。それでは ノシ」

天使さんに手を振ってゲートをくぐる。はてさて、どんな世界が待っているのやら。

~転生者が居なくなった会場~

「これで終いか・・・何時もの事だが、どうしようもない連中ばっかりだったな」

ゲートを見ながら『不慮の死を遂げた人を転生させる』業務を担当している『神』は嘆息する。

「強い武器を欲しがるのは自由だけど、それを手にしたら相応に修羅の世界に送られるって発想は無いのかね?」

「ちょくちょく居ますよね、強い武器を手に入れて、数日で通常の『転生』する羽目になる人」

天使が相槌を打つ。実際、己の実力と『特典』のバランスを取れなかったばかりに、転生早々に無茶をして『普通の転生』をする人間は後を絶たない。

「後、悪行の限り尽くして普通に『地獄送り』になる奴。『死後』の世界を体験した上にやり直しというアドバンテージ得てるというのに・・・」

「まぁ、『地獄』云々はここの業務管轄外なので一々説明されませんからね。」

「説明なくても想像くらいしてもよさそうだけどな・・・その点、さっきの小僧はちょっとだけ他よりマシだったな」

「それですよ!それ!!良いんですか?一人だけ頭撫でた時に『加護』なんて与えて」

「大した『加護』じゃないから大丈夫だよ。『特典』を争わない人間なんて珍しいからな。暇つぶしにアイツの行き先の映像見ながら次の『特典』作りに取り掛かるか」

「はぁ・・・貴方様に与えられた権限内の事だから五月蠅く言いませんけどね」

ジト目で自信を見る天使を無視して『神』は自分の仕事に取り掛かった。

ウィキペ●ィアにも書かれてますが、『辺境伯』って田舎の力があまり無い貴族だと思ってました(;^_^A

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