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未来ノート ~幼馴染の甘くて痛い、不明瞭な感情~  作者: 餅月兎
第一章 清水伶香は砂糖のように……。
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勝手な解釈と過去バナ

 昼食の時間になった。


 巧と食堂で昼食をとることになっている熱海は、五限目の授業の準備をしてから食堂に向かった。


「おーっす」


 巧が食堂の席から笑顔で手を振ってくる。今日は朝も笑顔だったが、何かいいことでもあったのだろうか。


「どうした。そんなに笑顔で」

「いやまあまずは、飯頼んで来い」


 気持ちの悪いぐらいニコニコしている。巧に言われ、わけのわからないままいつもどおり日替わり定食を頼む。今日はとんかつだ。


「はいはい。頼んできましたよ」

「まぁ座れって」

「もう座ってますが」


 何がしたいのか、ふざける巧。


「まず――」

「待て巧」


 調子のいい話が勝手に進む前に止めておく。


「ん?」

「んじゃなくて、なんなの? いったい」

「何って何が?」


 しらばくれる巧。


「なんでそんなに笑顔なんだ? それに、朝の『頑張れ』もどういう意味だよ」

「なんだまだ朝のことを」


 巧は呆れ顔をする。


「なんだじゃないだろ」

「そうならそうだと言ってくれればよかったのに」

「だから、なんの話をしているんだっての」


 巧は勿体ぶりながらも真剣な面持ちになる。


「熱海……」

「なんだよ……」

「清水さんのこと好きなんだろ?」


 巧はこういう奴だ。熱海は呆れてしまう。


「巧はいつもそれだな。何かと」

「あれ? 違った?」

「なんでそう思うんだよ」

「朝話かけようとしてたろ?」


 単純な巧はちょっとしたことで勝手に解釈してしまう。たまに冗談なのかわからないこともあるが。


「それだけで好意を持ってると思う巧は幸せ者だな。巧に話しかけてくるやつみんな巧のことが好きになっちまうだろ」

「それとこれとは違うだろ……。まぁ違うならしょうがない。ごめんな」


 そこで謝られてしまうと、こちらが悪いことをした気分になってしまう。


「そうだよな。熱海はさとちゃん一筋だもんな」


 ニヤッとして言ってくる。悪いことをした気分になって損をした。


「当時好きだっただけだって何回も言っただろ?」


 さとちゃん――熱海が小学一年生のころから好きで、よく遊んでいた同い年でショートカットの少女。怪しい二人組に近寄られていたのを助けたのがきっかけで仲良くなる。だが、熱海が小学三年生のときの夏に浜北家の引っ越しで離れ離れになってしまう。ただ、それだけしか彼女のことは覚えていない。


 そしてつぐみとは転校先の小学校で出会い、人見知りな熱海に気さくに話しかけてくれた。それがうれしかった。とても優しい子だ。今も変わらない。小学三年生から今までずっと同じ学校の幼馴染だ。


「にしてもさ、好きな人の名前を忘れるなんてなぁ」

「だから当時好きだったんだって……。それに何年前のことだと思ってるんだよ」

「だとしても、もし今会えたら会いたいだろ?」

「別に……あまり覚えてないし」

「なんたって、怪しい人からさとちゃんを助けたんだもんな」

「さとちゃんさとちゃんって、知らないくせにそう呼ぶのやめろって。馬鹿にしてるだろ」

「してないしてない」


 巧は横に手を振る。


「てか熱海が名前覚えてないんだから仕方ないだろ」

「それに、さとちゃんのこと話したの、中一のときじゃなかった? よく覚えてるな」

「そういうことは覚えてるタイプだからな。ていうか俺は小さかったころの熱海に言ってやりたいよ。臆病者になるなよって」

「……小さいころは怖いもの知らずなもんだろ?」

「そうかもな。あはは」


 巧は楽しそうに笑う。

 ここで一旦話の区切りがつき、昼食をとり始める。


「ラーメンか」

「いいだろ? ばかうめぇぞ」

「俺は日替わり定食で十分」

「とんかつか。とんかつ食って、恋愛でも勝ち組にならないとな」

「……」

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