第八話 寝る子は育つ
どうも、海か山なら断然海派のピーマンです。
最近日々虫が多くなってきてとても嫌ですね。私は何よりも蜂が苦手で、近くを跳ぼうものならパニックになって猛ダッシュしてしまうレベルです。
今回はそんな虫に関するお話です。みんなの憧れ、カブトムシを捕まえに行くと言う謎の展開からみんなの成長、謎に包まれたラムダの強さが明らかになってくるでしょう。それでは本編どうぞ。
第八話 寝る子は育つ
墓地での一件を片付けた勇者一行は自分たちの目的をようやく思い出し動き出そうとしていた。
ギルベルト「よし、行くぞ!カブトムシが俺たちを待っている!」
エルザ「ほら、ちゃんと日焼け止めと虫除けスプレーもしないと大変なことになるわよ」
ラムダ「うゆ…ありがと〜」
勇者「エルザはすっかりラムダの世話焼きになったなw魔王軍のスパイだとか言ってたのに。
あと、それはあんまり塗りすぎだぞ」
エルザ「は?こんなに可愛い子が魔王軍のスパイなわけないじゃない。何言ってんの?」
勇者「え(記憶から抹消してる?!)」
一行は魔王討伐…ではなく、森へカブト狩りに行く所だった…
虫籠、虫とり網、麦わら帽子とフル装備でそれはもう少年のような…はぁ。
森の中
ギルベルト「おーいそこ気をつけろよ〜うんこあるぞ」
エルザ「うわ!もっと早く言いなさいよ!」
ギルベルト「踏んだ?wくっせ〜ww」
エルザ「殺す…」
勇者「まあまあ、落ち着けって」
ラムダ「うんこを踏むと運がつくって言いますよ?よかったですね!w」
エルザ「ラムダ、あんたもあのクソの味方ってわけ?」
ラムダ「私は皆さんの味方なので!あくさっ」
エルザ「あんたたち〜待ちなさい!」
ワーワーワー
勇者「まったく、おーい目的を忘れてないかー?カブトムシをとるんじゃなかったの…か…」
ズシン…ズシン…
ワーワーやっていた3人の後ろにやってきた何かを見て勇者は固まってしまった。
???「キャッキャキャッキャうるさいなぁクソ人間ども」
騒いでいた3人もその場で固まり、声の主を見上げる。
そこには3メートル以上はあるだろう巨大なカブトムシが腕を組んで立っていた。
ギルベルト「あー……走れ!」
その号令で一斉にその場から逃げ出した勇者一行をすごい速さでおってくる巨大カブトムシ。
巨大カブト「この俺様から本気で逃げ切れると思っているのか?」
ギルベルト「ぎゃー!きもいきもいきもい!虫の裏側あんな近くで見るなんて最悪だー!!」
勇者「そこ!?」
エルザ「てゆーか何で逃げてんの?ぶっ倒しちゃえばよくない?」
ギルベルト「考えてみろ!あんなの倒したら飛び散った虫のエキスを全身で受ける事になるんだぞ!」
エルザとラムダは顔が真っ青になり顔が引きつった。
エルザ「…よし逃げよう」
勇者「勇者の仲間ともあろうものが虫なんかでビビってどーする!こんなんじゃ魔王を倒すなんて……あ!!そうだ…俺たちは魔王を倒しに行かないとなのに…なのに!何でこんなとこで虫とりなんてしてんだぁぁ!!」
ギルベルト「チッ!気づきやがったか…」
勇者「お前わかってたのか?!」
ギルベルト「何のことでしょー」
勇者「うぅ…はぁ…もういい、この話は後だ!今はあいつを片付けて早く魔王の元へ!」
勇者は立ち止まり剣を構えた。
ギルベルト「後は任せたー!」
エルザ「あんたの事は忘れない!」
ラムダ「短い間でしたがお世話になりました…ぐすん…」
勇者「ちょ、おーい!!」
巨大カブト「えーっと…その〜…ドンマイ…」
勇者「……」
うつむいた勇者の目には涙が光っていた…
巨大カブト「あの…」
勇者「巨大カブトよ!勇者の名において、今ここで成敗してくれる!」
巨大カブト「今日はもうやめといた方がいいんじゃないか?」
勇者「うるさい!優しくするんじゃねぇ!行くぞ!」
巨大カブト「お、おう…よし、来るがいい!人間!」
勇者「瞬身流剣術、瞬閃!」
この技は一気に相手を切り抜ける瞬身流の必殺技である。
しかし…
勇者「か、かたい…!」
巨大カブト「フッフッフ、痒いねぇ」
ドゴッ!
勇者「がっ…!」
巨大カブトの右フックがキレイに入りぶっ飛ばされた勇者。
それを追って歩み寄る巨大カブト。
巨大カブト「もうへばってるんじゃないだろうな?」
勇者「へっまさか…(くそっ!肋骨が折れたか…でも、こんなところで負けるわけには…)」
巨大カブト「そうか、死ね…」
巨大カブトが右足を振り下ろそうとしたその時!
エルザ「やれやれ、何へばってんのよ!」
巨大カブト「あ?うっ!」
巨大カブトの左頬にエルザの拳が入りズザザっと少し移動したが、そこまでダメージはないようだ。
勇者「エルザ!」
エルザ「そ、その…流石に1人置いて行ったのは…悪かったわよ…
それはそれとして、何なのあの硬さ!」
勇者「ああ、俺の剣も全然きいてなかった!」
ラムダ「エルザさーん、置いてかないでくださいよー
あ、アレフさんごめんなさい」
ギルベルト「仕方なく戻ってやったぞー」
勇者「ラムダ!ギルベルト!うぅ…戻ってくれたんだな…」
巨大カブト「腰抜けどもが戻ってきたか。いいだろう、まとめて相手してやる!」
エルザ「アレフ、一点集中で行くわよ!」
勇者「りょうかい!瞬身流剣術、瞬き六閃!」
エルザ「瞬身流拳術、瞬突!」
勇者の剣で交差した切り傷の重なった一点をエルザが渾身の一撃で貫く作戦。2人息のあったコンビネーションが巨大カブトの硬い装甲にヒビを入れた!
巨大カブト「ぐっ…!なかなかやるようだな…だが、もうこんなチャンスは来ないさ」
勇者「なに!同じところをもう一度攻撃すればいいだけの話だ!」
巨大カブト「わかってないな…なぜこんな攻撃が通ったか、わからないのか?」
エルザ「確かにキレイに決まりすぎだ…何の妨害も入らずに…!」
巨大カブト「そうだ、俺がお前らの策に乗ってやっただけ」
勇者「くそっ!余裕ぶりやがって!エルザ、もう一度だ!」
エルザ「おう!」
勇者とエルザはもう一度攻撃を仕掛けたが、いとも簡単に止められてしまった。
勇者「なにっ!」
エルザ「うおぉぉ!!」
エルザも飛びかかったが前足で止められ、中足で飛ばされる。
巨大カブトの厄介なところが、4本の足。攻撃と防御を同時に行えるこの足は外側のギザギザで切りつけることもできる。
エルザ「ぐっ…!なんて威力…」
ラムダ「……アボガドロボイル!」
巨大カブト「え?うぐぅおぉぉぉお!!」
エルザ「え?」
勇者「え?」
ギルベルト「え?」
ラムダがいきなり放った魔法は巨大カブトを爆破し、そのまま燃やしてしまった。
巨大カブトはなんとか火を消したが、大ダメージを受けてしまった。
巨大カブト「はぁ、はぁ、はぁ、何なんだお前はぁぁ!」
巨大カブトが血眼でラムダに襲い掛かる!
ラムダ「うわわ!こっちくるなぁぁ!!」
勇者「エルザ!火だ!コイツの弱点は火だ!」
ラムダの元へ向かいながら勇者が叫ぶ。
エルザ「そのようね!」
勇者「アクセルホッパー!!」
勇者の手元に聖剣アクセルホッパーが現れる。
勇者「瞬身流、炎瞬閃!」
勇者はアクセルホッパーに魔力を貯め、引き金を引き、放つ居合は摩擦によって炎を生み切り口を燃やす!
巨大カブト「ぬぅおぉぉお!!」
勇者「畳み掛けろ!」
エルザ「瞬身流、炎舞龍頭拳!」
エルザは舞うと炎が螺旋状に身体の周りに集まりそれはやがて拳の方へ移動して龍の頭となって巨大カブトへ!
巨大カブト「ゔあぁぁああ!!ぢぐじょおお!!」
エルザ「ふぅ、結構強かったわね…それが聖剣?」
勇者「おつかれ…うん、聖剣アクセルホッパー。呼び出せばいつでも手元に来るんだ」
エルザ「へぇ便利なもんね」
勇者「エルザもさっきの技、あんなの瞬身流にあった?」
エルザ「へへん!これはオリジナル。魔力の流れを舞う事で操る高等技術よ!」
勇者「すごいな!流石師範の娘だ」
巨大カブト「ああ、確かに効いたぜ…」
ゾクッ!
振り向くと巨大カブトが無傷で立っている。
エルザ「ありえない…無傷だなんて…」
勇者「いや、それよりも…でかくなってる…」
巨大カブトは5メートルほどに大きくなっており、ニヤリと笑うと前足を大きく振りかぶり攻撃してきた。
その威力は木々が生い茂った森に一本の道ができるほどだった。
勇者「大丈夫か!」
エルザ「ええ!ラムダも無事!ギルベルトは?」
左右に飛び退いた勇者とエルザはなんとか攻撃を躱していた。
勇者「ギルベルトも…あれ…」
エルザ「嘘でしょ…」
ラムダ「オーマイガ…」
勇者「ギルベルトォォオオ!!」
巨大カブト「はっはっは!1人だけだったか、残念」
勇者「くっ!炎瞬閃!」
エルザ「ラムダ!あの変な魔法もう1発お願い!」
ラムダ「え!あの、ギルベルトさんは大丈夫なんですか?!」
エルザ「あいつは大丈夫!あんくらいでくたばる奴じゃないから!」
ラムダ「わ、わかりました!ただ詠唱に時間がかかります!その間持ち堪えてください!」
エルザ「おっけー!」
巨大カブト「またあの訳のわからん呪文を使う気か!させる訳ないだろう!」
巨大カブトはラムダに向かって突っ込んでくる。
エルザ「それを止めるのが!」
勇者「俺たちだ!」
巨大カブト「どけぇぇえ!」
なんとか食い止めれはするもののダメージは与えられていないようだ。こちらが2人がかりでも相手は足が6本の昆虫だ。アドバンテージを稼げない。さらに硬くなった甲殻のせいで燃やすことも難しい。
ラムダ「…あの愚か者に天罰を、アボガドロボイル!」
巨大カブト「ぐはぁっ!ぬぅぅう…厄介な…」
ラムダの魔法は確実に当たる恐ろしい魔法で破壊力も抜群。人に使うと…恐ろしい…
勇者「いいぞ!ヒビが入った!あそこを狙え!」
エルザ「ナイスラムダ!一気に畳み掛け…」
言い終わる前、一瞬気を抜いたその一瞬を巨大カブトは見逃さなかった。
先ほどギルベルトを吹っ飛ばした威力ほどでは無いがもろに食らったエルザはもう戦闘不能だ。
エルザ「ぐっ…!油断した…」
ラムダ「エルザさん!」
勇者「エルザ!!くそぉぉおお!」
巨大カブト「そんなヤケクソになったらせっかくの実力が台無しだぜ〜」
しかし勇者は意外と冷静で巨大カブトの攻撃をちゃんと見切れていた。
激しい攻防が繰り広げられるが、勇者の攻撃は対して効かないのに対して巨大カブトの攻撃は一撃必殺になりうる。
巨大カブト「もう諦めて帰るなら見逃してやってもいいぜ」
勇者「くっ!バカにするなぁぁ!!」
巨大カブト「はっ!そーゆー所だよなぁ人間の弱い所はよ!」
勇者「なっ!かはっ…(意識が…)」
激情に駆られた隙をつかれ、吹っ飛ばされた勇者は木にぶち当たり意識を持っていかれそうになる。
巨大カブト「まあ、すぐ楽にしてやる」
巨大カブトは自分の角でとどめを刺そうとする。とそこへ…
ギルベルト「ほんともっと言ってやってくんないかなぁ」
戻ってきたギルベルトが巨大カブトの角を切り落とした。
巨大カブト「きゃあぁぁあ!!」
ギルベルト「おい、大丈夫か?」
勇者「あ…ああ…何とか…」
ギルベルト「だから逃げた方がいいって言ったろ?魔王討伐もまだ力不足だ…」
巨大カブト「うおらぁ!!」
ギルベルトが話してる途中で巨大カブトは容赦なく攻撃してきたが、ギルベルトはバールで受け止めた。
ギルベルト「まだ話してる途中でしょうが!」
ギルベルトはバールで攻撃、巨大カブトはそれを前足で受け止めたが、それは失敗だった。
メシッという音と共に足は折れ、胴体まで届き、硬い装甲を砕いた。
巨大カブト「ぐあぁぁあ!!な、何だお前は!何なんだ!本当に人間か?!化け物が!」
ギルベルト「どっからどー見ても人間でしょうが!大体化け物って言うなら断然お前の方が…」
巨大カブト「うおぉぉぉおお!!」
巨大カブトは突進してきた!角は斬られてしまったが、頭部は他の部分よりも硬く、突進は必殺技と言っても過言ではない!
ギルベルト「うおっ」
ギルベルトはバールで受け止めたが、どんどん押されてみんなと離れていく。
巨大カブト「このままお前が死ぬまでどこまでも押し進んでやるぜぇ!!!」
ギルベルト「だからぁ…まだ話してる途中でしょが!」
巨大カブトの頭を地面に叩きつけて突進を終わらせた。
巨大カブト「く、くそぉ…」
ギルベルト「さあ、ちゃんととどめ刺しとかないとな…とどめの前に、お前…なんでそんな体になった?」
巨大カブト「はっ…殺せ…」
ギルベルト「そうか…お前魔人だろ」
巨大カブト「な、なぜわかった…はあ…バレてるんなら隠しても仕方ないな…俺は元々普通のカブトムシだった…
そこらのカブトムシよりは断然強かったが、ある日変な人間に捕まっちまった。そいつは黒いフードを深々とかぶってたから顔はわからなかったが、怪しい奴だった。そいつに言われたんだ、「今のままで満足か?」ってな。そしたら意識が朦朧としてきて…気がついたらこうなってたのさ」
ギルベルト「なるほどな…じゃあその黒フードのやつがいろんな生き物をテキトーに魔人化させてるって事か…何のためにそんな事を…」
巨大カブト「さあな…さあ、知ってることは話したぜ、殺してくれ」
ギルベルト「まあ聞けること聞いたし、これから悪さしないってんなら見逃してやるぜ」
巨大カブト「ふっ…もういい…こんな身体じゃ俺に居場所はないからな…殺してくれ」
ギルベルト「そうか…わかった」
そう言うとギルベルトはバールで巨大カブトの頭を叩き割った。
そして巨大カブトの装甲を剥がし、便利袋に収納した。
ギルベルト「…せめてお前の身体は有効活用させてもらうぜ…
あー風呂入りたい」
巨大カブトムシ討伐完了
つづく
次回予告
ボートレースに有金全部賭けてしまった勇者。仲間の反対を押し切ってまで賭けたのは底知れない理由があった…訳ではなく、賭博の魔女に賭けずにはいられない体にされてしまっていたのだ!果たして勇者は自分を取り戻せるのか!?賭けには勝てるのか!?
次回「気づいたらホームレス」
お楽しみに
※この次回予告は本編と違う場合がございます。
お疲れ様でした。今回の話はまた突拍子もない話になってしまいましたが、ちゃんと今後につながる重要な話となっております。もちろん無駄も多いですが…
ここでラムダの強さですが、彼女は教会に引き取られてから、教会の仕事は真面目にせず、自分の好きなように魔法を使う事に熱中していました。その過程でなんかできちゃったのが今使っている魔法です。これは元からあった魔法の才能と発想力によって成された奇跡のような技で、他の人には真似できない唯一無二の魔法と言えるでしょう。ちなみに詠唱に時間が…と言っていますが、ラムダの魔法は詠唱が必要ありません。あくまで自分のイメージをより明確にするため、今回は詠唱していましたが、やろうと思えばポンと出せるのです。本人はこの凄さに気づいてないですが、これからも続々と新しい魔法が登場していく事でしょう。
それではこの辺でまた次回、ばいばい。