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ヒョウアザラシ作戦2

【1943年 9月 3日 イタリア本土】


北アフリカ戦線から叩き出され、シチリア島まで奪われ、負けに負けたムッソリーニ率いるイタリア王国についに連合軍が上陸してきた。この状況に対して国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世から解任を言い渡されたムッソリーニの後任であるピエトロ・バドリオ元帥率いるイタリア新政権は連合国に対し秘密休戦協定を結んで寝返りを警戒するドイツを出し抜こうとした。


しかし連合軍総司令官ドワイト・アイゼンハワーがイタリアに無断でイタリアの無条件降伏を発表した。この発表に対してドイツ総統アドルフ=ヒトラーは同盟国の裏切りに激怒。ドイツ軍に対してイタリアの占領を命令した。ドイツ軍は直ちに北イタリアに侵攻し、電撃的に首都ローマなどの要所を占領していった。


また9月12日にはオットー=スコルツェニー率いる第502SS猟兵大隊がムッソリーニを奪還。ムッソリーニはイタリア北部で、ドイツの傀儡政権「イタリア社会共和国」を樹立し、同地域はドイツの支配下に入る。一方、南部のバドリオ政権は10月13日にドイツへ宣戦布告した。こうしてイタリアは終戦まで内戦が続くことになる。


こうして欧州で大きく戦況が動いている時、南極でも大きく事は進んでいた。



1939年9月から始まった南極の事業は世界大戦の戦況悪化から当初の今次大戦の勝利のための資源開発を目的とする開拓事業から、ドイツの敗北を前提とした次のドイツを建国する「戦後計画」に大きく軌道変更された。結果的にドイツ首脳部を含むドイツそのものの疎開作戦である「ヒョウアザラシ作戦」は成功したものの、この時点ではまだ国家そのものの疎開にはまだ大きな課題が残されていた。


まずひとつはノイシュバーベンラントへの輸送問題である。制海権はすでに米英艦隊に抑えられており、1942年2月の時点でフランスのブレスト港にいたドイツの巡洋戦艦シャルンホルスト、グナイゼナウ、重巡洋艦プリンツ・オイゲンなどが、フランスの基地にいるドイツ空軍の航空支援を受けドーバー海峡を通ってドイツ本国へ帰還してしまい、大型水上艦で大西洋に出撃できるのは1939年12月13日にラプラタ川河口沖で敵艦隊に捕捉され、小破しながらも南極の秘密基地(ノイハンブルク港)まで逃げ延びたアドミラル・グラーフ・シュペーだけであった。


逃げ切ったシュペーはその後もノイシュバーベンラントで精製した重油や食料などを積み込み何度か出撃したものの、40年5月に新型の戦艦ビスマルクが英艦隊により撃沈され、アドルフ・ヒトラーはビスマルクの損失とノルウェーへの反攻の脅威により主力艦の撤退を促され、上記の3艦の本国撤退を皮切りにシュペーもノイハンブルク港に引きこもることとなったのだ。


またドイツ海軍希望の星であるカール=デーニッツ提督率いるUボート艦隊も42年にはレーダーによる電子戦や護衛空母の投入、諜報戦の徹底など様々な対策を行った連合軍によって大西洋の戦いはUボート部隊に不利となっていった。


このような情勢下にどうやってドイツ本国から南極までの輸送路を切り開くのかという問題はボルマン達一部の政府首脳は頭を悩ませていた。頭を悩ませていた彼らに解決策を提案したのは、シュタインハイムでとあるものの研究とその副産物品の生産などを監督していたハンス=カムラー親衛隊少将であった。


カムラー親衛隊少将が提示した解決策とは『瞬間資源移送機』である。


瞬間資源移送機は1942年2月にバーデン=ヴュルテンベルク州に墜落した宇宙船の性能に目をつけた空軍がこの宇宙船を元にした新型戦闘機の研究開発を進めるため、べライヒ88空軍基地に収容されていた「彼ら」の情報収集を行っていた過程で彼らの船は星間物資輸送において、ワープ航法によって往路に要する時間やエネルギーを省略しているとの証言から空軍と共に宇宙船の研究を行っていた親衛隊所属の研究者であるゲシュタム博士が開発した転送装置が元になっている。


原理としては宇宙船の主機を一時的に過負荷状態で駆動させ、主機の外部に次元の重複領域を拡張し、それを物質転送波として2基で1組の複眼状のレンズを持つ発生器からワープさせたい物体に照射することによってワープを可能にするというものである。また照射された光線が交わった範囲が、ワープ可能エリアとなる。光線のエリア内にある対象物を任意の場所に転送可能であった。


当初この転送装置を空軍基地に設置して出撃した攻撃隊に物質転送波を照射。攻撃隊の存在を秘匿して敵の迎撃を受けずに無傷のまま完璧な奇襲攻撃が行え、さらに往路に要する時間や燃料を省略できるため、行動半径や攻撃の機会の拡大も見込めた。圧倒的に優位な作戦展開が可能であるとされた。


しかし味方を送り出すことはできても、連れ戻すことはできないことや退路もなく敵の眼前に移送された戦力が反撃で撃破される危険も大きいなどのデメリットも存在した。またコア部分が墜落した宇宙船の主機6基のみであり、航空基地に大量に配備することが難しいことからこの計画は破棄された。


代わりに送受信地点としての転送装置である瞬間資源移送機に開発計画がシフトされた。瞬間資源移送機は送信地点で物質を非物質化して転送ビームに乗せて遠隔地に送り、受信地点で再び物質化するところまでは元となった転送装置と同様だが、変更点として貨物ばかりか、人間でさえ生きたままで一瞬に送ることができるようになった。のちにこのワープ航法は開発したゲシュタム博士の名から『ゲシュタム・スプリンゲン』と呼ばれるようになった。


こうしてカムラー親衛隊少将によって提示された瞬間資源移送機は封鎖突破船や潜水艦による鼠輸送などによって行われていたドイツ=ノイシュバーベンラント間の輸送効率は大幅に向上させ、今までより多くの資産や科学者、移民が新たな「祖国」へと渡っていった。また二つ目の問題に対処する戦力の増強にも大いに役立つことになる。

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